褥瘡や皮膚潰瘍の形成外科治療
褥瘡
褥瘡は、「床ずれ」ともよばれています。長期間寝たきりになっている患者さんの臀部や足にできることが多く、また下半身が麻痺して、車椅子で生活している方の臀部などにも起こることがあります。皮膚や脂肪、筋肉などの組織は、体内を流れる血液により、酸素と栄養を供給されて生きています。この血流が途絶してしまうと、一定時間経過後に組織が壊死します。このように圧迫のために局所に栄養がいきわたらずに皮膚や皮下組織が壊死に陥ってしまったために褥瘡は起こります。
圧迫が主な原因なので、さまざまな徐圧器具を用いて、徐圧をすることが主な予防法になります。また、座っている時にずれてしまうと、褥瘡の増悪(症状の悪化)原因にもなります。
褥瘡は深さによって治るまでの期間が大きく異なります。皮膚の一部である真皮層までの浅い褥瘡は、除圧と適切な治療により数日から数週間で治りますが、皮下脂肪より深い褥瘡はより長期の治療を必要とし、患者さんによっては数年経っても治らない場合があります。
【治療】
手術を行わないで治す保存的治療と、手術により治す外科的治療があります。褥瘡の深さにより様々な方法がとられています。 皮下組織よりも深い層に達した褥瘡の場合は、壊死組織が細菌増殖の温床になり、局所のみならず全身状態にも悪影響を及ぼすことがありますので、時期を見て壊死組織を除去する処置(デブリードマン)をする必要があります。壊死組織がなくなった後は、傷を治す肉芽組織の形成を促し、その後周りからの皮膚の再生を促す処置を行います。また、全身状態や局所の状態が良い場合は周囲の皮膚や筋肉をずらしてくる手術方法がとられることもあります。
皮膚潰瘍
身体表面の皮膚がなくなり皮下組織が露出している状態を皮膚潰瘍と呼びます。その多くは痛みを伴い、出血や感染の原因となります。皮膚潰瘍の原因は様々ですが、動脈硬化などの血管病変、バージャー病、膠原病、静脈うっ滞などが挙げられます。皮膚潰瘍周囲の局所の治療のみでは、傷を治すことが困難なことが多いので、動脈の流れを良くしたり、静脈のうっ滞をなくすなど、原疾患の治療を行いつつ、局所の治療を行うことが多いです。
また、がんの治療などで放射線照射を受けた方が10年程度経過した後に、皮膚潰瘍を作ることがあります(放射線潰瘍といいます)。これは放射線によって組織の血管が潰れてくるために起きる現象で、表から見ると小さな傷でも、深くまで組織が影響を受けていることが多々あります。この場合は、十分血行のあるところまで切除した後に、血行の豊富な組織で充填する手術を取ることが多いです。
慶應義塾大学病院での取り組み
医師、看護師、栄養士からなる褥瘡対策チームを中心として、さまざまな分野から総合的に治療を行っています。
文責:
形成外科
最終更新日:2017年2月24日