あたらしい医療

放射線診断科

切らずに治す、からだにやさしい凍結療法:画像下治療の新たな選択肢

2026年3月、画像下治療(Interventional Radiology: IVRの和名)の一つである経皮的凍結融解壊死療法(以下「凍結療法」)の保険適用が大きく広がりました。これまで腎がんに限られていた保険診療が、肺や肝臓、骨軟部、静脈奇形などにも広がり、「切らずに凍らせて治す」という新しい選択肢が、より多くの患者さんに届けられるようになっています。

画像下治療とは

画像下治療とは、CTや超音波などの画像を見ながら、針やカテーテルといった細い器具を体内に挿入して行う治療の総称です。手術に比べてからだへの負担が小さく、多くの場合は全身麻酔を必要としません。放射線診断科は、CTやMRIなどの画像診断を担う科ですが、こうした画像の技術を治療にも活かし、さまざまな臓器の病気に対して横断的に画像下治療を提供しています。

凍結療法とは

凍結療法は、画像を見ながら皮膚の上から細い針を腫瘍に刺し、針の先端から急速に凍らせて壊死させる治療です。熱で焼いて治療するラジオ波焼灼療法(Radiofrequency Ablation: RFA)やマイクロ波焼灼療法(Microwave Ablation: MWA)と並ぶアブレーション(注1)の代表的な方法で、「焼く」のではなく「凍らせる」ところが大きな違いです。

凍結の際にできる「アイスボール」と呼ばれる氷の塊は、CTや超音波画像でも視認が可能です。そのため、RFAやMWAと比較し、治療の効果が及んでいる範囲をリアルタイムに確認しながら、安全に手技を進められるのが大きな特長です。また、凍結療法では治療中の痛みが少なく、血管や気管支などの臓器の構造が保たれやすいことが知られています。

図1.凍結療法による腫瘍壊死の仕組み(生成AIを用いて、執筆者が作成)

治療の実際

治療は、CT透視(注2)装置や超音波装置を備えた血管造影室で行います。通常、局所麻酔と軽い鎮静薬を用い、全身麻酔は必ずしも必要ありません。まずCTや超音波画像で腫瘍の位置と安全な穿刺経路を確認したうえで、直径1.5mm程度の凍結プローブ(針)を1~数本、腫瘍に向けて刺します。その後、プローブの先端を冷却してアイスボールを形成し、凍結と融解を複数回繰り返すことで、腫瘍を確実に壊死させます。

治療に要する時間は、部位や腫瘍の大きさにもよりますが、おおよそ2~3時間です。皮膚に残るのは数ミリの小さな痕だけで、合併症がなければ治療の翌々日から3日程度で退院が可能です。手術のように大きな傷跡が残らず、入院期間も短いため、ご高齢の患者さんやほかのご病気をお持ちの患者さんにも受けていただきやすい治療です。

図2.CT透視下で凍結プローブを穿刺している様子
80代男性、肉腫腹壁再発(上図:実際のCT画像、下図:説明図)。2本の凍結プローブ(矢印)が腫瘍(黒丸)に挿入されている。
図3.CT画像で確認されるアイスボール
80代男性、肉腫腹壁再発(図2と同患者、上図:実際のCT画像、下図:説明図)。2本の凍結プローブ(矢印)が腫瘍(黒丸)に挿入され、周囲にはアイスボール(灰色丸)が形成されている。

どのような患者さんが対象か

2026年3月の適用拡大により、凍結療法は次のような領域で保険診療として受けられるようになりました。肺腫瘍(肺がん、転移性肺腫瘍など)、肝腫瘍(肝細胞がん、転移性肝腫瘍など)、骨軟部腫瘍(類骨骨腫、骨転移、デスモイド、静脈奇形など)、骨盤内悪性腫瘍です。2011年から保険適用となっている腎腫瘍(小径腎がん)も引き続き治療が可能です。また、腎腫瘍では結節性硬化症に合併する腎血管筋脂肪腫も新たに保険適用となりました。

いずれの領域でも、標準治療が適さない場合や効果が得られない場合の選択肢として位置づけられています。特に、手術が難しい患者さん、放射線治療後に同じ場所で再発した患者さん、あるいは大血管・気管支・腸管などの近くで合併症が懸念される病変では、凍結療法の低侵襲性(からだに対する影響が少ない)と、治療範囲を画像でリアルタイムに確認できる特長が活かされます。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院は、長年凍結療法に取り組み、実績を積み重ねてきた国内有数の施設です。肺腫瘍については、呼吸器外科との協力体制のもと、2002年以降、250例を超える患者さんに治療を行い、2023年からは患者申出療養として再開、2026年3月の保険収載に至りました。肝腫瘍に対しても、一般・消化器外科を中心に凍結療法の豊富な実績を有しており、主にMWAを担当する消化器内科とともに、適切な治療法を検討しています。腎腫瘍については、2011年の保険適用以降、泌尿器科と連携して治療を提供しています。骨軟部腫瘍についても、以前から整形外科との連携のもと治療経験を重ねてきており、静脈奇形についても形成外科、小児外科、当科を中心とする血管腫・血管奇形センターとして国内有数の治療経験を持っており、新たな治療選択肢として活用していく予定です。

放射線診断科では、画像下治療を臓器横断的に提供する立場から、今後も院内の各科と協力しながら、凍結療法を必要とする患者さんに安全で質の高い治療を届けてまいります。

外来担当

放射線診断科 IVR外来 金曜午後 田村全

放射線診断科では原則担当各科からの紹介により診療を行っています。各疾患に対するご相談はまず以下の外来までお問い合わせください。

肺腫瘍・胸腔内軟部腫瘍呼吸器外科外来 水曜 加勢田馨
肝腫瘍一般・消化器外科 水曜 阿部雄太
消化器内科 火曜 谷木信仁
腎腫瘍泌尿器科外来 水曜・金曜午前 安水洋太
骨軟部腫瘍整形外科外来 月曜午前・金曜午後 中山ロバート
静脈奇形血管腫・血管奇形外来 水曜 荒牧典子
小児外科外来 月曜午前・土曜午前(不定期) 藤野明浩

用語解説

(注1)アブレーション

がんなどの病変に針やカテーテルを刺し、熱や冷気によって局所的に破壊する治療の総称。熱によって焼灼するラジオ波焼灼療法(RFA)・マイクロ波焼灼療法(MWA)と、凍結させる凍結療法が代表的である。

(注2)CT透視

CT撮影を連続的に行い、針先の位置や病変の形態をほぼリアルタイムにモニター上で確認しながら手技を進める技術。アブレーションなどの画像下治療で用いられる。

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