多科による有機的な連携で難病を治療 ―側弯症診療センター―
脊柱側弯症とは
側弯症は前額面(正面)で脊柱が曲がるだけでなく矢状面(側面)の変形と椎体回旋が加わり、三次元の脊柱のねじれをきたす疾患です。年齢により乳幼児期側弯症(3歳以下で発症)、学童期側弯症(4~9歳で発症)、思春期側弯症(10歳以上で発症)、成人脊柱変形(20歳以上)に分類されます。さらに、10歳未満で発症する乳幼児期側弯症と学童期側弯症をまとめて早期発症側弯症と定義されます。側弯が進行すると体幹の非対称性変形を生じるだけでなく、腰背部痛、肺機能低下、消化器症状や精神整容上の問題を生じるため、進行性の側弯症は手術が必要になります。
チーム医療が必要な側弯症
小児の側弯症である早期発症側弯症には、椎骨の変形を伴う先天性側弯症、神経線維腫症やマルファン症候群などに伴う症候性側弯症、神経や筋肉の疾患に伴う神経筋性側弯症などを含みます。そのため早期発症側弯症では呼吸、循環、内臓、骨格などに多くの合併症を抱えている患児が多く、極めて難易度の高い治療が必要になります。手術を行う際は術中の高度な麻酔管理だけでなく、術前や術後の小児科によるきめ細かな治療も必要となります。術後の生活の質を高めるため、専門的なリハビリテーションが必須となる場合もあります。そのため、慶應義塾大学病院では、円滑な多科多職種間の情報共有や連携と、集学的かつ高度な側弯症診療の提供を目指し、側弯症診療センターが設立されました(図1)。
図1.側弯症診療クラスター(運用イメージ図)
側弯症診療センターの運営体制と実績
整形外科、小児科、麻酔科、小児外科、リハビリテーション科、臨床遺伝学センター、放射線診断科で構成されています。月1回のWeb会議にて、高度な治療を要する患児の情報共有と早期からの多科多職種連携による評価を行い、集学的な介入により周術期の管理を徹底し、合併症発生のリスク低減と治療成績の向上を図っています。また、Webのメリットを生かし、ご紹介いただいた遠方の病院の先生やかかりつけ医の先生にも参加してもらい、診療情報提供書だけでは把握できない病状や社会生活の状態を共有し、治療の一助にしています。
2023年6月までに計20回のミーティングを開催し、事前の情報共有と有機的な連携が図れたことにより、効果的な入院中の治療と対応が可能となり、治療成績も向上しています。また、当センター導入前と比較し、報連相(報告・連絡・相談)が医療者間でスムーズにできるようになり、さらに安心安全な医療が提供できるという好循環を生み出せていると考えています。
今後の発展について
治療成績の解析による新たな治療体系の確立だけでなく、AIや遺伝子など先端的な基礎研究に基づいた診断方法、立位CTなど最新の画像解析、ナビゲーションなど最先端の治療技術の導入を進め、さらなる治療成績の向上が期待されます。また、当センターの運営をより多くの医療従事者や患者さんに知っていただくことで、治療のネットワークを拡大・拡充し、本病態で悩んでいる患者さんに有効な治療を提供することを目指しています。
側弯症診療センターのメンバー
文責:側弯症診療センター
執筆:渡邉航太、鈴木悟士
最終更新日:2023年6月1日
記事作成日:2023年6月1日
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