
肝臓病教室(改訂) -消化器内科-
はじめに
医療は日進月歩であり、新しい治療法がどんどん開発されています。肝疾患においても例外ではなく、特に昨今のC型肝炎に対するインターフェロンフリー治療の出現によりC型肝炎治療はめざましい変化を遂げました。このような変化の中で、慢性肝疾患の背景も変化しつつあります。以前はB型肝炎(HBV)やC型肝炎(HCV)などのウイルス性肝炎が多くを占めていましたが、先に述べた新薬の出現もあり、昨今は生活習慣を背景とした非アルコール性脂肪肝炎(NASH)やアルコール性肝炎(ASH)がクローズアップされてきています(図1)。また肝疾患の特徴は、ウイルス性肝炎や自己免疫に関わる肝炎にも体重増加や飲酒などの生活習慣の要素が加わるなどのオーバーラップがありえることです。
さらに慢性肝炎、肝硬変の予後には食生活や体の筋肉量が関係するとされており、肝疾患と生活習慣には密接な関係があります。

図1.肝臓がん患者における背景疾患
肝臓病教室の開催
慶應義塾大学病院(以下、当院)では慢性疾患に関する情報を広くかつ効率よく患者さんにお伝えしたいという思いから、1996年より慢性肝炎や肝硬変・肝がんの患者さんを対象に、肝臓病教室を開催し、教室スタイルでの情報提供を開始しました。
教室は、1) 慢性肝炎とその治療、2) 肝硬変の合併症とその治療、3) 肝臓病の検査について、4) 肝臓病を抱えた日常生活の注意の4つのテーマを掲げて、3ヶ月に1回のペース、1つのテーマについて約2時間で、講話と質疑応答の時間を設けながら行っています。
当院の肝臓病教室の特徴
当院での肝臓病教室では、大学病院という特性を生かし、新薬などの最新のトピックスを交えて毎回テーマごとに医師から講話を行っております(図2)。また栄養士からの講話も行っております。慢性肝疾患は肝炎から肝硬変と変化していく病態であり、一言に肝がん・ウイルス性肝炎と言っても、その患者さんごとの状況でさまざまな治療法があるのが慢性肝疾患の特徴です。同様に患者さんごとに気を付けるべき生活習慣は異なります。いろいろな状況の患者さんと一緒にグループワークとして参加いただくことで、医療従事者からの講話だけでなく、患者さん同士の情報交換から多くを学んでいただく場となっています(図3)。

図2.講話と質疑応答

図3.グループワーク
今後について
患者さんへの集団指導としては古くから糖尿病教室が全国で盛んに行われています。現在成人の4人に1人が糖尿病に罹患すると予想されていますが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)も同様に成人の2割が罹患するとされています。C型肝炎を代表とするウイルス性肝炎の劇的治療変化や高齢化もあり、生活習慣を背景としたこのような慢性肝炎は今後増加が見込まれます。現代は「無病息災」ではなく「一病息災」の時代とも言われます。肝臓病教室は、病気を抱えた上での生活を考えてもらうために情報と知恵を提供する場として広く患者さんにご利用いただければと思います。
文責:消化器内科
執筆:宇賀村文、中本伸宏
最終更新日:2018年3月1日
記事作成日:2018年3月1日

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