くすりのQ&A
- 正しい服用方法(内用)
Q お薬の正しい服用方法について教えてください。
A 「食前」とは食事の20~30分前、「食後」とは食事の後20~30分以内が目安とされています。「食間」とは食事中ということではありません。食事と食事の間に服用するように、食事のおよそ2時間後に服用するのが一般的です。「食直前」とは食事を始める5分前に、「食直後」とは食事を終えてすぐに飲むようにだいたい食後5分以内に服用しましょう。
Q お薬を水なしで服用しても構いませんか?
A お薬を水なしで服用すると、胃や腸でお薬が完全に溶けないため吸収されないことやお薬が食道に残って潰瘍になることがありますので、口腔内崩壊錠など水なしで服用できるお薬を除き、水または白湯で服用してください。
Q お薬を水以外で服用してもいいですか?
A 水以外で服用するとお薬によっては吸収が妨げられたり、効果が強く現れるものがあります。そのため、お薬に影響を与えない水または白湯で服用してください。小児のお薬では飲みやすくするためにジュースなどに混ぜて服用したりしますがかえって苦味を増すお薬もあるので不明な点は薬剤師にご相談ください。
Q 錠剤を割ったり、カプセルをはずして飲んでもよいですか?
A 錠剤やカプセル剤には体内でゆっくり溶けて効果を示す「徐放錠」や、胃に直接刺激があるものや胃で溶けると効果が出ないような薬を腸で溶けるように施された「腸溶錠」など、様々な工夫がされているものがあります。これらのお薬を割ったり、カプセルをはずして服用すると効果が出ないばかりか副作用を生じる場合もあるのでお薬が服用しにくいなどの場合は医師または薬剤師にご相談ください。
Q お薬を服用し忘れた場合はどうすればよいですか?
A 目安として、服用し忘れに気付いた時点で本来服用する時間の方が近い場合は、その時点で服用してください。次に服用する時間の方が近い場合は、忘れた分はとばして次の服用時間に1回分を服用してください。2回分をまとめて服用することは避けてください。お薬の種類によっては上記にあてはまらない場合がありますので、ご不明な点がありましたら医師または薬剤師にご相談ください。
Q お薬の服用を、自分の判断で中止してもよいですか?
A 医師は患者さんの病態や症状に応じてお薬を処方しますので、服用回数や日数は確実に守ってください。
ご自身の判断で服用方法を変えたり、服用を中止しないで、必ず医師または薬剤師にご相談ください。
お薬の服用により普段と違う症状が出たり、体調がすぐれない場合はすぐ医師へご連絡ください。
Q お薬にも有効期限はありますか?
A 処方されたお薬に有効期限が明記されている場合、期限が切れたときは使用しないでください。
通常処方されたお薬は現在の患者さんの処方日数を有効期限とします。お薬にもよりますが、錠剤は1年、薬剤部で分包した散剤、水剤は3か月、開封した保存剤入りの点眼剤は1か月が目安です。
Q 以前処方されたお薬を同じような症状のときに服用してもよいですか?
A 同じような症状であっても、医師の診断・指示がない場合は服用しないでください。
Q お薬を処方されたときに気をつけることはありますか?
A 慶應義塾大学病院ではお薬をお渡しする際、お薬情報紙も一緒にお渡ししています。ほかの病院、診療所を受診される場合や違う医師の診察を受ける場合にご提示いただくと、同じ種類のお薬の重複や、相互作用が一目で分かります。また、お薬の袋には用法、用量などが記載されています。そのお薬を服用している間は、元の袋に戻して保管するようにしましょう。
- 正しい使用方法(外用)
Q 外用薬を塗る前に注意することはありますか?
A あらかじめ手をよく洗ってください。
患部は医師の指示がない場合は、特に消毒薬で消毒する必要はありません。
Q 外用薬は強くこすった方が、よく効きますか?
A 強くこするなどの機械的な刺激を与えると炎症がひどくなることがあります。
またお薬は軽く塗るだけで皮膚に吸収されますので、強くこする必要はありません。
Q 外用薬の使用を中止したいときは、どうしたらよいですか?
A 医師は病気の種類や症状に合わせてお薬を選択しています。
ご自分の判断でお薬をやめないで、必ず医師にご相談ください。
Q 前と同じような症状なので、残っていた外用薬を使用してもよいですか?
