概要
形成外科では、顔面、顎、頭部の形態異常に対する治療を行っていますが、中でも骨格の形態を修正する手術治療を「顎顔面外科」と呼んでいます。顔面では鰓弓(さいきゅう)の発生異常による顔の非対称や顎の発育異常などが治療の対象となります。また、唇顎口蓋裂の患者さんで上顎の発育不全に伴う反対咬合などにも手術治療が行われています。こうした咬合不全(噛み合わせ異常)を伴う治療は矯正歯科医との連携治療が重要です。なお病気を下記のような疾患をお持ちの方や、手術を前提とした方の矯正治療は保険適用となります。ご自身の症状から矯正が保険適用となるのかお聞きになりたい方は外来にて担当医にご相談ください。
治療
- 顎変形症
反対咬合(下顎前突症など)の手術では咬合の改善と整容的改善の双方が治療目的となりますので、歯科矯正医および形成外科医双方の診察の上、手術計画を立てます。
- 唇顎口蓋裂
唇顎口蓋裂患者さんに関して「歯列咬合外来」では、歯並びを改善するために必要な外科的治療について診察します。顎裂部の骨・歯牙欠損には、外科的治療によって骨欠損を修復したのち、歯を誘導する矯正治療が行われます。また、唇顎口蓋裂に伴う上顎の低形成とこれによる反対咬合などは外科的治療と歯科矯正治療により咬合および整容面の双方の改善を図ります。
- 第一第二鰓弓症候群
生まれつきの顔面非対称を示し、片側の下顎の低形成や耳の低形成などが見られます。「歯列咬合外来」では主に骨格の非対称の治療を、歯科矯正医とともに咬合を考慮した上で計画してゆきます。
- 小顎症
ピエールロバン症候群、トリーチャーコリンズ症候群など下顎の低形成を示す疾患では、顎の発育不全による呼吸障害、摂取障害がみられることがあります。このような症状がある場合には下顎骨の延長治療を比較的早期に計画し、口腔容積の拡大を図ります。また、症状に応じて整容的改善を目的とした治療が行われます。
- 線維性骨異形成症
骨が線維性に肥大する疾患です。神経圧迫症状の改善や、整容的改善を目的として治療を行います。治療方法は骨を削ったり、病気の骨を人工骨に置き換える手術をします。
慶應義塾大学病院での取り組み
当科では、一般的な顎変形症に加え、唇顎口蓋裂、第一第二鰓弓症候群、および小顎症に対する顎骨・咬合治療に力を注いでおり、整容面にも配慮した総合的な治療を行っております。上記に示した骨変形の治療には、歯の噛み合せを考慮した治療が必要ですので矯正歯科医との連携治療が肝要です。当科では「歯列咬合外来」という専門外来を毎月、第一および第三木曜の午後に開設し、歯科矯正医とともに診察し、咬合を考慮した治療計画をたてるようにしています。まずは、通常の初診外来での診察を受けてください。必要に応じて「歯列咬合外来」の予約をいたします。
文責:
形成外科
最終更新日:2017年1月23日