尿路結石
概要
尿路結石はその位置により、腎結石・尿管結石・膀胱結石などと呼ばれています。日本における年間有病率は人口10万対121.3人であり、また生涯罹患率は男性9.4%、女性4.1%、すなわち日本人男性の10.6人に1人、女性の24.4人に1人が一生の間に1度はかかってしまう病気なのです。
結石の約80%はカルシウム結石で、残りは尿酸、シスチン、ストロバイト等、様々な物質で構成されています。ストロバイト結石はマグネシウム、アンモニウム、リン酸の混合物で、感染のある場合にのみ尿中で形成されるため、感染結石とも呼ばれます。尿路結石の原因は非常に複雑で、尿路の通過障害、感染、寝たきりまたは骨折、食事(動物性蛋白質や脂肪など)、内分泌・代謝異常など様々な要因が考えられています。
症状
結石のサイズは、非常に小さく肉眼では見えないものから、腎盂全体をふさぐサンゴ状結石と呼ばれるものまで様々です。結石があっても無症状の場合もあり、特にごく小さいものはあまり症状が出現しません。しかし腎盂や尿管など尿の流れるスペースが結石で塞がれると、背中や脇腹、下腹部に痛みが生じます。痛みは2~3時間続くことが多く、その間は数分おきに痛みが強くなるというように、痛みの強弱に波があるのが特徴です。尿の流れが悪くなることで腎臓からの尿の出口である腎盂・腎杯が腫れて「水腎症」を呈することがあり、腎機能を悪化させる場合があります。また結石による刺激に伴って血尿や頻尿の症状を自覚される場合もあります。
診断
腹部レントゲン検査が尿路結石の診断に有用で、補助的な検査として尿検査や腹部超音波検査を施行します。構成成分によってはレントゲンに写らない結石もあります。その際はCT検査や静脈性尿路造影など更なる検査で診断が可能となります。静脈性尿路造影では、造影剤が腎臓を経由し排泄されるに伴い、結石の輪郭が確認できます。
治療
7mm未満の結石は、飲水、運動などの日常生活指導のみで自然排石が期待できるので、無治療で経過観察します。排石促進を目的とする薬剤を投与することもあります。ただし繰り返す痛みの発作、尿路感染の合併、上部尿路閉塞で腎機能低下が懸念される場合は積極的な治療を行います。
結石が7mm以上の場合には、結石を体外に出すため積極的な治療を行います。積極的治療法として下記の治療から選択します。どの治療も入院が必要となります。
ESWL:体外衝撃波結石破砕術(たいがいしょうげきはけっせきはさいじゅつ)
体外で発生した衝撃波を体内の結石に収束させ破砕します。切開や麻酔の必要がなく、鎮痛剤の使用のみで出来るため現在尿路結石治療の第一選択となっています。当院ではDornier社製のDeltaIIモデルを導入しており良好な治療成績を収めています。ほとんどの結石はこのESWL単独で治療可能ですが珊瑚状結石や大きい結石の場合はPNL(経尿道的尿管砕石術、後述)を併用することがあります。また下部尿管結石では骨盤の影響で上部尿管と比較し衝撃波を当てにくく、また外尿道口からの距離も近いことからTUL(経尿道的尿管砕石術、後述)を施行した方がよいこともあります。
図1
TUL:経尿道的尿管砕石術(けいにょうどうてきにょうかんさいせきじゅつ)
細い内視鏡を、尿道・膀胱を経由し尿管に挿入し、レーザーなどによって結石を砕きます。当院では従来の硬性尿管鏡だけでなく、柔らかい軟性尿管鏡を使用したf-TULも行っています。軟性尿管鏡の導入により、硬性尿管鏡で到達困難であった腎結石の治療も可能となりました。全身麻酔または下半身麻酔が必要となります。
PNL:経皮的腎砕石術(けいひてきじんさいせきじゅつ)
背中から皮膚を経由して直接腎臓に約1cmの穴をあけて筒を挿入し、内視鏡を挿入できるようにした上でレーザーなどで結石を砕きます。全身麻酔が必要となります。腎結結石のうちESWLで砕けないような固い結石や大きい結石が対象になります。
生活上の注意
排石された結石の成分分析を行い、結石成分に従って食事指導や薬物療法を行います。また結石成分に関わらず、水分を多く摂取することが再発予防の基本です。1日2リットル以上が水分摂取の目安ですが、心臓のご病気等をお持ちの方は注意が必要です。水分の補給源としてはとくに指定はしませんが、尿中に結石形成の促進物質(カルシウム、シュウ酸、尿酸など)を過剰に排泄させる清涼飲料水、甘味飲料水、コーヒー、紅茶、アルコールの過剰摂取は避けてください。現実的には水やシュウ酸含有量の少ない茶類(麦茶、ほうじ茶など)が適していると思われます。
文責:
泌尿器科
最終更新日:2017年2月28日