
全国初の性分化疾患(DSD)センターを開設しました
このたび慶應義塾大学病院に全国初の性分化疾患(Disorders / Differences of sex development:DSD)専門のセンターを開設しました。診療科の枠を超えたクラスター診療により、性分化疾患でお困りの患者さん、ご家族のお役に立ちたいと考えております。
性分化疾患(DSD)とは何でしょうか?
性染色体、性腺、内性器、あるいは外性器のいずれかが非定型的な先天的状態です。性に関する身体的なダイバーシティ(多様性)といってよいかもしれません。多くの方の性染色体はXY、あるいはXXです。しかし、性染色体がXYでもXXでもないというダイバーシティの方もいらっしゃいます。XXY、X、XYとXXを両方持っているなどの方です。
多くの方の性腺は精巣、あるいは卵巣です。しかし、性腺が精巣でも卵巣でもない方もいらっしゃいます。精巣にも卵巣にも分化していない未熟な性腺、精巣と卵巣を両方持っているなどの方です。同様に、内性器や外性器に関してもダイバーシティの方がいらっしゃいます。比較的多い性分化疾患を表1にまとめました。
表1.

どんな症状があるときに性分化疾患(DSD)を疑ったらよいのでしょうか?
染色体検査を受けたら性染色体が非定型といわれた、外性器の形がほかの人と異なるような気がする、思春期の体の変化や初経がなかなか来ない、などのときに性分化疾患を疑います。
慶應義塾大学病院性分化疾患(DSD)センターの特徴は何でしょうか?
全国初の性分化疾患に関する包括的かつ診療科横断的なセンターです(図1)。近年、社会の性分化疾患に対する理解は明らかに高まっています。さらに性分化疾患に関する医療は大きく進歩し続けています。すなわち病態解明は著しく、新しい診断法・治療法が開発され、心理社会的な支援は具体化しました。この医療の進歩を先導し、またリアルタイムに対応するため、高い専門性を有する各診療科が連携し、最先端かつ、ひとりひとりの患者さんのダイバーシティに最適な医療を提供します。小児科、泌尿器科、腎臓内分泌代謝内科、小児外科、産婦人科、形成外科、精神・神経科、臨床遺伝学センター、臨床検査医学を中心に専門の外来を設置し、看護師、臨床心理士も交えた多職種からなるチーム医療を行います。慶應義塾大学病院では1990年代から性分化疾患に対して積極的な医療を展開していますので、経験も豊富です(図2)。生まれたばかりの赤ちゃんの外性器が非定型であるために、男の子か女の子か分かりにくく、法律上の性の決定が難しいという緊急対応を要する性分化疾患、内性器や外性器の高度な手術を必要とする性分化疾患、思春期以降にホルモン治療を必要とする性分化疾患、自分のジェンダーに揺らぎを持っている性分化疾患、などすべての年齢のすべての性分化疾患の方に対し、初診時から生涯フォローまでお手伝いします。365日24時間体制で全国から患者さんを受け付ける体制を整えています。お気軽にご相談ください。

図1. 包括的かつ診療科横断的な性分化疾患(DSD)センター

図2.慶應義塾大学病院に入院した性分化疾患の患者さんの数(2014〜2018年)

性分化疾患(DSD)センター診療チーム
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執筆:長谷川奉延
最終更新日:2019年9月2日
記事作成日:2019年9月2日

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