
アスリート・スポーツ愛好家のトータルサポートを目指して ―スポーツ医学総合センター―
はじめに
スポーツ医学総合センター(旧称:スポーツクリニック)は、主にスポーツ選手や体育会学生の外傷および障害の治療を通したスポーツ早期・完全復帰を目指したサポート(医学がスポーツに貢献する分野)、種々の疾病を持った患者さんの運動療法の充実(スポーツが医学に貢献する分野)という、スポーツと医学の双方向性の貢献を実現する場として、整形外科・内科をはじめ、多くの診療科が参画する形での外来診療を行っています。アスリートサポートと患者さんの運動療法は、大きく異なるように思われますが、いずれも健常人とは違い、個別のよりきめ細やかな食事・運動指導を必要とすること、さらに究極的には予防が重要であることなど多くの共通点があります。そのような中で、我々は従来の病気を治すことだけでなく、予防や自由診療にも力を入れており、外来診療の中から「ランニング外来」、「スポーツメンタルサポート外来」を紹介します。
ランニング外来
ランニングパフォーマンスの改善に不可欠な体力(全身持久力など)、体組成(体脂肪率および筋肉量)、ランニングフォームなどをそれぞれ詳細に評価し、個別のアドバイスとサポートを行っています。特に当外来では、「ケガをせずに継続できる=より多くのトレーニングを積むことで結果としてパフォーマンスが向上する」ことを最も重視し、そのために必要な体力の向上やフォームの改善を中心に医師とアスレティックトレーナーが共同して外来を担当しています。

アスリート・ランナー対応大型高速トレッドミル
また、ジョギングやランニングのような高強度運動は、短時間で効率的な運動ができ、筋力改善(レジスタンス運動効果)も期待できることから、内科的合併症を持った方にも運動の一つのオプションとして注目されています。そのため、当外来では運動負荷心電図などを用いて安全性の評価も詳細に行いますので、高強度運動に不安を感じていらっしゃる方にも安心して取り組んでいただくことができます。さらに、当センターの特長である既存の科の枠を超えて、スポーツや運動を中心とした診療が行える強みを生かして、ランニング障害を万一起こした場合にも経験豊富な膝や足の専門家の診断や治療をタイムリーに受けることが可能です。
スポーツメンタルサポート外来
アスリートは競技特性上、常に結果を求められ、強いストレス下にさらされることが少なくなく、皆がうまく適応できるわけではありません。例えば、スポーツ復帰に向けてのモチベーションの維持、再受傷への不安や恐怖の克服は容易ではないものの、良い精神状態を維持できればより早期の完全復帰が期待できます。同様に、試合に向けてより良い精神状態を維持することができれば、より高いパフォーマンス発揮が可能となります。
当外来では、アスリートとその家族、指導者を対象に、常にスポーツ復帰とパフォーマンス向上を念頭においたメンタルサポートを実施しています。
おわりに
2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムである国立競技場は、慶應義塾大学病院と目と鼻の先にありますが、同競技場はオリンピック後も市民に開かれたスポーツクラスターの拠点として活用されていくことが期待されています。

スポーツ医学総合センターフィットネス外来
東京オリンピック・パラリンピックに向けて新たに設立されたスポーツ庁も、アスリートの育成はもちろん健康スポーツの充実のための取り組みが期待されています。当センターも、スポーツ・運動の視点から、整形外科、内科といった既存の科の枠組みを超えて、競技スポーツ、生涯(レクリエーショナル)スポーツに多くの人がかかわるための全般的サポートを行うことで、スポーツの楽しさ、素晴らしさを実感していただき、結果としての、日常生活の充実、疾病の予防・健康寿命の延長を目指していきたいと考えています。
関連リンク
文責:スポーツ医学総合センター
執筆:東宏一郎
最終更新日:2018年6月1日
記事作成日:2018年6月1日

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