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ホーム > 病気を知る > 肝臓と胆嚢とすい臓の病気 > 膵・胆管合流異常症と胆道拡張症(成人)

膵・胆管合流異常症と胆道拡張症(成人)

すい・たんかんごうりゅういじょうしょうと たんどうかくちょうしょう(せいじん)

概要

肝臓で作られる胆汁、膵臓で作られる膵液は、それぞれ胆管、膵管を通り、最終的に十二指腸乳頭部(主乳頭)を通り、十二指腸内に排出されます。通常は胆管と膵管は十二指腸の壁のところで合流しますが、乳頭括約筋(Oddi括約筋)という筋肉によってお互いに逆流しないように調整されています。膵・胆管合流異常症は、胆管と膵管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常であり、乳頭括約筋の作用が及ばないことから、胆汁および膵液の相互逆流を来し、様々な症状や病態を引き起こす原因となります。膵液の胆管への逆流は高頻度に胆道がんを発生させる可能性があり、逆に胆汁の膵管への逆流は膵炎を引き起こすことがあるといわれています。膵・胆管合流異常症では、胆管拡張を伴うタイプ(先天性胆道拡張症)と胆管に拡張を伴わないタイプ(胆管非拡張型)があり、それぞれ治療法が異なります。膵・胆管合流異常症が疑われた場合は、詳細な検査や手術が必要となるため、胆膵疾患の診療を専門とする施設への受診をお勧めします。

症状

成人の方で発見される場合は、定期検診のエコー検査などで胆管拡張が見つかることが多く、無症状の方がほとんどです。症状のある方の場合は、腹痛、黄疸、発熱、嘔吐、便が白くなる(灰白色便)、体重減少などが起こりえます。

図1.胆管膵管合流異常症

図1.胆管膵管合流異常症

診断

1)採血検査

無症状時には、血液検査で異常を認めないことが多く、有症状時には、血中アミラーゼ、ビリルビン、胆道系逸脱酵素(ALP, γ-GTPなど)の数値の上昇などを来すことがあります。胆管がんの合併を調べるために腫瘍マーカーのCEAやCA19-9なども検査します。

2)CT・MRI検査

MRI検査は、合流異常の診断と、併発する疾患を簡易に検索することができます。MRIは呼吸などの動きにより画像がぶれるため、胆管と膵管の微細な評価は難しいことがあります。胆管腫瘍や胆管結石の併発が疑われるときには造影CT検査で正確な診断をする必要があります。

3)超音波内視鏡検査

超音波内視鏡は、肝胆膵に隣接する胃や十二指腸から近い距離で観察することが可能です。機器の進歩も有り、胆管と膵管をより精細に描出することが可能です。
当院では、十分な鎮静剤を使うことで苦しくなく検査を受けられるように配慮しています。

4)胆道造影検査

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)で胆管と膵管の合流部を確認します。膵管と胆管が十二指腸壁外で合流していることを証明することが可能です。また、膵液が胆管に逆流していることを確認するために、胆汁中の膵液成分であるアミラーゼを測定します。ERCP検査は膵炎などの重大な偶発症が起こりえるため、検査時には十分な説明をさせていただきます。

治療

成人の膵・胆管合流異常症において、胆道がんを合併する可能性が高いといわれています。国内の2,500人の患者を対象とした調査で、胆管が拡張している「先天性胆道拡張症」の約2割、胆管が拡張しない「胆管非拡張型」の約4割で胆道がんが合併します。通常の胆道がん発生年齢よりも若年で発症します。日本のガイドラインでは、胆管膵管合流異常症の診断後は「早期の手術」が推奨されています。「先天性胆道拡張症」では、胆管がんが多いため、肝外胆管切除(胆管と膵管を分けるため分流手術ともいいます。)を行います。「胆管非拡張型」では、胆嚢がんが多いため、胆嚢摘出術を行います。早急に手術が難しい場合は定期的な画像検査を行いながら胆道がんの定期的なスクリーニングを行います。

生活上の注意

普段の生活に注意点はありませんが、合流異常性に伴う疾患に合わせての生活の注意があります。胆管結石や膵炎については、脂肪分の少ない食事にする必要があります。また、がん予防のために手術を施行後も、胆管がんを早期発見するために定期的な通院をお勧めします。

慶應義塾大学病院での取り組み

膵・胆管合流異常症、先天性胆道拡張症は妊婦健診の胎生期や、乳幼児で診断される場合もありますが、無症状の場合、人間ドックや健康診断の腹部エコーなどで偶然発見される症例も多くあります。合流異常の確定診断、胆管がんの有無を検索するには十分な知識と技術が必要です。慶應義塾大学病院では、最新の内視鏡設備、十分な研鑽を積んだ内視鏡医、外科医で連携を取っていることから、検査から手術まで一貫した医療を提供できる体制を整えています。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 膵・胆管合流異常診療ガイドライン / 日本膵・胆管合流異常研究会編, 日本胆道学会編
    東京 : 医学図書出版, 2012.5
    *専門的用語が多いですが、世界初のガイドラインであり、膵・胆管合流異常診療の基盤となっています。
  • 胆道癌診療ガイドライン : エビデンスに基づいた / 日本肝胆膵外科学会・胆道癌診療ガイドライン作成委員会編
    改訂第3版
    東京 : 医学図書出版, 2019.6
    *合併することの多い胆道がんについての診断・治療方法が記載されています。

文責:消化器内科外部リンク
最終更新日:2021年11月12日

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