残存聴力活用型人工内耳(EAS:Electric Acoustic Stimulation) -耳鼻咽喉科-
はじめに
人工内耳は、現在世界で最も普及している人工臓器の一つで、聴覚障害があり補聴器での装用効果が不十分である方に対する聴覚獲得法です。
従来は両側とも純音聴力検査にて90dB以上の方で補聴器でも会話が難しい方であり、補聴器の装用効果がほとんど認められない方を対象としていました。さらに、従来の人工内耳の適応が拡大し、残存聴力活用型人工内耳が行われるようになりました。中音から高音域のみの難聴者に対しても補聴器と人工内耳を組み合わせることで治療が可能になりました。
残存聴力活用型人工内耳の適応
下記の 4 条件全てを満たす感音難聴患者が適応です。
1)-1 純音による左右気導聴力閾値が下記のすべてを満たす(図1)。
125Hz、250Hz、500Hzの聴力閾値が65dB以下 / 2000Hzの聴力閾値が80dB以上 / 4000Hz、8000Hz の聴力閾値が 85dB 以上。
※ ただし、上記に示す周波数のうち、1 カ所で10dB以内の範囲で外れる場合も対象とする。
1)-2 聴力検査、語音聴力検査で判定できない場合は、聴性行動反応や聴性定常反応検査(ASSR)等の 2 種類以上の検査において、1)-1 に相当する低音域の残存聴力を有することが確認できた場合に限る。
2) 補聴器装用下において静寂下での語音弁別能が65dB SPLで60%未満である。
※ ただし、評価は補聴器の十分なフィッティング後に行う。
3) 適応年齢は通常の小児人工内耳適応基準と同じ生後 12 か月以上とする。
4) 手術により残存聴力が悪化する(EAS での補聴器装用が困難になる)可能性を十分理解し受容している。
禁忌・慎重な適応判断が必要なものは一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会が定めた人工内耳適応基準および小児人工内耳適応基準 2014 の「禁忌」・「慎重な適応診断」に準ずる。
純音聴力検査では図1の赤色部分にあてはまることが必要です。さらなる検査は当院で行い適応を決定させていただきます。
図1 残存聴力活用型人工内耳(EAS)の適応となる聴力像(赤色部分)
新医療機器使用要件等基準策定事業 (残存聴力活用型人工内耳)報告書(一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会. 平成26年3月)よりMEDEL社作成の図を引用
文責:耳鼻咽喉科
執筆:神崎 晶
最終更新日:2016年3月1日
記事作成日:2016年3月1日
あたらしい医療
- 2024年
- 臨床研究を通じたあたらしい医療への貢献 ―リウマチ・膠原病内科―
- リンパ管腫(嚢胞状リンパ管奇形) ―小児外科―
- 安全・安心の美容医療の開始 ―形成外科―
- アルツハイマー病の新しい治療 ~アルツハイマー病の原因物質、アミロイドβを取り除く薬剤~ ―メモリークリニック―
- 糖尿病・肥満症のあたらしい医療 ―糖尿病先制医療センター ―
- うつ病に対する反復経頭蓋刺激療法(rTMS療法)の発展 ―精神・神経科―
- 好酸球性消化管疾患(EGID)~アレルギーセンターの取り組み~ ―アレルギーセンター ―
- パーキンソン病に対するデバイス補助療法の進歩 ―パーキンソン病センター―
- 早産で小さく生まれた赤ちゃんの性別を正確に決める ―性分化疾患(DSD)センター―
- 外科的切除が困難な腫瘍にエキスパート達が集結し挑む:大血管浸潤腫瘍治療センターの設立―大血管浸潤腫瘍治療センター―
- 小児白血病に対するCAR-T細胞療法 ―小児科―
- 表在型消化管腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の進歩 ―内視鏡センター―
- 2023年
- 副腎の新しい治療~原発性アルドステロン症に対する新しい低侵襲治療:ラジオ波焼灼術~ ―腎臓・内分泌・代謝内科―
- 胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法(患者申出療養) -呼吸器外科・放射線科・呼吸器内科-
- いよいよ始まる婦人科がんでのセンチネルリンパ節ナビゲーション手術 ―婦人科―
