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川崎病

かわさきびょう

概要

本稿では、成人期に問題となる川崎病の後遺症としての「心臓血管病変」を中心に解説します。

川崎病という病名は、川崎富作医師が1967年に初めて症例を報告したことに由来します。別名、小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群ともいわれます。主に4歳以下の乳幼児に多く発生する原因不明の疾患で、以下の6つの主要症状のうち、5つ以上の症状を伴うものを川崎病と診断します。

主要症状

  1. 5日以上続く発熱
  2. 両側眼球結膜の充血
  3. 口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
  4. 不定形発疹
  5. 手足の硬性浮腫、掌蹠(しょうせき)ないしは指趾先端の紅斑、指先からの膜様落屑(まくようらくせつ)
  6. 急性期における非化膿性頚部リンパ節腫脹

ただし、上記6つの症状のうち4つしか認められなくても、経過中に心臓超音波もしくは冠動脈造影にて冠動脈瘤が確認され、ほかの疾患が除外されれば川崎病と診断します。

1967年以降、2006年までの患者数は約20万人、そのうち、成人に達した既往者は2006年現在9万人といわれています。川崎病患者の致命率は1990年代より年々低下しており、現在では約0.01%といわれています。その背景として、免疫グロブリン療法の普及を中心とした治療法の進歩が考えられています。

最初の報告から約40年が経過し、川崎病罹患患者の半数近くが成人に達しており、致命率の低い現在にあって今後最も問題となるのが、川崎病の後遺症としての心臓血管病変、具体的には冠動脈瘤、冠動脈の局所性狭窄などの冠動脈障害です。冠動脈瘤は、川崎病を発症してから30日前後に心臓超音波を施行し、瘤の有無を確認します。30日の時点で瘤が認められても、それ以後に縮小する症例も多く、瘤が消失する例も少なくありません。一方、瘤の閉塞や局所の狭窄に進展する例もあり、その場合、心筋梗塞を起こし、心筋梗塞後の心不全や不整脈を合併することもあります。

概要

一般的に中等度以上の大きさの瘤や進行性の局所性狭窄は、突然死や重篤な心筋梗塞のリスクがあり、変化する冠動脈の状態を把握するために頻回の冠動脈造影や冠動脈CT、MRIによる冠動脈の経過観察が生涯必要であるとされています。

川崎病の死因のほとんどが虚血性心疾患であり、突然死が多いため、剖検で急性心筋梗塞の組織所見が出現しているものは少ないといわれています。

診断

川崎病の後遺症としての冠動脈障害の診断

虚血性心疾患の診断法と同様、運動負荷心電図検査(ダブルマスター、トレッドミル)、運動負荷あるいは薬物負荷による心筋血流シンチグラフィ、ホルター心電図、冠動脈CT検査などにより診断します。前述の検査は外来で実施可能ですが、最終診断のためには入院していただいた上で、冠動脈造影検査を受けていただきます。川崎病の特徴として発症時期(小児期)より経胸壁心臓超音波検査にて冠動脈の形態につき経時的に観察されることが多い点が挙げられますが、成人に達してから冠動脈の評価を経胸壁心臓超音波検査で行うことは困難である場合が多く、前述のほかの検査での経過観察が有用とされています。また、川崎病では冠動脈CTを除く上述の診断法では心筋虚血の検出率が低く、心筋虚血の初発症状として突然死という場合もあり、中等度以上の瘤を形成し、心臓CTで描出不良の症例では、経過観察を目的に冠動脈造影を受けることが望ましいと考えられています。

治療

川崎病の後遺症としての冠動脈障害の治療法には以下のものがあります。

(1) 薬物療法

  • 抗血小板薬
    具体的薬品名としては、バイアスピリン、パナルジン、プラビックスなどがあります。冠動脈障害を有する症例には継続内服をおすすめします。
  • 抗凝固薬
    具体的薬品名としてはワーファリンがあります。中等から巨大冠動脈瘤形成例などが適応となります。通常、巨大冠動脈瘤(径8mm以上)症例における血栓性閉塞の予防として使用され、抗血小板薬であるバイアスピリンと併用されることが多いです。
  • カルシウム拮抗薬
    冠攣縮(かんれんしゅく)(冠動脈が痙攣して縮む事)の予防に有効です。川崎病の心筋梗塞の発症に冠攣縮が関与している症例もあり、使用されます。
  • ベータ遮断薬
    心筋の酸素消費量を低下させて効果を発揮します。
  • 硝酸薬
    血管拡張効果により抗狭心効果をもたらします。

上記の内服薬は、病状に応じて組み合わせて処方されることが多いです。

(2) 非薬物療法

  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
    胸痛などの狭心症状を有し、冠動脈造影上高度狭窄(75%以上)を認める場合が適応となります。ただし、冠動脈バイパス術の適応となる重症冠動脈病変(例えば、心機能低下を伴う3枝病変や左冠動脈主幹部に病変を認める場合)は除きます。経皮的冠動脈形成術を行う場合、通常ステント留置が原則となります。ただし、通常の動脈硬化による高度狭窄と異なり、冠動脈の石灰化(カルシウム)を伴う症例も多く、その場合はステント留置前にロータブレーターと呼ばれる器具で高度狭窄の原因となっているカルシウムを破砕することが必要となります。ロータブレーターは、認定施設においてのみ使用が許可されている器具で、慶應義塾大学病院も認定施設の1つです。
  • 冠動脈バイパス術(CABG)
    経皮的冠動脈形成術施行が比較的難しいとされている心機能低下を伴う3枝病変や、左冠動脈主幹部に高度狭窄を認める症例については、冠動脈バイパス術が治療法の第一選択となります。使用されるグラフトは、内胸動脈ほかの動脈グラフトが中心となります。また、現在では人工心肺装置を用いないバイパス手術(off-pump CABG)が主流となっており、手術も体への負担が少なくなっています。

生活上の注意

冠動脈障害を有する川崎病患者は、動脈硬化の進行がより早く進む可能性があり、一般的に知られている動脈硬化を促進する因子については、より厳密に管理する必要があるとされています。すなわち、高血圧、糖尿病、脂質異常症に対する食事、運動療法および薬物療法による管理、禁煙などが必要です。

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 冠動脈障害の最終確定診断法である冠動脈造影につきましては、当院では24時間365日体制で対応しております。
  • ロータブレーターを使用した経皮的冠動脈インターベンションを当院では積極的に行っております。

さらに詳しく知りたい方へ

  1. 日本循環器学会 循環器病ガイドラインシリーズ
    川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン(最新版)を閲覧できます。
  2. 日本小児循環器学会
    川崎病急性期治療のガイドラインを閲覧できます。

文責: 循環器内科外部リンク
最終更新日:2019年3月5日

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