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上部消化管疾患における最新の低侵襲治療:POEM、NEWS(改訂)
-一般・消化器外科-

食道アカラシアに対する低侵襲治療:POEM

食道アカラシアとは

食道と胃のつなぎ目には下部食道括約帯(lower esophageal sphincter:LES)と呼ばれる部位があり、普段はカメラのシャッターのように閉じており、胃の内容物の食道への逆流を防止しています。
食べ物を飲み込むと、食道の筋肉が上から下に向かって順序よく動いて、食べ物を食道から胃に運んでいきます。この際、LESが緩んで、ちょうどシャッターが開いたような状態になるので、食べ物がスムーズに胃に流れていきます。このLESの緩むという機能に障害を生じた病気が食道アカラシアです。
食べ物がうまく食道から胃に流れていかないため、食べ物が食道に溜まってしまい、食道が少しずつ太くなってしまいます。症状としては飲み込みにくさ、食べ物の口や鼻からの逆流、胸の痛みなどがあります。約10万人に1人が発症するといわれています。
良性疾患なので、アカラシアが直接の原因となって死亡することは基本的にはありません。ただし、通常の方より食道がんになるリスクが高いといわれているので、定期的に検査を受けるなどの注意が必要です。

食道アカラシアに対する最新の低侵襲治療:POEM

アカラシアの治療は、症状改善を目的に食道下部括約筋を緩めることです。内服薬による内科的治療やバルーン拡張術による内視鏡的治療がまずは選択されますが、改善に乏しい場合は手術加療が選択されることも多いです。以前は開腹手術あるいは腹腔鏡手術が行われていましたが、現在では主に内視鏡によって下部食道括約筋の一部を切開して治療するPOEM(経口内視鏡的筋層切開術:Per-Oral Endoscopic Myotomy)という治療が主流となり、患者さんの負担が非常に少なくなりました。

POEMは国内で開発された治療法であり、腹部を切開する必要がない治療法となるため、現在世界中で広がっています。慶應義塾大学病院ではいち早くPOEMを導入し、2017年以降ほぼすべての症例でPOEMを行っています。POEMが行えないような症例の場合は、腹腔鏡を用いたHeller and Dor手術といった外科治療を行います。

胃の粘膜下腫瘍に対する低侵襲治療:LECS、NEWS

当院は、胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡手術における先駆け的な施設であり、また、胃を切除する範囲を小さくするために、2012年より内科・外科合同のチームで行う腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)という手術を導入しました。

LECSについて

LECSでは、手術の際に腹腔鏡とともに胃カメラ(内視鏡)を使用します。内視鏡と腹腔鏡の両者を使うことで、腫瘍を傷つけることなく、かつ胃の壁の切除範囲を最小限にして腫瘍を切除することが可能になりました。切開した部分は腹腔鏡を用いて自動縫合器や手術用の糸(縫合糸)を使用して縫い閉じます。特に切除した範囲が噴門や幽門にかかる場合は、1本ずつ手で縫い合わせ、狭窄を予防します。
LECSは十分に低侵襲な手術ですが、腫瘍を切除する際に少量の胃液が体の中に漏れ出てしまうことがあります。通常は問題にならない程度の量ですが、腫瘍が胃の内側に露出している場合(Delleと呼びます)、露出した腫瘍に触れた胃液が体の中に漏れ出ることで、腹膜播種を起こす可能性があります。
そこで当院では、非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(NEWS)という手術をいち早く導入しました。

NEWSについて

NEWSではまず、腹腔鏡を用いて胃の壁の外側半分(漿膜・筋層)のみを腫瘍のすぐ外側で切開し、切開された部分を縫い閉じます。これは非常に細かな作業であるため、1本ずつ慎重に手で縫い閉じます。
さらに、内視鏡を用いて胃の壁の内側半分(粘膜・粘膜下層)を腫瘍のすぐ外側で切開し、腫瘍を切除します。切開された部分は内視鏡用のクリップや糸を用いて縫い閉じます。切除された腫瘍は患者さんの口から取り出します。
このようにNEWSでは段階的に胃の壁を縫い閉じることで、胃液を体の中に漏らすことなく腫瘍を切除することが可能です。

これまで広く行われてきた腹腔鏡下胃局所切除術に加え、当院ではこれらの新しい手術を導入し、より個々の患者さんに適した治療を選択することが可能となりました。

関連リンク

文責:一般・消化器外科外部リンク

執筆:川久保博文

最終更新日:2023年12月13日
記事作成日:2011年3月1日

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