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新薬が続々登場!アレルギー疾患の治療革命 ―アレルギーセンター―

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はじめに

「アレルギー」とは、本来は体にとって有害になりにくい環境中の物質や食物に対して、体が過剰に反応してしまうことを指します。代表的なアレルギー疾患にはスギ花粉症などのアレルギー性鼻炎や気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどがあります。これらの病気に悩んでいる方々は大勢いらっしゃいますが、最近これらの病気に対して治療効果の高い薬が続々と開発され、使用できるようになりました。

アレルギー疾患の症状には、原因物質(アレルゲン)を体の外に出そうとする反応として、咳・たん、くしゃみ・鼻水、かゆみ、下痢などがあります。吸入薬や塗り薬(外用薬)、鼻噴霧薬、点眼薬などを上手に使うことにより、ある程度は症状のコントロールができるようになりますが、それでも状態が不安定な方は多く、仕事や学業に支障が出てしまうこともしばしばです。疾患によっては症状が悪化した際に飲み薬のステロイド薬によって症状を抑えることもありますが、飲み薬のステロイド薬を長期的・頻繁に使用することで肥満骨密度減少、感染症への免疫力の低下などの副作用が問題となることもあります。

最近登場した効果の高い薬剤には下に記載するようにいくつかの種類があります。これらを上手に利用することにより、アレルギー疾患の悪化を防ぎ、症状に悩まなくてもよくなる患者さんが数多くいらっしゃいます。

抗体製剤(注射薬)

アレルギーの原因となる体内での反応を抑える注射薬です。オマリズマブ(ゾレア®)、メポリズマブ(ヌーカラ®)、ベンラリズマブ(ファセンラ®)、デュピルマブ(デュピクセント®)、ネモリズマブ(ミチーガ®)、テゼペルマブ(テゼスパイア®)があり、病気によってそれぞれの薬を使い分けます(表1)。中には複数の病気に対して効果のある薬剤もあり、「ぜんそくの治療として抗体製剤を使ったら鼻や皮膚の症状も良くなった」ということもあります。

表1.アレルギー疾患に対する抗体製剤(2022年12月時点)

種類
一般名(薬剤名)

保険適用疾患

適用年齢

在宅自己注射

抗IgE抗体
オマリズマブ(ゾレア®)

気管支ぜんそく

6歳以上

重症スギ花粉症

12歳以上

特発性慢性蕁麻疹

不可

抗IL-5抗体
メポリズマブ(ヌーカラ®)

気管支ぜんそく

6歳以上

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

15歳以上

抗IL-5受容体抗体
ベンラリズマブ(ファセンラ®)

気管支ぜんそく

15歳以上

不可

抗IL-4/13受容体抗体
デュピルマブ(デュピクセント®)

アトピー性皮膚炎

15歳以上

鼻茸を伴う副鼻腔炎

気管支ぜんそく

12歳以上

IL-31受容体抗体
ネモリズマブ(ミチーガ®)

アトピー性皮膚炎

13歳以上

不可

抗TSLP抗体
テゼペルマブ(テゼスパイア®)

気管支ぜんそく

12歳以上

不可


これらの抗体製剤は保険適用で処方可能ですが、投与にあたり月額数万円の薬剤費がかかります。高額ではありますが治療効果も高く、薬を開始してから症状がほとんどなくなるような方もいらっしゃいます。気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎に対しては複数の抗体製剤が保険適用となっていますが、1つの薬に効果が乏しくても別の薬では効果が出る場合もあります。

副作用としては注射した箇所が当日・翌日に腫れることがありますが、治療継続を妨げるような重大な副作用が出ることは稀であり、安全性も高い薬です。

アレルゲン免疫療法

原因物質であるアレルゲンを計画的に体内に徐々に取り入れることにより、アレルギー体質そのものを改善する治療法です。スギ花粉とダニ(ハウスダストの主成分)に対する薬剤が保険で使用できます。舌の下に1日1回含む舌下免疫療法(スギ花粉舌下錠:シダキュア®、ダニ舌下錠:ミティキュア®)と、注射により投与する皮下免疫療法があります。