A 同じような症状でも別の病気のことがあります。
ご自分の判断で残っていた外用薬を使うと、かえって症状が悪化する場合もあります。
必ず医師にご相談ください。
Q 軟膏・クリーム・ローションなどを保管するときに注意することはありますか?
A お薬の成分の分解や変質を防ぐため、容器のふたをしっかり締めましょう。
特に指示のない場合は、保管は室温で行ってください。
Q ステロイド外用薬とはどのようなお薬ですか?
A 一般にステロイド外用薬とは副腎皮質ホルモンを含む塗り薬のことです。
Q 副腎皮質ホルモンとはどのようなものですか?
A 副腎皮質ホルモンはもともと生体内に存在するものです。
炎症を抑えたり、たんぱく質の合成を抑制したり、血糖を上昇させるなどの多くの作用があります。
その中でも炎症を抑える作用だけを強めたものが ステロイド外用薬です。
Q ステロイド外用薬にはどのような種類がありますか?
A 皮膚の病気が重症から軽症のものまであるように、作用の強いものから弱いものまであります。
また剤形には軟膏・クリーム・ローションなどがあります。
医師は病気の状態や部位に合わせて、お薬の強さやタイプの選択を行っています。
Q ステロイド外用薬の副作用が心配です。
A ステロイド外用薬は医師の指示通りに使っている限り、副作用の心配はほとんどありません。
副作用防止のため、医師の指示を守り、定期的に診察を受けましょう。
Q 点眼薬は1回何滴使用すればよいですか?
A 点眼薬の容器から落ちる1滴は目からあふれるほど十分な量があります。
医師の指示がない場合は1滴ずつ使用してください。
Q 点眼薬を使用する際に注意することはありますか?
A 点眼薬が細菌に汚染されるのを防ぐため使用前には手を洗ってください。
また点眼薬の容器の先がまつげやまぶたに触れないよう注意してください。
Q 2種類以上の点眼薬を処方されたときはどのように使用すればよいですか?
A 違った種類の点眼薬を続けて使用すると、それぞれの点眼薬が薄まってしまったり点眼薬が混ざり合ってお薬の成分が反応しあって効果に影響が出たりします。
少なくとも5分以上は間をおいてから次の点眼薬を使用してください。
点眼の順番については医師または薬剤師にご相談ください。
Q 早く治したいので点眼薬を1日に何回も使用してよいですか?
A 早く治したいと思ってどんどん点眼薬を使用する人がいますが、副作用が出ることもありますので医師に指示された回数を守ってください。
Q コンタクトレンズをつけたまま点眼薬を使用してもよいですか?
A 原則としてコンタクトレンズをはずして点眼し、5~10分後に着用してください。
Q 点眼薬は1本で何滴分ありますか?
A 点眼薬は1本5mL入っているものは、1本で約100滴分に相当します。
Q 点眼薬はどのように保管すればよいですか?
A 「冷蔵庫などの冷暗所に保管してください」とあるものは指示に従ってください。
また遮光袋が添付されているものは遮光の必要がありますので、遮光袋に入れ保管してください。
開封した点眼薬の使用期限は特に指示のない場合、1か月です。
- お薬の保管方法
Q お薬を保管する際、どのようなことに気をつければよいですか?
A お薬は保管状態が悪いと変化を受けやすく、効果に悪影響を及ぼすことがあります。薬袋に入れ高温、多湿、直射日光を避けて保管してください。保管、服用方法などに注意が必要な薬剤には、指示が薬袋に記載されていますのでよくお読みください。また多湿の梅雨時期には水分を吸収して変化を起こしやすいので、できるだけフタの閉まる缶などに乾燥剤を入れて保管してください。
幼児のいる家庭では、誤って飲まないようにお薬の保管場所には気をつけてください。 坐薬は溶けやすいので挿入部を下にして冷暗所に保管してください。
一度溶けてしまった坐薬は、原則として使用しないでください。
残ったお薬は、変質等を考慮して原則として使用しないでください。安全に服用するためには、お薬に適した保管をすることが大切です。
Q インスリン注射薬はどのように保管すればよいですか?
A インスリン注射薬は、凍結を避け冷蔵庫など冷暗所に保管してください。
ただし、使用中のペン型インスリン注射薬は、結露を避けるため冷蔵庫に入れないでください。
インスリン注射薬の携帯時はなるべく温度が上がらないように注意しましょう。
- 副作用・相互作用
Q 副作用とは何ですか?
