あたらしい医療

輸血・細胞療法センター

進化するCAR-T療法〜多職種連携が支える最先端治療〜

CAR-T細胞療法のしくみ

CAR(Chimeric Antigen Receptor)-T細胞療法は、患者さん自身の血液中を循環しているリンパ球のうちの「T細胞(注1)」を用いた治療です。まず患者さんの血液からT細胞を採取し、がん細胞に特徴的な分子を捕捉することができるように体外で加工(遺伝子導入)した後、再び体内へ戻します。すると、加工されたT細胞ががん細胞を標的として攻撃するため、治療効果が期待されます。

CAR(Chimeric Antigen Receptor)-T細胞療法は、患者さん自身の血液中を循環しているリンパ球のうちの「T細胞(注1)」を用いた治療です。まず患者さんの血液からT細胞を採取し、がん細胞に特徴的な分子を捕捉することができるように体外で加工(遺伝子導入)した後、再び体内へ戻します。すると、加工されたT細胞ががん細胞を標的として攻撃するため、治療効果が期待されます。

この治療の大きな特徴は、患者さんご自身の細胞を治療薬の原材料として用いる点にあります。そのためCAR-T細胞療法は、治療の出発点となる細胞採取、体外での細胞製造、製剤投与、投与後の全身管理まですべてのプロセスが適切かつ確実に進むことで、はじめて成り立つ高度な細胞治療といえます。細胞採取から製剤投与にかかる時間はCAR-T製剤の種類等によって異なりますが、一般的には1.5か月程度を要します。

CAR-T細胞療法の現在地

CAR-T細胞療法は従来治療と比較して、より高い有効性を有することが示されていますが、現時点では限られた疾患を対象とする治療です。慶應義塾大学病院では国内で現在保険診療として実施可能なCAR-T製剤のすべてに対応しています。再発難治性B細胞性リンパ腫に対してはチサゲン レクルユーセル(商品名:キムリア®︎)、アキシカブタゲン シロルユーセル(商品名:イエスカルタ®︎)、リソカブタゲン マラルユーセル(商品名:ブレヤンジ®︎)、B細胞性急性リンパ性白血病に対してはキムリア®︎、多発性骨髄腫に対してはイデカブタゲン ビクルユーセル(商品名:アベクマ®︎)を提供しています。

表1.国内で保険収載されているCAR-T製剤(2026年5月時点)



しかし、CAR-T細胞療法はすべての患者さんに一律に適用できるわけではありません。疾患の種類だけでなく、疾患の勢い、これまでの治療歴、全身状態、合併症の有無などを含めた総合的な判断が必要です。当院では、保険適用の基準に加えて、患者さんごとに治療が可能かどうかを慎重にチームで検討したうえで、適応を決定しています。詳しくは、主治医にお問い合わせください。

多職種連携による安全なアフェレーシス

CAR-T細胞療法は、患者さんご自身のT細胞を採取することから始まります。この細胞採取を、アフェレーシスと呼びます。アフェレーシスでは、患者さんに留置したカテーテルから血液を持続的に専用装置へ循環させ、その中から製剤製造に必要な細胞成分を回収し、それ以外の成分は体内へ戻します。数時間にわたって行う処置であり、持続的な体外循環を伴うため、専門的な全身管理が必要です。CAR-T細胞療法におけるアフェレーシスでは、患者さんの全身状態や循環動態、疾患の状態、前治療の影響などを踏まえながら、安全に処置を進めるとともに、CAR-T細胞製造に必要な細胞数を確実に確保することが求められます。迅速で安全かつ適切なアフェレーシスはその後の治療へ円滑につなげるために重要な工程です。

当院では、この工程を当部門の専任医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師が連携して支えています。アフェレーシス中は進行状況をリアルタイムに評価しながら、安全性と採取効率の両立を目指して対応しています。患者さんごとに疾患の状況、循環動態、採取の進行具合が異なるため、画一的に進めるのではなく、必要に応じて装置条件や採取条件を調整し、最適化を図っています。臨床工学技士は装置や回路の安定した運用を担い、臨床検査技師は血液検査や採取検体の評価を行い、細胞製造に必要な情報を関係部門と共有します。

CAR-T細胞療法を支える管理体制

CAR-T細胞療法は、適応判断、アフェレーシス、細胞製造、投与、投与後管理までを含む一連の工程が、切れ目なく連動することで成り立っています。輸血・細胞療法センターは、患者さんから細胞を安全に採取するだけでなく、採取した細胞の品質評価、製造を担う製薬企業との連携、製剤の受け入れ・保管・管理、投与支援までを一貫して担っています。目に見えにくい領域ではありますが、このように治療の基盤を確実に支えることが、私たち輸血・細胞療法センターの重要な役割です。

CAR-T細胞療法のこれから

CAR-T細胞療法は、今後さらなる発展が期待される治療です。自己免疫疾患なども視野に入れた対象疾患の拡大に加え、新たな技術を駆使したCAR-T製剤(同時に2つの標的を攻撃する二重標的CAR-Tや、治療開始までの時間短縮を目指した工夫が施されたin vivo CAR-Tなど)の開発も進んでいます。

一方で、治療の選択肢が増えるほど、患者さん一人ひとりに最適な治療を見極め、それを確実に届けるための体制強化がますます重要になります。輸血・細胞療法センターは、最新の細胞治療を患者さんへいち早くお届けするため、それぞれの専門性を活かし、これからも多職種で協働し、診療科を支えてまいります。

図1.多職種がそれぞれの専門性を活かして連携し、患者さんを支える細胞療法
*図の作成にあたり、生成AIを補助的に使用しました。

【用語解説】

(注1)T細胞

白血球の中のリンパ球の一種で、様々な細胞と協調して免疫応答を担う。それぞれが特定の目印(抗原)を見分ける能力を持っており、感染が生じた細胞やがん細胞を選択的に攻撃する。

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