人工内耳
概要
人工内耳とは?
現在世界で最も普及している人工臓器の1つで、聴覚障害があり補聴器での装用効果が不十分である方に対する唯一の聴覚獲得法です。
適応について
(1)両側とも純音聴力検査にて90dB以上の方、(2)両側とも純音聴力検査にて70dB以上で、補聴器でも会話が難しい方です。身体障害者手帳をお持ちの場合は聴覚障害の2~3級(場合により4級)の方が相当します。
治療
手術を受けるメリットとして、筆談しなくても会話ができるようになります。特に1対1の会話がしやすくなります。音が耳に入ってくることで脳への刺激になりますので、認知症などの予防になることが期待できます。また、会話ができない方ほどうつになると言われていますので、うつなどの予防になります。
手術を受けた患者さんのうち90%くらいの方が、耳鳴りが軽くなる、と言われています。また、災害時の警報を聞き逃したくないという目的で手術を希望される方もいらっしゃいます。
手術方法
耳の後方を切開し、骨(乳突洞)を削ります。削った後は細かい電極本体を耳の後方に、内耳の「きこえのセンサー」である蝸牛(かぎゅう)に埋め込みます。全身麻酔下で行われる手術です。手術が終了し、人工内耳を埋め込んでもすぐに音は聞こえません。術後1か月ほどして落ち着いてから、人工内耳を介して音が聞こえるかテストします。さらに人工内耳を効果的に使用するためにはリハビリテーションが必要です。
リハビリテーション
人工内耳は、その有効性に個人差があり、また手術直後から完全に聞こえるわけではありません。人工内耳を通して初めて聴く音は、個人により様々な表現がなされていますが、本来は機械的に合成された音です。しっかりリハビリテーションを行うことで、多くの場合徐々に言葉が聞き取れるようになってきます。このため、術後のリハビリテーションが大切です。リハビリテーションには、本人の継続的な積極性と、家族の支援が必要です。
人工内耳のしくみ
手術で耳の奥などに埋め込む部分と、音をマイクで拾って耳内に埋め込んだ部分へ送る体外部からなります。体外部は耳掛け式補聴器に似た格好をしています(図1)。最近では、より小型のものもあります。
図1
マイクで集めた音は、スピーチプロセッサーと呼ばれる音声処理部で電気信号に変換されます。その信号が耳介の後ろに埋め込んだ受信装置へ送られます。送信コイルは磁石で頭皮を介して受信装置と接しています。受信装置に伝わった信号は蝸牛の中に埋め込んだ電極から聴神経に伝わり脳へ送られ、音として認識されます(図2)。
図2
人工内耳術後
MRI検査は強い磁気が生じてしまうので、人工内耳が埋め込まれている旨をMRI検査を実施する医療機関でお伝えいただく必要があります。現在ではほとんどの場合、人工内耳部分に包帯を巻いてカバーする事で検査が可能です。人工内耳手術後は、手術や治療に用いる電気メス、神経刺激器などの使用も制限されます。
文責: 耳鼻咽喉科
最終更新日:2023年5月1日