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肥満

ひまん

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概要

肥満とは、「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」のことをいいます。脂肪組織の蓄積する部位によって、皮下に脂肪のたまりやすい皮下脂肪型肥満と、小腸などの内臓の周囲に脂肪のたまりやすい内臓脂肪型肥満とに分類されます。外見上から、皮下脂肪型肥満は「洋なし型肥満」、内臓脂肪型肥満は「りんご型肥満」ともいわれます。近年、内臓に蓄積する脂肪から、種々の生理活性物質(遊離脂肪酸やTNF-α(ティーエヌエフアルファ)といわれる物質など))が分泌され、炎症を起こすことが明らかとなり、肥満は「程度の弱い、長く続く炎症」として捉えられるようになっています。

また、肥満を起こす原因別に、単純性肥満(単純に脂肪が過多となった状態)と症候性肥満(ホルモン異常など何らかの原因があって脂肪が過多となった状態)とに分けることもできます。いずれの場合にも、肥満は、高血圧、糖代謝異常、脂質代謝異常、高尿酸血症などの代謝障害の基盤となり、虚血性心疾患や脳血管障害などの動脈硬化性疾患を発症する危険因子となります。2017年国民栄養・健康調査によると20歳以上の日本人の肥満人口は、男性約30.7%、女性約21.9%と推計されています。

症状

若い方で肥満の程度が軽い場合には、症状を訴える方はそれほど多くありませんが、「ちょっと太りぎみ」や「階段を上がるのに体が重いと感じるようになった」などの症状は要注意です。肥満の程度が中等度以上になると、膝痛、腰痛などの筋骨格系の症状や、息切れ、いびき、寝ている間の無呼吸などの呼吸器系の症状が問題となることがあります。健康診断の結果で、血圧が高いことや、血糖値が高いことを指摘されることも少なくありません。これらの症状を呈すると、「肥満症」として対処する必要があります。

診断

肥満は、「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」と定義されます。現在では、科学的な評価に基づく方法として、身長あたりの体格指数(body mass index:BMI)(計算式:BMI=体重(kg)/身長 (m)2)を計算して肥満を判定します。日本肥満学会の基準ではBMI 25以上を肥満と判定しています(表1)。BMIと疾病の関連をみると、多数の集団を対象とした分析結果では最も疾病の少ないBMIは約22であり、この値を用いて身長あたりの標準体重を計算します(標準体重(kg)= 身長(m)2×22(kg/m2))。

表1 肥満の判定

上述のように、肥満の患者さんの中で、何らかの症状を来す場合、肥満症といいます。厳密には、肥満症とは、「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量(ダイエット)を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う」と定義されます。肥満に伴う健康障害は多くありますが、日本肥満学会の診断基準では、病態として重要と考えられる11項目の健康障害を掲げています(表2)。

表2 肥満症の診断

また、肥満はその原因で分けると大きく原発性肥満(単純性肥満ともいう)と二次性肥満(症候性肥満ともいう)とに分けられます(表3)。原発性肥満は、エネルギー摂取過多(食べ過ぎ)、エネルギー消費不足(運動不足)の結果もたらされ、二次性肥満が除外された場合に診断されます。

表3 成因による肥満の分類

治療

肥満に対する治療の原則は減量(ダイエット)です。減量のアプローチの方法は、生活習慣、職業などのため個々の患者さんによって異なりますが、それぞれに合った治療期間と目標体重を設定することが重要です。食事療法、運動療法、行動療法を基本とし、場合により薬物療法も助けとなります。
脂肪は1グラムのエネルギーは約9キロカロリーですが、生体において脂肪組織として存在する場合、その約20%が水分であるため、1キログラムの脂肪分は約7,000キロカロリーと計算されます。したがって、「1キロ減量しましょう」という場合、「約7,000キロカロリーをマイナスバランスにしましょう」ということになります。このエネルギーのバランスがプラスに傾く場合、単純性肥満を来します。一方で、二次性肥満においては、内分泌代謝異常、生まれつきの異常、使用している薬の影響などがその上流に存在し、治療に際してはもととなる原因への対応が重要となります。1キログラムの減量に約7,000キロカロリーの消費を要することを知った上で、治療期間としては3か月を一区切りとします。
生活習慣の改善を目指す際に、食事療法は、体重を減らし脂肪組織量を減らす肥満症治療の基本となります。摂取エネルギーと栄養、時間の正しいバランスを心がけ、続けることのできる食事療法が重要です。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を主体とする運動療法は、内臓脂肪を減少させますが、患者さんによっては筋力トレーニング(筋トレ)も有用です。厚生労働省による「健康づくりのための身体活動基準2013」及び「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」外部リンクには具体的な方法が述べられています。
行動療法は患者さん自身の意識を高め、やる気を起こさせ、継続させる上で必須な治療法です。具体的には、体重測定、食事の献立の記録、歩数計(万歩計)カウントの記録をつけるなどセルフモニタリングを実施します。
高度の肥満である肥満4度(BMI≧40)の患者さんや、重篤な健康障害を合わせもつ肥満3度(BMI≧35)の患者さんでは、外科的治療をも検討します。摂食量を抑制する目的で胃の中に一定期間ゴムボール大のバルーンを留置する胃内バルーン留置術や胃縫縮術(いほうしゅくじゅつ)などが行われることがあります。

生活上の注意

肥満から来る種々の病態を予防するために、まずご自身の状態を知ってください。対象となる健康診断や検診を受診してください。また、上記の治療に示すように生活習慣の改善、具体的には、「腹八分目」や「よく噛むこと」、「20分以上かけて食事すること」、「身体活動量を増やすこと」に努めてください。さらに規則的な生活、充分な睡眠、喫煙者は禁煙をお心がけください。

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 糖尿病外来を受診される患者さんは毎回、体重を計測の上、ご自身のデータをお渡しし、管理手帳に転記していただいています。
  • 栄養士と面談していただき、ご自身の現在のカロリー摂取状態、適切なカロリーを知っていただくことを行っています。
  • 食事療法、運動療法、また精神的なサポートも含めて、お一人の患者さんを多職種からなるチームで治療することも行っております。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 腎臓・内分泌・代謝内科外部リンク
最終更新日:2024年10月22日

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