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悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis: MRA, rheumatoid vasculitis: RV)

あくせいかんせつりうまち

概要

悪性関節リウマチは、わが国独自の疾患概念です。すでにある関節リウマチに、血管炎をはじめとした関節以外の内臓病変がみられ、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う疾患と定義されます。血管炎に基づく症状が主体であるため欧米ではリウマトイド血管炎とも呼ばれます。厚生労働省では、原因がわかっていない難病とされるいくつかの病気について、国の事業として年1回の調査と、医療費補助を行っており、その調査対象になっている病気のことを「特定疾患」と呼んでいます。悪性関節リウマチもこの特定疾患の一つです。

関節リウマチと同様に原因は不明です。家族内に関節リウマチの人が約12%みられ、体質や遺伝が示唆されます。遺伝因子の一つとして、白血球の組織適合抗原のHLA-DR4は関節リウマチに多くみられますが、悪性関節リウマチにはより多くみられます。ただし、親から子供に必ずしも100%遺伝するということはありません。また、悪性関節リウマチでは、免疫異常が強くみられます。リンパ球の機能異常、リウマトイド因子(特に、IgGリウマトイド因子)の高値、免疫複合体の形成などが血管炎の発症に関与していると考えられています。

発症年齢は60歳代が多く、男女比は1:2で関節リウマチよりもやや高齢、性別では関節リウマチよりも男性の占める割合が多い傾向にあります。関節リウマチ発症から10年以上経過した長い病歴がある場合が多く、5年以内の発症はまれであると報告されています。疾患活動性の制御が不良な状態が継続することもリスクと考えられています。

症状

すでにある関節リウマチによる多発関節痛に加えて、全身の血管炎による38℃以上の発熱、体重減少、眼の充血や痛み(上強膜炎)、皮膚に赤い斑点が出たり(紫斑)、皮膚にしこりができたり(皮下結節)、心臓の血のめぐりが悪くなったり(心筋梗塞)、腸から出血したり(消化管出血)、肺に水がたまったり(胸膜炎)といった症状が見られ、これらは急速に出現し悪化することがあります。また、末梢動脈炎により爪の周りのごく細い血管が詰まったり(点状梗塞)、皮膚に潰瘍ができたり手足の先端部に壊死ができたり、手足がしびれたり(多発性単神経炎)することがあり、患者さんにより様々な症状がでます。

診断

悪性関節リウマチの診断は上記のような症状や、血液、尿、レントゲン検査などの結果を総合的に判断します。この病気はほかの病気がないことを確認することが診断に重要ですので、これらの検査に加えて、CT検査や、血管炎の存在を確認するために病気の起こっている部分から組織を一部採取(生検)して顕微鏡で精密に検査する必要がある場合もあります。また、既にある関節リウマチやその他の病気で使用している治療薬の副作用によっておこる肺線維症や蛋白尿の可能性についても除外が必要です。その他、鑑別すべき疾患として、感染症、続発性アミロイドーシス、ほかの膠原病との重複症候群などがあります。血液検査では炎症反応高値、RF高値、補体低下などがみられます。

悪性関節リウマチの診断基準(1998年厚生省難治性血管炎調査斑)

既存の関節リウマチに血管炎をはじめとする関節外症状を確認し、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合、これを悪性関節リウマチと定義し、以下の基準により診断する。

  1. 臨床症状、検査所見
    • (1) 多発性神経炎
    • (2) 皮膚潰瘍または梗塞または指趾壊疽
    • (3) 皮下結節
    • (4) 上強膜炎または虹彩炎
    • (5) 滲出性胸膜炎または心嚢炎
    • (6) 心筋炎
    • (7) 間質性肺炎または肺線維症
    • (8) 臓器梗塞(腸管、心筋、肺など)
    • (9) RF高値 2回以上の検査でRAHAまたはRAPAが2560倍以上(RF定量では960 IU/mL以上)
    • (10) 血清低補体価(C3,C4またはCH50)または血中免疫複合体(C1q)陽性
  2. 組織所見
    皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により、小ないし中動脈に壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること
  3. 判定基準
    ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準2010年を満たし、上記にあげる項目のなかで臨床症状のうち3項目以上、または臨床症状の1項目以上と組織所見があるものを、悪性関節リウマチと診断する。

病型分類

悪性関節リウマチにおける血管炎は1)中・小動脈の病変がみられる全身性動脈炎型(Bevans型)と、2)血管内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型(Bywaters型)の2つに分けられ、血管炎に基づかない症状として間質性肺炎・肺線維症を有する肺臓炎型に分類されます。また病理組織学的には上記の多発血管炎型のほか、血管壁にリウマトイド結節様の肉芽腫を形成する関節リウマチ型血管炎、および血管内の閉塞性動脈内膜炎をおこす閉塞性動脈内膜炎型に分類されます。

治療

治療はそれまでの関節リウマチ自体の治療の継続と病型や重症度によって治療が追加されます。関節炎に対しては生物学的製剤やJAK阻害薬なども使われます。血管炎に対しては炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイド薬や、免疫を抑制する免疫抑制薬が使われます。臓器の虚血、梗塞に対しては抗凝固薬、皮膚潰瘍、指趾壊疽、末梢神経炎に対しては血流改善目的で血管拡張薬などが使われます。また、血漿交換などの治療が必要な場合もあります。

最近の疫学調査では、悪性関節リウマチの転帰は、軽快21%、不変26%、悪化31%、死亡14%、不明・その他8%です。死亡の原因は呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併、心不全、腎不全などが挙げられます。メトトレキサートや生物学的製剤、JAK阻害薬の普及により、関節リウマチの治療は大幅に改善しており、悪性関節リウマチの発生も減少しています。

生活上の注意

悪性関節リウマチで治療されている患者さんはステロイド薬や免疫抑制薬を服用されている場合が多いため、感染症に弱い状態になることが多いです。したがって、手洗い・うがいなどを心がけ、ストレスのかからない生活を送り、風邪などひかぬようにしましょう。また、薬の飲み忘れや、自己判断で中断することは病気の再発につながる可能性もありますので必ず主治医の指示にしたがってください。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では大学病院という特徴を生かし、眼科、皮膚科、呼吸器内科、腎臓・内分泌・代謝内科、神経内科などの他科と密に連携をとりながら診療しています。悪性関節リウマチの早期診断と早期治療を心掛け、病気の寛解を目指しています。

さらに詳しく知りたい方へ

  1. 難病情報センター外部リンク
    悪性関節リウマチで検索してください。
  2. 慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科外部リンク

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2024年8月9日

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