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オリゴ転移センター開設にあたり ―オリゴ転移センター ―

オリゴ転移(オリゴメタスタシス)とは

オリゴ転移とは、少数個のがんの転移が存在する状態をいいます。個数については明確に定まっていませんが、おおよそ5個以内です。このオリゴ転移に対して切除や放射線治療などの局所治療を行うことで予後が延長する可能性が報告され、現在、がん診療において話題となっています。

従来、転移(オリゴ転移を含む)をもったがん患者さんに対する標準治療は、原則として全身療法となっています。転移をもった患者さんでは、CTやMRIなどの画像検査で指摘できる病巣以外に、画像検査では検出できないほどの微小な転移が無数に存在すると考えられます。全身に広がった転移病巣を網羅的に治療するためには全身療法が適しています。全身療法には従来から使われている殺細胞性抗がん剤・ホルモン剤に加えて、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬剤が多数開発されてきました。それらの薬剤をがんの種類や性質に応じて組み合わせて使うことで、転移をもった患者さんの治療成績が向上しています。全身療法は微小な無数の転移を制御できても、画像検査で指摘できるほどの病巣を制御することができない可能性があります。そのような状況で、オリゴ転移に対して局所治療を行うと、根治に至る可能性、延命につながる可能性があります。

ただし、オリゴ転移に対する局所治療はすべてのがんで良好な治療であるとは限りません。例えば大腸がんや腎がん、肉腫ではオリゴ転移に対する局所治療が延命につながることが認められていますが、ほかのがんでは肯定的な報告や、否定的な報告が混在しています。また、乳がんでは否定的な報告がありますが、オリゴ転移をもつ乳がん患者さん全員に局所治療の意義がないわけではありません。

オリゴ転移に対する局所治療の有効性は必ずしも証明されていませんが、その中でも、局所治療の意義が高い可能性のある患者さんとして、以下のような条件が考えられています。

① 初期治療から長期間(例えば1年以上)経過後に新たに指摘されたオリゴ転移

② オリゴ転移がある状況で繰り返し全身療法を行い、(例えば1年以上)新たな転移病巣が出現していない

③ その他、体調が良い、血液検査で炎症の指標が良く、栄養状態が良好、転移病巣の数が少なくサイズが小さい、原発巣に再発がないなどの条件を備えている患者さん

慶應義塾大学病院オリゴ転移センターでは、がんに関わる各診療科の専門医の知識を集結して、最適な治療法を検討し、提案したいと思います。局所治療としては、切除、放射線治療、穿刺治療(ラジオ波、マイクロ波、冷凍凝固療法)、血管内治療があります。当センターでは、そういった局所治療を担当する科の医師と、全身療法を行う医師が相談しながら最適な治療法を提案していきます。適応があればがんの遺伝子パネル検査を行い、効果の期待できる薬剤を探すことも可能です。

特色・方針・目標

当センターは2025年1月に開設しました。全国初の試みであり、全がん種のオリゴ転移の方を対象とします。従来、オリゴ転移に対する診療は、がん治療に携わる様々な診療科が、個別に治療戦略を考えて対応してきました。オリゴ転移に対する局所治療が注目される今日、当センターは、各診療科の知識と経験を結集して、ガイドラインにて推奨される治療法を参照しつつも、価値観や希望、ライフスタイルなど、様々な側面から総合的に判断し、根治治療を目指して最善の治療法を提供していきたいと考えています。さらに多くの治療経験を重ね、解析することで、体系的なオリゴ転移治療を形成できるよう努力していきたいと思います。

当院以外でがんの治療を行っている患者さんにおかれましては、初診はセカンドオピニオン診療とさせていただきます。原則として、現在おかかりの病院の主治医に継続して診療していただき、その主治医と連携しつつ方針を提案したり、局所治療を行ったりしようと考えています。ここでいう主治医とは、例えば肺がんの患者さんであれば呼吸器内科医、子宮がんであれば婦人科医で、定期的に診療している医師のことです。当院の医師に主治医になってもらうことを希望される場合もあるかと思いますが、現在当院では多くの患者さんを抱えております。必ずしもその希望に添えないことがあると思いますが、ご希望の際はご相談ください。ご理解のほどよろしくお願いします。

当センターでは、あらかじめ送っていただいた診療情報提供書や検査画像などの情報をもとに、がんに関わる様々な専門医師が集まり、カンファレンスを行います。そこで個々の患者さんの初診担当として最適と考えられる医師が初診担当医となります。初診の後に必要により検査を追加し、さらにカンファレンスを開いて、治療法を検討していきます。

当センターは、転移をもった患者さんに対して、標準治療を参照しつつも、個別に最善の治療法を提案できるように日々精進し診療していく所存です。

外来担当医一覧

月曜日午前:武田篤也(放射線治療)
木曜日午前:深田淳一(放射線治療)
上記の外来担当医は初診担当医とは限りません。

オリゴ転移センタースタッフ

オリゴ転移センタースタッフ

文責:オリゴ転移センター
執筆:武田篤也、平田賢郎

最終更新日:2025年3月3日
記事作成日:2025年3月3日

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