A お薬の作用は1つだけではなく、いくつかの作用を併せ持っています。
そのうち、目的としない作用を副作用と呼びます。
Q 副作用はなぜ起こるのですか?
A 副作用のないお薬はありません。大きく分けて、服用量の過剰により起こるものと服用量に関係なくお薬が体質に合わない場合に起こるものがあります。
服用量の過剰により起こる副作用は、不適切な量のお薬を服用することにより期待する効果以外の作用が現れやすくなります。また、腎臓や肝臓の機能が低下している人では、通常の量でも起きる場合があります。
服用量に関係なく起こる副作用では、少量でも起こる可能性があります。その中でもアナフィラキシーショックは命に関わることもあるので、服用量に関係なく副作用が起きたお薬は絶対に服用しないようにしましょう。
Q 代表的な副作用にはどのようなものがありますか?
A 自覚しやすい副作用として、発熱、発疹、むくみ、食欲不振、吐き気、めまい、口が渇く、ふらつき、便秘、下痢などがあります。
また、上記のような症状が重篤な副作用の初期症状として現れることもあります。
重篤な副作用には腎臓や肝臓の機能が悪くなる、骨髄で血液の成分が作られなくなる、肺炎、胃や腸などの消化管に潰瘍ができる、などがあります。
Q 上の質問にある「アナフィラキシーショック」とはどのような副作用ですか?
A アレルギー反応の一つです。一度服用したお薬を体が異物だと認識し抗体ができます。
2度目の服用で前にできた抗体によりアレルギー反応を起こします。
口内異常感、かゆみ、発熱、発疹、息苦しい、血圧が下がる、などの初期症状に気づいたときはすぐに診察を受けてください。
Q 「お薬の説明書」に記載されている副作用は必ず出てしまうものなのですか?
A 必ず出てしまうわけではないので、過度に心配する必要はありません。
反対に記載されていない副作用が出る場合もありますので、いつもと違う症状に気づかれたときは、医師または薬剤師にご相談ください。
Q 漢方薬にも副作用はありますか?
A 漢方薬にも副作用が起こることがあります。
またお薬の組み合わせによって副作用が起こる場合がありますので、受診の際には、服用中の漢方薬も医師に申し出てください。
Q お薬の副作用が起きないようにするための注意点は何ですか?
A 1.今までにお薬や食べ物でアレルギー症状を起こしたことのある人は受診の際に必ず医師に申し出てください。
2.お薬の飲み合わせによって副作用が起こることがあります。
ほかの病院、診療所などを受診する際には、市販薬も含め服用中のお薬を医師に申し出てください。
3.お薬は医師の指示通りに服用し、自分の判断でお薬を増量、減量または中止したりしないでください。
4.医師は病気や症状のほかに年齢・体質・併用薬などを考慮し、お薬を処方します。
同じ病気や症状のような人からお薬をもらったり、お薬を譲ることはやめてください。
5.患者さんの自覚症状がお薬の副作用発見のきっかけになることが多いので、服用しているお薬の副作用を知っておくことが必要です。
Q 相互作用とは何ですか?
A 複数のお薬を服用しているとき、お薬の組み合わせによって作用が強くなったり弱くなったり、場合によっては副作用が出やすくなるなどのことをいいます。
しかし相互作用は全てのお薬で起こるわけではありません。
また、お薬は飲食物の影響を受けることもあり、これも相互作用の一つです。
Q ワーファリンを服用しているのですが、納豆を食べてはいけないのはなぜなのでしょうか?
A ワーファリンは、血液を凝固させる物質の一つであるビタミンKを阻害することで抗凝固作用を発現します。納豆を食べることにより体内のビタミンKが増えるので、ワーファリン治療中は食べないことが望ましいです。納豆以外にも、クロレラ食品、青汁も控えた方がよいでしょう。パセリ、メキャベツ、ホウレン草などの緑黄色野菜もビタミンKを含みますが、これらは栄養学的に必要なので一度に大量に食べないことに注意し、適量をコンスタントに摂取しましょう。
Q お酒はお薬にどのような影響がありますか?
