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僧帽弁狭窄症

そうぼうべんきょうさくしょう

概要

僧帽弁とは、心臓にある左心房と左心室の間に存在する弁です。開口時には肺から送られた血液を左心房を通して左心室へ導き、また、閉鎖時には左心室から左心房へ血液が逆流するのを防ぐ役割を果たしています。この弁の開口が十分でなくなったのが僧帽弁狭窄症です。正常であれば、僧帽弁は面積として4~6 cm2開きますが、僧帽弁狭窄症ではこれが小さくなります。1 cm2以下にまで小さくなった重症の方は手術が必要です。

弁口面積が2 cm2の軽症の方でも、脈が速くなると肺から血液を送り出せなくなり、肺が水浸しとなる肺うっ血や肺水腫という重篤な心不全を引き起こします。

ほとんどの場合、小児期に細菌がのどに感染して起こるリウマチ熱が原因となり、中年以降に僧帽弁狭窄症を引き起こします。リウマチ熱から20年以上経過すると、徐々に僧帽弁狭窄症が進行して症状が出現します。最近では、抗生剤の使用などによって、僧帽弁狭窄症の頻度は少なくなりつつあります。その他の原因として、まれですが慢性腎不全による弁輪石灰化に伴う弁狭窄や先天性僧帽弁狭窄症などがあります。

概要

症状

初めは運動した時のみに息が切れます。徐々に坂道や階段を昇るときにも感じるようになり、さらには平らな道を歩いたり、着替えなどの軽作業の時も呼吸が苦しくなります。左心房が拡大して血液が滞ると、血栓を形成しやすい状況となります。この血栓により、脳の血管が詰まる脳梗塞など重大な合併症を起こすことがあります。

診断

  1. 心電図検査: 心臓への負荷の程度や心房細動の有無を確認します。
  2. 胸部レントゲン検査: 心拡大の程度や肺うっ血や肺水腫の有無を確認します。
  3. 経食道心エコー検査心エコー検査: 僧帽弁狭窄症の診断や治療方針を決める上で不可欠な検査で、弁の形状(石灰化、癒着や肥厚の程度)や弁口面積、左心房内の血栓の有無をみます。また定期的に行うことで、経時的な評価が可能となります。
  4. 心臓カテーテル検査: 心臓までカテーテルという細い管を入れて、心臓内の状態をみる検査です。入院の上で行う身体に負担の大きい検査なので、手術を行う予定の方に検討される検査です。

治療

  1. 内科的治療法

    息切れや呼吸困難がある方や、心房細動を持っている方には、薬による治療が必要です。脈を遅くする薬や、血液を固まりにくくして血栓を予防するワルファリンという薬を用います。
    しかし、内科的治療には限界があります。それゆえ外科的治療の適切なタイミングを外来で判断していくのが重要です。

  2. カテーテル治療 (経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術、PTMC: Percutaneous Transvenous Mitral Commissurotomy)

    管の先に風船をつけた特殊なカテーテル(井上バルーン®)を足の付け根より挿入します。そのカテーテルを僧帽弁の位置まで入れて風船を膨らませることにより、弁の癒着を裂いて弁口面積を拡大する治療法です。僧帽弁の形によってはこの治療が適さない患者さんがいます。また、治療前には経食道心エコー検査で僧帽弁を詳細に観察する必要があります。

  3. 外科手術

    胸を開いて僧帽弁を人工の弁に取り換える手術です(図1、2)。患者さんの年齢や状態によって、ブタの弁やウシの膜を使用した生体弁や炭素樹脂でできた機械弁を使用します。手術が必要な際には当院の心臓血管外科へ紹介・相談し、協力して治療にあたっています。人工弁については当院心臓血管外科Webサイトをご参照ください。

図1.僧帽弁狭窄症(手術前)
図2.人工弁置換術後(機械弁)
*クリックすると写真画像をご覧いただけます。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では、専門的な診断・治療を通じ、高度な医療を提供しています。
また、循環器内科、心臓血管外科ともに弁膜症の専門家が揃っており、精力的に診療を行っています。個々の患者さんに最良の医療を提供できるよう心がけております。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 循環器内科外部リンク
最終更新日:2019年3月5日

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