音声ブラウザ専用。こちらよりメニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメインコンテンツへ移動可能です。クリックしてください。

KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。
慶應義塾
HOME
病気を知る
慶應発サイエンス
あたらしい医療
KOMPASについて

ホーム > あたらしい医療 > 多職種連携チーム医療で支える ―パーキンソン病センター―

多職種連携チーム医療で支える ―パーキンソン病センター―

はじめに

パーキンソン病は中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が減少し、身体の運動の調節などに関係しているドパミンという物質が不足することにより発症します。2020年の厚生労働省の調査では患者総数は約29万人と報告されていますが、高齢になるほど発病率が増加するため、人口の高齢化が進む中で患者数は世界的に急増しています。爆発的に増えている様子からParkinson Pandemicという造語も提唱されており、日本でも65歳以上では100人に1人が発症する病気とされています。高齢者にとってはよくある病気といっても過言ではないパーキンソン病に対して最適な医療、看護、介護を提供し、患者さん、ご家族の健康を支えていくことは非常に大きな社会的なテーマであると我々は考えています。

多職種連携チーム医療の必要性

パーキンソン病患者さんに対する最適な医療は、1つの診療科や1人の医師のみの力では実現できず、近年、多職種連携チーム医療の必要性が非常に高まっています。その背景には、運動症状のみならず非運動症状を含めた多彩な症状の包括的把握と対応の必要性、デバイス補助療法を含めた治療の複雑化、多彩な課題を抱える高齢のパーキンソン病患者さんに対する全人的ケア・医療の提供の必要性といったことがあります。

パーキンソン病は従来、運動緩慢(動作が遅い、小さい)、静止時振戦(ふるえ)、筋強剛(こわばり)、姿勢保持障害(咄嗟の一歩が出ず転びやすくなる)に代表される運動症状を呈する疾患と考えられてきましたが、近年は精神症状、自律神経障害、感覚症状、睡眠障害など非常に多彩な非運動症状を呈することが明らかになってきました(図1)。

図1.パーキンソン病の症状

図1.パーキンソン病の症状

パーキンソン病患者さんの生活の質(Quality of Life:QOL)向上のためにはこれらの多彩な症状を適切に把握し対処する必要がありますが、医師の診察だけでは充分ではないケースが多いです。また、多くのパーキンソン病患者さんが多種類の抗パーキンソン病薬を複数回内服しており、薬を正しく服用、使用するためには色々なサポートが必要です。デバイスを用いた治療として脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)、レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法(LCIG)、注射薬なども開発されており、それらを安全に正しく使用するには医師のみならず様々な職種のサポートが欠かせない状況です。また、急増している高齢のパーキンソン病患者さんが抱える問題はパーキンソン病自体の症状のみならず、加齢に伴う症状や独居などの社会的問題など非常に多岐にわたり、これらの多様な課題に対処していくためには医師のみの力では充分ではありません。

パーキンソン病患者さんに対する診療チームのメンバーには、医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、薬剤師、管理栄養士、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなどが含まれますが、近年は患者さんやご家族もチームメンバーとなり、様々な意思決定に一緒に関与するチーム医療の在り方も提唱されています。最適なチーム医療を実現するためにはパーキンソン病に関して幅広い専門知識、豊富な経験をもった様々な医療職種の育成が必要であり、2022年4月から日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)はパーキンソン病診療に携わる医療スタッフを対象としたPDナース・メディカルスタッフ研修会を開始し、パーキンソン病療養指導士の認定を開始しました。慶應義塾大学病院でもパーキンソン病療養指導士の資格を取得した医療スタッフが働いています。

慶應義塾大学病院パーキンソン病センターの取り組み

2022年10月に発足した当院パーキンソン病センターでは、「パーキンソン病に対するチーム医療を推進し、安心・安全に最適かつ先端的な医療を提供し、多職種でパーキンソン病患者さんの健康を支える」ことを理念として掲げ、複数の診療科(神経内科外部リンク脳神経外科外部リンクリハビリテーション科外部リンク精神・神経科外部リンク内視鏡センター外部リンク)、多くの医療職種(医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、臨床心理士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー)が連携して診療にあたっています(図2)。各々の専門知識と技術を活用しながら、チーム内で目標・情報を共有し、互いに連携しながら外来および入院で診療にあたっています。

図2.慶應義塾大学病院パーキンソン病センター

図2.慶應義塾大学病院パーキンソン病センター

パーキンソン病患者さんの症状は一人ひとり異なりますので、患者さんごとに適した医療(テーラーメイド医療)の提供を目指しています。従来の内服治療に加え、脳深部刺激療法に代表されるデバイス補助療法にも積極的に取り組んでおり、適応評価から手術、術後管理まで多職種連携チームで安心・安全に取り組む体制が整っています。また、薬物療法とともに大切なリハビリテーションについては、外来リハビリテーション、オンラインリハビリテーションにも取り組んでいます。パーキンソン病でお困りの方がいらっしゃいましたら当センター(神経内科外来)にご相談ください。

パーキンソン病センタースタッフ

パーキンソン病センタースタッフ

文責:パーキンソン病センター外部リンク
執筆者:関守信

最終更新日:2023年5月1日
記事作成日:2023年5月1日

▲ページトップへ

あたらしい医療

慶應義塾HOME | 慶應義塾大学病院