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神経内分泌腫瘍(NEN, NET, NEC)

しんけいないぶんぴつしゅよう

概要

神経内分泌腫瘍(ネン、Neuroendocrine Neoplasm)は、人体に広く分布する神経内分泌細胞からできる腫瘍で、膵・消化管・肺など全身の様々な臓器にできます。最近、患者数が増加していることが報告されています。
NENはNET(ネット、Neuroendocrine Tumor)とNEC(ネック、Neuroendocrine Carcinoma)の総称です(図1)。

図1

図1

比較的に進行のスピードが遅いもの(NET G1/NET G2/NET G3)と進行のスピードが速いもの(NEC)に分けて悪性度を分類します。この悪性度により治療方法が大きく変わります(図2)。近年の改訂内容としては、NETG3という新たな分類の誕生です。今までNECとして一つとされてきた病名の中にもう少しNETよりの性格の腫瘍があることが分かりました。

NETは一般的に進行が遅く予後良好といわれていたため「カルチノイド(がんもどき)」とも呼ばれていましたが基本的には悪性化(転移)することが多いため最近はNETという名称が使われるようになりました。有名人ではアップル社のスティーブ・ジョブズの死因がNETであったといわれております。

図2

図2

症状

腫瘍から分泌されるホルモンが人体に強い影響を与える機能性NETと症状のない非機能性NETに分けられます。機能性の場合は特徴的な症状(下痢や低血糖など)で診断されることも多いのですが、非機能性の場合には、大きくなってから見つかることも多くあります。

診断

腫瘍の性格を調べるために、腫瘍の病理診断が必要です。病理診断は、腫瘍の生検や手術によって採取した腫瘍組織を顕微鏡で調べます。膵臓がんと誤診されている膵NETの患者さんもいますので、必ず組織の確認が必要です。

治療

1. NET

NET (G1/G2/G3)の治療は症状改善によるQOL(クオリティオブライフ:生活の質)の向上や生命予後の改善を目的に行います (図3)。NETG3は他のNETG1/G2と比較すると比較的増殖が速いので、その治療法については現在検討中です。

図3

図3

  • 治療には、手術、薬物療法、局所療法などがあります。
  • 手術の適応がある場合(安全に切除できる場合)には、手術をします。
  • 手術の適応がない場合には、薬物療法を中心とした治療を行います。肝臓の転移に対しては局所療法(ラジオ波焼却療法や血管塞栓術)を行うこともあります。
  • 腫瘍がすべて切除できなかった場合には、薬物療法を中心にした治療を追加します。
  • 薬物療法は腫瘍の進行を抑える目的の治療と、症状を改善する治療に分けられます(図4)。
図4

図4

薬物療法は、腫瘍の大きさ、進行のスピードによって適宜選択しますし、時には局所療法を考慮することもあります(図5)。

図5

図5

2. NEC

NECの治療は、病気の広がり方により手術、抗がん剤、放射線を適宜選択します(図6)。シスプラチンを中心とした古典的な抗がん剤の反応性が良いことが知られております。

図6

図6

最近のTopics:私たちのグループでNECの原因を明らかにしました
NECは10万人に1人と謎の多いタイプのがんでした。そのため、なかなか研究が進まず、新しい薬を検討するような動物モデルもほとんどない状態でした。そこで私たちは患者さんのサンプルを集めて、特殊な技術を使用して細胞を増やし、ライブラリー化しました。それによって今まではなかなか解析や動物モデルでの検討が難しかったこの病気で多くのことを検討することが可能となり、その解析結果を世界に発表しました(図7)。

図7

図7

このような病気の原因の解明と薬の開発のための新しいモデル作成は今後の新しい治療開発へつながる画期的な成果となったと思います。一方、このような成果につながったのは、当院や協力いただいた施設に通院されていた一人一人の患者さんのご協力のお蔭ですので、この場をお借りして深く御礼申し上げます。詳細は当院のプレスリリース外部リンクをご覧ください。

生活上の注意

  • まず、あわてないこと。冷静に主治医と相談して病気を学びましょう。あせって行動せずに、1つ1つの治療をシンプルに丁寧に治療を続けることが大切です。
  • 時にはセカンドオピニオンや患者会などを利用して、第三者の意見も参考にしてみることも考慮しますので、ご遠慮なくお申し出ください。
  • 病気を「放置」してはいけません。信頼関係を築いた医師と必要に応じた治療や、適切な「経過観察」を行い、病気と長く、正しくお付き合いしていくことが良いでしょう。

慶應義塾大学病院での取り組み

図8. 各領域の専門家の協力とチームワーク

図8. 各領域の専門家の協力とチームワーク

関連する診療科・部門間で次のような協力のもと、診療にあたっております。

消化器内科
薬物療法は腫瘍センターの医師や消化器内科学の医師を中心に適切に診療を実施します。常に最新のエビデンスと標準治療を意識したうえで、難しい医学用語を分かりやすく丁寧に説明します。毎週金曜日14時~専門外来を開設しました(2015年11月~)。

消化器外科
手術が必要な場合には、消化器外科が中心となり各診療科が協力体制のもとで安全な手術を実施します。通常の手技で切除困難な場合でも必要に応じて関係各科(一般消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、泌尿器科、婦人科、整形外科、腫瘍内科)を招集し、手術の適応を検討します(Team ICARUS)。また切除「不能」であって条件によっては肝移植も検討します(ただし自費診療となります)。

内分泌内科
内分泌症状の出現した場合、スクリーニングを手際よく実施します。

遺伝外来
遺伝性疾患が疑われる場合には遺伝相談外来も対応します。

病理
診断は病理医と画像診断医が常に協力体制を敷いておりますので安心して治療を受けられます。

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2022年6月28日

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