ホルト・オーラム(Holt-Oram)症候群
概要
心臓の奇形と手の異常が合併する病気です(心臓-手 症候群とも呼ばれます)。1960年にHolt(ホルト)とOram(オーラム)が最初に報告した病気なので、ホルト・オーラム症候群と呼ばれています。出生10万人に1人とまれな病気ですが、家族内で遺伝する心臓の病気として知られているのは、同時に出現する手の異常が目に留まりやすいからです。
先天性の心臓の奇形と上肢や指の異常が認められると、この病気が疑われます。症状に家族内での発生があれば、さらに強くホルト・オーラム症候群が疑われます。
1997年に病気の原因遺伝子が発見されました。
症状
心臓の症状
ホルト・オーラム症候群の95 %に先天性の心臓の奇形を合併します。心臓の左右を分ける壁の欠損を示す奇形(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症)が最も多く認められます。心電図の異常のみが認められる場合もあり、同じ家族の中でも症状は多様です。
手の症状
手の異常としては、親指(拇指)の異常、上肢の低形成などの親指に近い方(体の内側)の骨である橈骨(とうこつ)系の骨の異常が認められます。多くは両側に症状を認めますが、左側の方が奇形の症状が強いことがあります。狭い肩幅も特徴的な身体所見です。下肢の異常や精神遅滞は認められません。心臓と同様に手や上肢の異常は様々な症状があり、同じ家族の内でも一定しません。サリドマイド児に心臓の左右を分ける壁である心臓中隔欠損などが合併すると、この病気に似た所見になります。
原因
Tbx5という遺伝子異常で起こる病気であることは分かっていますが、なぜ多様な症状になるのかは、いまだに解明できていません。
診断
上肢と胸部のレントゲン検査が診断のために重要です。Tbx5遺伝子を含めた遺伝子の解析(血液検査)を行います。心電図、心臓エコー検査、心臓カテーテル検査を行って、外科手術などの治療の方針を決定していきます。
治療
患者さんの病状に合わせた、心臓の外科手術が必要になることがあります。たとえホルトオーラム症候群の診断を受けても、多くの患者さんは、心臓の中隔欠損を含めた外科治療の進歩により、一般人と変わらない生活を送ることができるようになってきています。外科手術に加えて遺伝カウンセリングなどを通じて、正確な情報の提供と経験的再発率を示して患者さんの家族を励ましているのが診療の現状です。偏見を恐れて手の異常は隠されてしまうことが多いので、プライバシーの保護を前提に患者さんとの良好な関係を築き、十分な相互理解のうえで治療やカウンセリングを行わせていただきます。
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文責:
循環器内科
最終更新日:2019年8月29日