- リンパ浮腫の発症予防・早期発見から精度の高い診断方法・先端治療まで ―リンパ浮腫診療センター―
- 多科による有機的な連携で難病を治療 ―側弯症診療センター―
- 多職種連携チーム医療で支える ―パーキンソン病センター―
- 臓器移植センターでの取り組みについて ―臓器移植センター―
- 口腔顔面痛ってどんな病気?筋肉のコリが原因になることがあるって本当? ―歯科・口腔外科―
- DX(デジタルトランスフォーメーション)で実現する効率的で質の高い微生物検査 ―臨床検査科―
- 中枢性運動麻痺に対する新たな治療法 ―リハビリテーション科―
- 2022年
- 新薬が続々登場!アレルギー疾患の治療革命 ―アレルギーセンター ―
- 小児リウマチ・膠原病外来の開設 -小児科-
- 最新ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を用いた腹腔鏡下手術開始 -泌尿器科-
- UNIVAS成長戦略に対する本校の貢献 ~UNIVASスポーツ外傷・障害予防研究~ ―スポーツ医学総合センター―
- 血管腫・血管奇形センター ~病態・治療について~
- 炎症性腸疾患 ~専門医連携による最新の取り組み~ -消化器内科-
- 多職種連携で行うAYA世代がん患者さんの支援 -腫瘍センター AYA支援チーム-
- 糖尿病のオンライン診療 -腎臓内分泌代謝内科-
- 義耳と軟骨伝導補聴器を併用する小耳症診療 -耳鼻咽喉科-
- 腸管機能リハビリテーションセンター:Keio Intestinal Care and Rehabilitation Center
- 歯周組織再生療法 ―歯科・口腔外科―
- 外傷性視神経管骨折へのチームアプローチ(視神経管開放術) ―頭蓋底センター―
- 最新の角膜手術(改訂) ―眼科―
- 子宮体がんの手術とセンチネルリンパ節生検(改訂) -婦人科-
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 早期消化管がんに対する低侵襲内視鏡治療(改訂)
-腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門- - 血液をきれいにするということ(改訂)
-血液浄化・透析センター- - 1型糖尿病治療の新しい展開
―糖尿病先制医療センター― - アルツハイマー病の新しい画像検査
~病因物質、ベーターアミロイドとタウ蛋白を映し出す検査~ - 性分化疾患(DSD)センターの活動を紹介します
- 乳がん個別化医療とゲノム医療 ―ブレストセンター
- 気管支喘息のオーダーメイド診療 -呼吸器内科―
- 人工中耳手術 ~きこえを改善させる新しい手術~ ―耳鼻咽喉科―
- がん患者さんへの妊孕性温存療法の取り組み ―リプロダクションセンター―
- 腰椎椎間板ヘルニアの新たな治療 ~コンドリアーゼによる椎間板髄核融解術~ ―整形外科―
- 痛みに対する総合的治療を提供する「痛み診療センター」の開設
- 軟骨伝導補聴器 ~軟骨で音を伝える世界初の補聴器~
―耳鼻咽喉科― - 診療科の垣根を超えたアレルギー診療を目指して
― アレルギーセンター ―
- 早期消化管がんに対する低侵襲内視鏡治療(改訂)
- 2018年
- 2017年
- 自然な膝の形状を再現した違和感のない人工膝関節置換術
-整形外科- - 母斑症診療の新たな枠組み
―母斑症センター― - 子宮頸部異形成に対する子宮頸部レーザー蒸散術
―婦人科― - 新しい鎮痛薬ヒドロモルフォンによるがん疼痛治療
―緩和ケアセンター― - 内視鏡下耳科手術(TEES)
―耳鼻咽喉科― - 頭蓋縫合早期癒合症の治療‐チーム医療の実践‐
―形成外科― - 気胸ホットラインの開設
―呼吸器外科― - 出生前診断‐最新の話題‐
-産科- - クロザピン専門外来の取り組みと治療抵抗性統合失調症に対する研究について
―精神・神経科― - 治療の難しい天疱瘡患者さんに対する抗CD20抗体療法
-皮膚科- - AED(改訂)
-救急科- - IBD(炎症性腸疾患)センター
-消化器内科- - 肝不全/肝硬変に対する究極の治療 -肝移植-(改訂)
-一般・消化器外科-
- 自然な膝の形状を再現した違和感のない人工膝関節置換術
- 2016年
- 2015年
- 2014年
- 2013年
- 2012年
- 2011年