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門脈下大静脈シャントに対する腹腔鏡を用いた新しい治療 -小児外科-

病態と原因

門脈下大静脈シャントとは、門脈と下大静脈との間に異常な血管の交通がある病態のことを指します。本来肝臓に流れるべき血液が肝臓を経由することなく全身に回ることにより、肝臓の機能異常、肺に異常を来して肺高血圧や肝肺症候群、さらには中枢神経にも作用して肝性脳症などを引き起こします。先天性の異常であると考えられており、早期に診断をつけて治療することにより、そのような症状の発生を防ぐばかりでなく、すでに生じた状態の改善にもつながると考えられております。

図1a.正常な門脈の血行動態

図1a.正常な門脈の血行動態

図1b.門脈下大静脈シャントにおける血行動態

図1b.門脈下大静脈シャントにおける血行動態

治療の方法

治療法は大きく2つに分かれます。1つは手術による閉鎖で、もう1つは血管内からカテーテルを用いて閉鎖する方法です。しかし、シャントの場所や長さ、直径などによっては血管内治療ができないことがあります。また、閉鎖した時の門脈の圧も重要な要素になります。完全に閉鎖することで、門脈の圧が急激に高くなると、大量の腹水が発生したり、腸管にうっ血が起こったり、腸の血管に血栓ができたりすることがあります。従って、門脈圧の上昇に応じて、完全に閉鎖する場合と、圧を図りながら目標の圧になるまで狭くしていく方法(半閉鎖法)をとることがあります。
慶應義塾大学病院では、そのような複雑なタイプのシャントに対して、身体に負担の少ない腹腔鏡を用いた手術を開発しました。図2のように、あらかじめシャント内に圧力をモニターできるカテーテルを通しておいて、シャントにテープをかけて徐々に狭くしていく方法です。狭くなったシャントは、自然に閉鎖することもありますし、開存している場合には2回目の手術で完全に閉鎖することもあります。治療成績は良好で、肝臓への血流が増えるために、この疾患にまつわる合併症を予防することができるだけでなく、すでに発現した症状を改善させることも可能です。時に、シャントを閉鎖後も本来の肝臓へ流れる門脈の枝が発達せずに、門脈圧亢進症状が持続する場合には、肝臓移植が考慮されることもあります。

図2. 腹腔鏡によるシャント=異常血管閉鎖術

図2. 腹腔鏡による異常血管=シャント閉鎖術

2020年度の小児外科医局員

文責:小児外科外部リンク

執筆:山田洋平

最終更新日:2020年12月1日
記事作成日:2020年12月1日

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