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反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎(reactive arthritis: ReA, arthritis associated with inflammatory bowel diseases)

はんのうせいかんせつえん,えんしょうせいちょうしっかんにともなうかんせつえん

概要

反応性関節炎とは、関節以外の部位の細菌感染症後に起こる関節炎のことです。関節から菌は検出されません。もともと最初の報告者の名前からライター症候群と呼ばれていました。古典的には尿道炎、結膜炎、関節炎の3つの症状を呈します。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)に伴う関節炎は、その名前の通り、炎症性腸疾患をもつ人におこる関節炎です。

それぞれ異なる疾患ですが、1950年代くらいまでは関節リウマチとの区別がはっきりとはついていませんでした。1960年代になり、これらの疾患はリウマトイド因子という検査が陰性であること(関節リウマチでは陽性のことが多い)、仙腸関節炎(臀部にある関節の炎症)を伴いやすいことなど、共通の特徴をもつことから関節リウマチとは別の疾患であると認識され、1970年代に強直性脊椎炎、乾癬性関節炎とともに血清反応陰性脊椎関節症という一つの大きなグループにまとめられました。さらに現在では、必ずしもリウマトイド因子が陰性でないこともあることから、血清反応陰性脊椎関節症とは呼ばず、脊椎関節炎と呼ばれる大きなグループのなかに分類されました(強直性脊椎炎の頁を参照)。

疾患の発症には遺伝素因と環境因子が重要ですが、このグループの疾患では遺伝素因としてヒト白血球抗原(HLA)のB27遺伝子が発症のリスク因子であることが知られています。ここでは反応性関節炎と炎症性腸疾患に伴う関節炎について概説します。

症状

反応性関節炎

基本的に症状は軽微です。関節炎、仙腸関節炎、腱付着部炎を呈しますが、関節炎は主として下肢の関節に多くみられますが、1か所~数か所といったごく少数の関節にしか起こりません。仙腸関節炎では腰部~臀部の痛みを自覚します。腱付着部炎はアキレス腱がかかとの骨に付着する部位あるいは足底腱膜がかかとの骨に付着する部位などに比較的高頻度に起こりやすいです。またその他、尿道炎であれば排尿時痛、結膜炎は結膜充血といった症状がみられることもあります。

一般的にこれらの症状が出現する1~4週間程前に尿路感染症もしくは細菌性の下痢といった細菌感染症を先行して起こしています。この時の細菌の種類によってその後の症状の出現の仕方が若干変わります。反応性関節炎を起こす菌としてはクラミジア・トラコマチス、サルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア、カンピロバクターなどが知られています。

炎症性腸疾患に伴う関節炎

炎症性腸疾患とはクローン病と潰瘍性大腸炎のことで、ともに下痢や血便を主症状とする疾患です。これらの疾患では5~10%程度(多い報告で20%)の人に腸管以外の症状を伴います。関節炎以外には皮疹(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)が有名です。

関節炎は大きく分けると末梢性と体軸性に分けられます。末梢性関節炎は少数関節炎(5関節未満)の場合と多発関節炎の場合とがあります。少数関節炎は膝や足関節に起こりやすく、多発関節炎はそれらに加えて手指関節を含めた上肢の関節に起こりやすいです。関節リウマチと異なり、通常は骨の破壊を来しません。

体軸性は仙腸関節炎が代表的であり、具体的には慢性(3か月以上)で緩徐に発症し、運動で改善し、安静では改善しない、腰痛や臀部痛を特徴とします。重症では背骨が石灰の沈着した靭帯で固まって曲がらなくなり、腰を曲げたり振り返ったりする動作ができなくなるため、注意が必要です。

海外では炎症性腸疾患で体軸性関節炎を合併するもののうち50~75%程度がHLA-B27陽性であると報告されていますが、我が国では海外に比べ一般人口のHLA-B27陽性率が低いと考えられており、国内での割合は分かっておりません。

潰瘍性大腸炎で関節炎が出現する際は同時に腸管病変も悪化することが多いですが、クローン病では腸管病変の病勢とは必ずしも一致しないといわれます。

診断

反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎ともに診断のための基準や、特殊な検査はありません。関節炎発症までの経過を丁寧に聴取し、身体所見を正確にとることが重要です。関節炎の評価のためX線やMRIといった画像検査を参考にすることはあります。HLA検査は診断の参考になりますが、それのみで診断できるものではなく、また保険適用もありません。

治療

反応性関節炎

多くが自然に軽快し、特別な治療を必要としません。通常は非ステロイド性抗炎症薬が使用されます。関節炎が持続する場合、ステロイドが使用されることがあります。サラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジン®EN)が使用されることもあります。

原因は細菌感染症ですが、細菌そのものによる関節炎ではないため、通常抗生物質は効果がありません。

炎症性腸疾患に伴う関節炎

腸管病変に対する治療を強化することが関節炎の治療につながると考えられています。これまで関節炎を標的とした薬剤試験は行われていないため、実際にどの薬がよく効くのかは分かっていません。腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬であるインフリキシマブ(商品名:レミケード®E)、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®E)は潰瘍性大腸炎、クローン病ともに保険適用があり、さらに関節リウマチにも効果があるため、炎症性腸疾患に伴う関節炎にも効果が期待されています。

非ステロイド性抗炎症薬は腸管病変に対して悪影響も懸念されますが、鎮痛薬としてしばしば使用されます。

生活上の注意

どちらの疾患でも関節炎の強い時期は炎症のある部位を可能な限り安静にします。痛い時期に無理に動かすことは関節炎を悪化させ、逆効果です。

炎症性腸疾患に伴う関節炎の場合は腸管病変を悪化させないことがそのまま関節炎の治療になることがあります。詳細は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎クローン病)の項目を参照ください。

慶應義塾大学病院での取り組み

現在リウマチ・膠原病内科には反応性関節炎と炎症性腸疾患に伴う関節炎の方は合わせて20名程度通院されています。特に炎症性腸疾患は消化器内科が精力的に診療・研究を行っているため、消化器内科と協力して診療にあたっています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2024年9月9日

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