サルコイドーシス
概要・症状
サルコイドーシスとはなんでしょうか?
日本で発症するサルコイドーシス患者数は人口10万人あたり2~3人です。その原因はまだ分かっていません。体のなんらかの異常反応であることには間違いないのですが、何に対する反応なのか、どういう体質の人がそのような異常反応を起こすのかなど、まだ分からない点がたくさんあります。
分かっているのは、目に見える大きさのものから顕微鏡でやっと見えるようなものまで、とにかく大小様々な「線維のカタマリ」がいろいろなところにできる病気だということです(専門的には類上皮細胞肉芽腫といいます)。これが、肺、肝臓、腎臓、唾液腺、涙腺、皮膚、筋肉、骨、リンパ腺、眼、神経、など全身のあらゆる臓器にみえてきます。ただ、この「線維のかたまり」は「がん」とは全く違って悪性疾患ではないのでご安心ください。遺伝性でも感染症でもないので人にうつることもありません。
図1.サルコイドーシスによる「線維のカタマリ」(点線部)
病気の起こる頻度の高い臓器は、肺および胸部のリンパ腺(80%)、眼(50%)、皮膚(20%)などです。どこに病気がでるかは患者さんによって異なり、決まったパターンはありません。
心臓は関係あるのですか?
これまでサルコイドーシスは肺、眼、皮膚に多くみられる病気だというように理解されてきましたが、最近の統計で20人に1人ほど心臓にも影響がみられることが分かってきました。
心臓に「線維のカタマリ」ができた場合、軽症では軽い心電図異常が表れる程度です。しかし、まれに実際に脈が飛んだり急に遅くなったり、不整脈がでることがあります。そうした場合は注意が必要です。重症になると心臓の機能が落ちたり、突然心臓麻痺を起こすことがあります。実際、サルコイドーシスによる死亡の半数以上は心臓に関係するものです。
診断
心臓への影響を調べるために、これまで広く組織検査や核医学検査が行われてきました。組織検査というのは、カテーテルを使って直接心臓の組織の一部を取ってきて顕微鏡で調べます(心筋生検といいます)。また、サルコイドーシス病変部位を調べるために、ガリウムシンチという放射性同位元素を使った検査、心臓MRI検査、心臓PET検査を行うことがあります。
図2.心臓生検の方法
くびの血管から長くやわらかい鉗子を挿入して心臓から組織の一部を直接取る。
心臓MRI検査とは?
サルコイドーシスの状態をMRIという磁力を使った画像検査で調べる方法がここ5年ほどの間に発展してきました。これはカテーテル検査のように入院を必要とせず、針やメスも使いません。また放射線とも無縁です。私たちは、このMRIによって心筋の中の様子を詳細に観察し、心電図や超音波検査で検出できなかった小さな「線維のカタマリ」をみつけ出し、治療に活かしていこうと考えています。
図3.MRIによって描出されたサルコイドーシスの「カタマリ」(点線部)
PET検査とは?
さらに、ここ数年でPETという新しい画像検査の方法が始まりました。PET検査ではこれまでの検査ではみつけづらかった、初期の小さな病変も感度よくみつけられることが知られています。ただし前日からの絶食が必要となるなどの注意点もありますので、検査を受ける際は主治医などによく説明を受けてください。
図4.PET検査で検出された心臓サルコイドーシス
治療
副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤が広く用いられています。元々ステロイドは、副腎といって腎臓の上にある親指の先ほどの小さな臓器でつくられる、生命・活力に必要不可欠なホルモンです。このホルモンは新陳代謝を活発にするだけでなく、炎症やアレルギーなどの異常な免疫反応を強く抑えることも分かっています。しかし、一方では、長期間服用すると様々な副作用が生じてきます。太る、顔が丸く腫れる、糖尿病がでる、コレステロールが上がる、骨が弱くなる、ケガが治りにくくなる、などです。「ステロイドは怖い薬だ」というイメージがあるのはこのせいです。
慶應義塾大学病院での取り組み
サルコイドーシスは、いろいろなタイプの病像があり、心臓に対してもどのように治療するかまだ意見が分れる部分が多いというのが実情です。私たちはMRIやPET等の最新の画像検査を使って治療効果を判定し、適切な治療期間、薬剤量を用いるように努力しております。例えば、治療前後や経過中にPETやMRIを撮影し、治療薬の反応をみながら治療薬の調整や休止、様子をみるというプランをとっています。もしお困りのことがありましたら、気軽に循環器内科外来にいらしてください。
さらに詳しく知りたい方へ
文責:
循環器内科
最終更新日:2024年4月30日