あたらしい医療
看護部
患者さんに優しい看護を目指して ~ユマニチュード®の実践~
はじめに
慶應義塾大学病院は、小さなお子様からご高齢の方まで幅広い患者さんに高度急性期医療を提供しています。その中で大切にしているのが、「ひと」の尊厳を大事にした、科学的な根拠に基づいたユマニチュードケアの実践です。ユマニチュードは、「見る・話す・触れる・立つ」という4つの柱を基本に、患者さんとの関係性を築き、回復力を引き出すケア技法です。実際に、「立つ」ことで笑顔が見られリハビリへの意欲が高まったり、反応の乏しかった患者さんが目を開けて「ありがとう」と言葉を発せられるなど、温かな変化が生まれています。
技術が進化する時代だからこそ、科学的根拠と人間へのまなざしを統合し、より良い看護実践を通して未来の看護を創造していきます。

ユマニチュード®とは
「あなたのことを大切に思っています」ということを患者さんが理解できるように伝えるための方法です。「ユマニチュード」は、1979年にフランスの体育学の専門家であるイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティによって開発されました。「人間らしくある」ことを意味するコミュニケーション・ケア技法です。4つの柱と5つのステップからなります。ユマニチュードではすべてのケアを一連の物語のような手順「5つのステップ」で実施します。この手順は1.出会いの準備(自分の来訪を告げ、相手の領域に入って良いと許可を得る)2.ケアの準備(ケアの合意を得る)3.知覚の連結(いわゆるケア)4.感情の固定(ケアの後で共に良い時間を過ごしたことを振り返る)5.再会の約束(次のケアを受け入れてもらうための準備)の5つで構成されます。「人間としての尊厳」と「その人らしさ」を大切にし、「あなたを大切に思っています」「あなたはここにいますよ」というケアを行う人の優しい気持ちをご本人が理解できる方法で伝える技法であるとともに、ポジティブな関係を構築するためのケアの哲学でもあります。特に、認知症ケアや高齢者介護において、たくさんの効果が報告されています。
国内では高齢化が進み、65歳以上の方の27.8%が認知症、もしくは軽度の認知障害があるといわれています。ユマニチュードは、ケアを受ける人の精神状態の安定(不安・攻撃性の軽減)、身体機能の維持・向上(立つことの促進)、認知症の行動・心理症状(BPSD)の改善、そして介護者の負担軽減と満足度向上につながります。これは、「見る・話す・触れる・立つ」の4つの柱に基づき、相手を一人の人間として尊重し、信頼関係を築くことで、尊厳を取り戻させ、生きる力を引き出すケア技法だからです。このような背景から、ユマニチュードに取り組む施設も増えてきています。もちろん在宅においても効果があり、ユマニチュードに一般市民と取り組む行政もあります。ご家族を対象として講習会も開催されています。
ユマニチュードは、ケアを受ける人のみではなく、ケアを行う人も精神的な負担が減り、良好な関係を築くことでケアがスムーズに行えるようになります。当院では、高齢者の患者さんに限定することなく、「ひと」の尊厳を大事にしたユマニチュードケアの実践は、患者さんの力を生かし、看護師のやりがいも高めると考え取り組んでおります。
ユマニチュード®の「4つの柱」
患者さんとの良い関係性を築くために、4つの柱を踏まえたケアの提供に取り組んでいます。




ユマニチュード®の「5つのステップ」
すべてのケアを一連の物語に見立てた手順で行うステップです。
- 出会いの準備
患者さんに私たちが来たことを3回ノックにより知らせ、入室の許可を3秒待つことで得てベッドサイドに入ります。 - ケアの準備
ケアを始める前に患者さんと良い関係性を築き、ケアすることへの合意を得ます。 - 知覚の連結
いわゆるケアの時間です。「見る」「話す」「触れる」のうち、2つ以上の柱を同時に使います。 - 感情の固定
ケアが終わった後の心地よさをしっかりと患者さんの記憶に残せるように、ケアの後で共に良い時間を過ごしたことを振り返ります。 - 再会の約束
次のケアを受け入れてもらうための準備をします。
詳細は、日本ユマニチュード学会をご覧ください。
ユマニチュード®推進活動
2022年より認定インストラクターからの研修を2つの病棟の看護師が受講することから開始しました。研修を修了した看護師からリーダーを育成しつつ、推進病棟の拡充を進めています。2024年度、当院に6人の認定インストラクターが誕生しました。現在、推進病棟での実践をはじめ、院内研修の実施、パンフレットの作成、ニュースレターや動画配信、ポスター掲示などを通じて、組織全体で浸透を図っています。推進病棟においては、せん妄発症がおさえられ、身体拘束の低減につながっている効果が表れています。看護師、助産師、看護補助者含め、入院・外来問わず、さらにユマニチュードケアを拡げより良い看護実践を目指します。

研修風景
「触れる」 上腕を上からつかまず下から支える練習
「見る」 瞳を正面から捉える練習

この活動に関するお問い合わせなどは、お気軽にお電話、ご相談ください。