投与を始めてから半年後くらいから治療効果が出はじめ、3~5年間継続するとその後にアレルゲン免疫療法を中止しても数年間はその効果が残ります。主にアレルギー性鼻炎に対する治療ですが、8~9割以上の方に効果があり、「鼻炎を治したい!」という方にはぜひ検討いただきたい治療法です。

その他の新規薬剤

主に皮膚科領域で、上記薬剤以外にも劇的な治療効果をもたらすステロイドではない薬剤が複数使用できるようになっています(表2)。バリシチニブ(オルミエント®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、アブロシチニブ(サイバインコ®)などのJAK阻害薬は、抗体製剤と同様に、アレルギーの原因となる体内での反応を抑える作用があり、飲み薬である点が特徴です。特に、痒みの改善などについては効果が速やかに発現することが期待されますが、定期的な採血で問題がないか確認する必要があります。また、同じJAK阻害薬の外用薬であるデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏)や、PDE4阻害薬の外用薬であるジファミラスト(モイゼルト®軟膏)は、2歳以上に使用可能であり、症状を繰り返す患者さんが長期間使用できる新しい塗り薬として期待されています。

表2.アトピー性皮膚炎に対する新規薬剤(2022年12月時点)

種類
一般名(商品名)

保険適用疾患

適用

用法用量 (成人の通常量)

投与方法

JAK阻害薬 (主にJAK1/2)
バリシチニブ
(オルミエント®錠)

アトピー性皮膚炎

15歳以上

4 mgを1日1回

飲み薬

JAK阻害薬 (主にJAK1)
ウパダシチニブ
(リンヴォック®錠)

アトピー性皮膚炎

12歳以上

15 mgを1日1回

飲み薬

JAK阻害薬 (主にJAK1)
アブロシチニブ
(サイバインコ®錠)

アトピー性皮膚炎

12歳以上

100 mgを1日1回

飲み薬

JAK阻害薬 (JAK1/2/3, Tyk2)
デルゴシチニブ
(コレクチム®軟膏)

アトピー性皮膚炎

2歳以上

1日2回塗布
1回の塗布量5 gまで

塗り薬

PDE4阻害薬
ジファミラスト
(モイゼルト®軟膏)

アトピー性皮膚炎

2歳以上

1日2回塗布
皮疹面積0.1 m2あたり1 gまで

塗り薬


「診療科の垣根を超えた」アレルギー診療を目指して

アレルギー症状は体のあらゆる臓器で起きる可能性があり、特に同じ患者さんに次々に様々な異なるアレルギー疾患が発症する様子は、“アレルギーマーチ”と呼ばれます(図1)。すなわち、1つのアレルギー疾患がある方は他のアレルギー疾患もお持ちであることが多く、例えば気管支ぜんそく患者さんの7割以上はアレルギー性鼻炎も合併しています。さらに、鼻炎の治療が不十分だとぜんそくが悪化しやすいことが知られており、アレルギー疾患の診断や治療の際には広く体の臓器全体を見渡す必要性があります。また、最近の研究では皮膚のバリア機能がダメージを受けることによって食物アレルギーが発症しやすくなり、これがアレルギーマーチの原因の1つであることもわかってきました。そのため、アレルギー疾患の正しい診断や治療を考える際には複数の診療科の連携が鍵となってきます。

図1.各年代におけるアレルギー疾患の有病率

図1.各年代におけるアレルギー疾患の有病率


慶應義塾大学病院では内科(呼吸器・消化器)、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科のアレルギー担当医が協働してアレルギーセンターを作り、診療科の垣根を超えたアレルギー診療を行っています(図2)。今まで治療を頑張ったけれども症状があまり良くならなかった方や、複数のアレルギー疾患があってお困りの方はぜひ慶應義塾大学病院に受診ください。

図2.アレルギーセンターによる包括的なアレルギー疾患への対応

図2.アレルギーセンターによる包括的なアレルギー疾患への対応


文責:アレルギーセンター外部リンク
執筆:正木克宜、明石真幸、足立剛也、種瀬啓士、若林健一郎

最終更新日:2022年12月1日
記事作成日:2022年12月1日

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