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血管腫・血管奇形センター ~病態・治療について~

はじめに

慶應義塾大学病院では、2013年より血管腫・血管奇形専門外来を開設し、形成外科と放射線診断科により、外来・治療にあたってまいりました。血管腫・血管奇形は全身にわたって生じる疾患であり、これまでも各科と連携を行ってまいりましたが、2022年より診療クラスターとして血管腫・血管奇形センターを立ち上げることで、より各科との密な連携、治療にあたることを目指しております(図1)。

図1.診療クラスターの概念図

図1.診療クラスターの概念図

血管腫・血管奇形センターでは、乳児血管腫に対するβブロッカー治療から、静脈奇形やリンパ管奇形の切除や硬化療法、動静脈奇形の切除や塞栓術、硬化療法を行っております。
さらに近年では、リンパ管奇形を中心にmTOR阻害剤(哺乳類ラパマイシン標的たんぱく質)であるラパリムス®による治療も開始しております。

血管腫・血管奇形とは?

血管腫(血管性腫瘍)・血管奇形は、古くから「血管腫」と一括りに総称として考えられた疾患概念で、全身に発生するため、専門にする診療科はなく、様々な科に受診されることが多い疾患です。近年、血管内皮細胞の増殖の「血管腫」と血管の構築異常の「血管奇形」に分けられるようになってきました(図2)。「血管腫」には乳児血管腫(いちご状血管腫)や先天性血管腫などがあります。 また「血管奇形」はその構成する脈管成分により、毛細血管奇形、静脈奇形、リンパ管奇形、動静脈奇形などがあります。

図2.血管性腫瘍と血管奇形

図2.血管性腫瘍と血管奇形

乳児血管腫(いちご状血管腫)

乳児期で最も頻度の高い良性疾患の一つとされ、一般的に生後1~4週間にあらわれ、生後5~7週に急速に大きくなり、1歳ごろまで大きくなる可能性があります。その後90%以上は5~7歳くらいまでに消えていくとされますが、痕が残る可能性もあります。
治療には、経過観察、薬による治療法(β遮断薬など)、レーザー治療また瘢痕が気になる場合は手術という選択肢もあります。

毛細血管奇形(単純性血管腫)

いわゆる「赤あざ」とされる疾患で、真皮における毛細血管拡張です。生まれた時から存在し、年月をかけて、色調が濃くなったり、厚くなり隆起したりすることがあります。顔面に広範囲に広がるSturge-Weber症候群や自然に消退するサーモンパッチと呼ばれるタイプもあります。治療としては、レーザー治療、手術治療があります。

静脈奇形(海綿状血管腫)

表面にあるものから、筋肉内などにあり外表から分からないものもあります。症状として、痛みやだるさを感じることがあります。治療としては、硬化療法(血管内腔に硬化剤を注入して血管内腔をつぶす)や手術治療があります(図3)。

図3.静脈奇形に対する硬化療法

図3.静脈奇形に対する硬化療法

リンパ管奇形(リンパ管腫)

リンパ管の構築異常により起こるもので、手術治療や硬化療法(OK-432:ピシバニール®)を用いた治療が行われてきました。脈管奇形の一部では、血管新生や腫瘍増殖に関わる PI3K/Akt/mTOR 経路の遺伝子異常がこれらの疾患の原因となっていることが判明し、注目されています(図4)。2021年10月よりmTOR阻害剤(哺乳類ラパマイシン標的たんぱく質)であるラパリムス®(一般名:シロリムス)が保険適応となり、治療の選択肢となっています。

図4.脈管奇形におけるPI3K/Akt/mTOR 経路の遺伝子異常

図4.脈管奇形におけるPI3K/Akt/mTOR 経路の遺伝子異常

動静脈奇形

毛細血管を介さずに、動脈と静脈が直接つながる疾患です(図5)。動脈と静脈のつながり方によっていくつかの分類がなされており、そのタイプにより適した治療法が異なります。局所的な疼痛が生じたり、動脈からすぐ静脈に血液が流れることで心臓への負荷がかかって心不全を起こしたりすることがあり、その場合は治療が必要になります。治療としては、塞栓術、硬化療法や手術治療があります。

図5.動静脈奇形の病態と分類

図5.動静脈奇形の病態と分類

文責:血管腫・血管奇形センター
執筆:荒牧典子

最終更新日:2022年9月1日
記事作成日:2022年9月1日

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