テニス肘、ゴルフ肘
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
【概要】
テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)とも呼ばれ、肘の外側(親指側)に痛みを生じる疾患で、50~60歳代によくみられます。必ずしもテニスとは関係なく、手首や肘や前腕の筋肉を繰り返し使う作業、日常生活動作で発症するケースも多くあります。
原因としては、肘に負担がかかるスポーツや仕事、生活習慣などによる疲労の蓄積が引き金になることが多いようです。また、加齢による肘関節外側の伸筋腱(手や指を伸ばす筋肉、腱)付着部の変性(加齢などによる衰え)も一因と考えられています。
【症状】
主な症状は、肘関節の外側から前腕にかけての痛みで、ドアのノブを捻る、肘を伸ばした状態で物を持ち上げる、タオルを絞るなどの動作で痛みを生じます。軽症の場合、安静にしているときの痛みはありませんが、進行すると安静時でも痛みを訴える患者さんもいらっしゃいます。
【診断】
多くの場合、以下のテストで肘の外側に痛みが誘発されればテニス肘の可能性が高いです。
- 肘の外側部の痛み(圧痛)
肘を軽く曲げて、肘の外側にある骨の隆起(上腕骨外側上顆)を押したときの痛み。 - Thomsen(トムセン)テスト
肘を伸ばした状態で、手をグーにして握り、手首を伸ばした状態で、第三者(検者)が手首を曲げる方向に抵抗を加えて痛みが出れば陽性です。
同様に中指を伸ばした状態で抵抗を加えて痛みが出てもテニス肘の可能性は高いです。
画像診断においてレントゲン撮影では異常はみられないことが多く、MRIを撮影すると肘の外側の筋肉(腱膜)が損傷した部分がわかることがあります。
【治療】
- 局所安静
まず、原因となっている筋肉の負担を減らすことが大事です。痛みが出る動作を避けたり、重量物を避けたりするような生活指導も行います。スポーツが原因と考えられるケースでは一時休止することが望ましい場合もあります。
- 薬物療法(薬を使った治療)
湿布や塗り薬、消炎鎮痛剤の内服を追加することもあります。また、少量のステロイドを局所麻酔剤とともに患部に注射することもあります。この注射は有効なことが多いのですが、頻回に行うことにより、かえって筋肉、腱の瘢痕化(劣化)を引き起こすことがあり、短期間に複数回行うことは避けることが望ましいです。
- 装具療法
テニス肘用バンドや手首を安静にする装具を装用することで患部の筋腱の付着部にかかる力を減少させます。
- 理学療法
原因となっている筋肉のストレッチやマッサージなどを行ったり、痛い部位を温めたり、電気や超音波を当てたりすることがあります。
- 手術療法
上記の治療を行っても症状が改善せず、痛みが高度な場合に行います。内視鏡を用いて傷んだ腱膜を切除しますが、傷を切開して行うこともあります。滑膜ひだという組織が関節に挟まり込んで、痛みが出る場合には、それも同時に切除することがあります。入院期間は3~7日程度です。
ゴルフ肘 (上腕骨内側上顆炎)
【概要】
ゴルフ肘とは、上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)とも呼ばれ、肘の内側(小指側)に痛みを生じる疾患で、テニス肘の反対のイメージの疾患です。ゴルフとは必ずしも関係なく、テニス肘と同様に手首や肘に負担がかかるスポーツや仕事、加齢による肘関節内側の屈筋腱(手や指を曲げる筋肉、腱)の変性(加齢などによる衰え)も一因と考えられています。
【症状】
主な症状は、肘関節の内側から前腕にかけての痛みで、肘を伸ばした状態で物を持ち上げる、タオルを絞る、などの動作で痛みを生じます。肘の内側には尺骨神経といって、薬指や小指の感覚を支配する神経もダメージを受けていることが多く、薬指や小指がしびれたりすることもあります。軽症の場合、安静にしているときの痛みはありませんが、進行すると安静時でも痛みを訴える患者さんもいらっしゃいます。
【診断】
多くの場合、以下のテストで肘の内側に痛みが誘発されればゴルフ肘の可能性が高いです。
- 肘の内側部の痛み(圧痛)
肘を軽く曲げて、肘の内側にある骨の隆起(上腕骨内側上顆)を押したときの痛み。 - 肘を伸ばした状態で、手をグーにして握り、手首を曲げた 状態で、第三者(検者)が手首を伸ばす方向に抵抗を加えます。 これで痛みが出れば陽性と判断します。
画像診断においてレントゲン撮影では異常はみられないことが多く、MRIを撮影すると筋肉が損傷した部分がわかることがあります。
【治療】
局所安静、薬物療法、装具療法、理学療法などは基本的にテニス肘に対する治療と、ほぼ同様です。このような治療を行っても症状が改善せず、痛みが高度な場合に手術を行います。神経を保護しながら傷んだ腱膜を切除しますが、内視鏡を用いて行うこともあります。入院期間は3~7日程度です。
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文責:
整形外科
最終更新日:2021年6月1日