A アルコールは肝臓で分解され、炭酸ガスと水になって尿中に排泄されますが、お薬の分解(代謝)も同じく肝臓で行われます。
そのため、お薬とアルコールを一緒に飲むと肝臓に大きな負担がかかることになってしまうのです。
また、アルコールは中枢神経(脳や脊髄のこと)の働きを抑えるため、中枢神経に作用する鎮痛剤、安定剤、催眠剤や抗ヒスタミン剤などのお薬はアルコールと同時に服用すると作用が強く現れることがあります。
お薬をアルコールと同時に服用することは避けましょう。
Q お薬を牛乳やジュースで服用してもよいでしょうか?
A 抗生物質のうち、テトラサイクリン系とニューキノロン系のものは牛乳と一緒に服用すると牛乳中のカルシウムにより、効果が弱まる可能性があります。また、骨粗鬆症治療に使われるビスホスホネート系のお薬も牛乳と一緒に服用すると吸収が大きく低下するという報告があります。
また、グレープフルーツジュースで服用すると効果が強く現れるお薬もあり、カルシウム拮抗薬という降圧剤などが例として挙げられます。
Q お茶やコーヒーで服用してはいけないお薬はありますか?
A お茶やコーヒーに含まれるカフェインによって効果に影響を受けるお薬があります。
喘息などの治療に使われる気管支拡張剤のテオフィリンは、大量のカフェインでイライラ、不眠等を強めることがあります。
- 妊娠とお薬について
Q 妊娠中はお薬を服用してはいけないのですか?
A どんなお薬も服用してはいけないというわけではありません。
場合によっては、お薬の服用をやめることが妊娠に影響を与えることもあるのです。
妊娠の可能性が考えられる場合や、妊娠に気づかずに服用し続けていたお薬がある場合などは医師または薬剤師に相談しましょう。
Q 長期間継続して服用し続けているお薬があるのですがどうしたらよいですか?
A 結婚時や妊娠の前にあらかじめ医師に相談してください。
出産の計画に合わせてお薬の用量を調節したり薬剤変更していくなどの対応がとられることもあります。
Q 市販のお薬を服用してもよいですか?
A 自己判断で服用することはせずに、必ず医師または薬剤師にご相談してください。
Q お薬の服用に特に注意を払う時期はありますか?
A お薬の影響を最も考慮すべき時期は「初期」です。初期は週数によって「無影響期(受精前から妊娠3週末まで)」「絶対過敏期(妊娠4週から7週末まで)」「相対・比較過敏期(妊娠8週から15週末まで)」に分けられ、特に「絶対過敏期(妊娠4週から7週末まで)」は奇形の発生と関連する重要な時期です。中期以降は「潜在過敏期(妊娠16週から分娩まで)」と呼ばれ、胎児毒性が問題となります。分娩間近になるにつれて胎児の機能への影響は一般的に大きくなります。
Q 妊婦へのサプリメントの影響はありますか?
A サプリメントは摂取が簡便なことから、過剰摂取につながりやすく、中にはビタミンAなどのように過剰に摂取すると催奇形性のリスクが高まるものもあり、注意が必要です。初めからサプリメントに頼るのではなく、栄養素のバランスを考えた食事を摂取したうえで、足りない分を補うような補助的な使い方が望ましいでしょう。
Q 授乳中にお薬を服用する際に注意すべきことはありますか?
A 母親が服用したお薬は母乳を通して乳児に間接的に摂取されることがあります。
治療上やむをえないと判断される場合以外の服用は避けた方がよいでしょう。
または、服用中は人工乳で代用することもあります。
病院にかかる際は授乳中であることを医師に伝えましょう。
- サプリメントについて
Q サプリメントとお薬を一緒に服用してもよいですか?
A 食品であるため基本的にはお薬と一緒に摂取しても構いませんが、お薬によっては飲み合わせが悪いサプリメントも存在します。
代表的なものには、ビタミンKとワーファリン、ハーブの一種であるセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)とある種の気管支拡張薬、血液凝固阻止薬、経口避妊薬、強心薬、免疫抑制剤、抗HIV薬などの効果を弱めてしまうことがあります。
- その他 参考資料
- PMDA 医薬品医療機器総合機構 くすりのQ&A
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0014.html - 東京都薬剤師会 くすりと健康
https://toyaku.or.jp/health/index.html
- PMDA 医薬品医療機器総合機構 くすりのQ&A
文責:薬剤部
最終更新日:2017年12月27日