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歯周病

ししゅうびょう

概要

歯周組織とは、歯肉(歯ぐき)、セメント質(歯の根の表面)、歯根膜(歯と骨を結ぶ薄い線維状の組織)、歯槽骨(歯を支える骨)の4つを指します。健康な歯周組織とは、この4つの組織に感染がない状態です。歯の表面や歯と歯肉の溝(歯肉溝)に歯垢(プラーク)がついていなければ歯肉は健康に保たれ、きれいなピンク色をしていて、歯磨き(ブラッシング)をしても出血しません。
しかし起床後や就寝前、あるいは食事の後にブラッシングを行わないと、歯や歯肉溝にプラークが付着し、その結果、歯肉に炎症が起こります。この状態を歯肉炎と言います。炎症が起こると歯肉は腫れ、赤くなり、血が出やすくなります。この時点で再び適切なブラッシングを行えば歯肉は健康な状態に戻ります。
しかし適切なブラッシングが行われない状態で長期間経過すると、歯肉に起こった感染・炎症が他の歯周組織に波及します。感染・炎症が歯肉にとどまらず、他の歯周組織まで及んだ状態が歯周病です(図1)。歯周病に罹患すると歯を支えている歯槽骨が吸収していき、歯の動揺が大きくなっていくことで、最終的には抜けてしまいます。歯周病が原因による喪失歯が増えると、重要な口腔機能である咀嚼・発音・嚥下・呼吸に悪影響を及ぼします。

図1

図1.正常な歯周組織と歯周病の状態

歯周病の原因

歯周病の原因はプラーク(歯垢、バイオフィルム)です。この細菌の塊であるプラークが長い時間歯や歯肉溝に付着していると、う蝕や歯周病を引き起こします。またプラークが長い時間付着しているところに、唾液などに含まれているカルシウム成分やリン成分が沈着した結果、固まったものが歯石です。このように歯周病の主な原因はプラークですが、そのプラークによって引き起こされる炎症は、以下のような因子が重なることによってさらに歯を支えている骨の吸収が進行します。

  1. 歯に加わる異常な力:咬む力が全部の歯にバランスよく分散せず、一部の歯の負担が大きくなっている場合は歯周病が悪化しやすいです。また歯ぎしりやくいしばり、舌で歯を押したり、口で呼吸をする癖のある方も、歯周病が悪化しやすくなります。
  2. 歯並び:歯並びが悪いとブラッシングがしづらくなり、結果としてプラークが常に付着しやすい状況を引き起こします。
  3. 全身疾患との関連:血液の病気(白血病など)、自己免疫疾患、糖尿病などは歯周組織の免疫力を低下させるため歯周病が悪化しやすくなるという報告もあります。また歯周病による化学物質が、血管を介して全身に散らばり、様々な全身疾患と関連するという報告も多数あります(図2)。
  4. 薬剤:てんかんの薬(ダイランチンなど)や降圧剤(アダラートなど)、免疫抑制剤を服用されている方は、歯肉が増殖しやすいことがあります。
  5. 喫煙:タバコに含まれているニコチンやタールのような化学物質は、歯肉の血液の循環障害を起こます。また歯周病があるにも関わらず、血流が悪いため逆に歯肉の赤みや腫れといった炎症症状をわかりにくくさせてしまうため、気がついたときには重症になっている場合が多くみられます。
図 2

図 2 .歯周病と全身疾患との関連
中等度から重度の歯周病罹患部位における歯周ポケットの総面積は、おおよそ55~72cm2とされている。これは手のひらの面積と同程度である。この面積から常にバイオフィルムや炎症による化学物質が血流を介して全身に散らばり、様々な全身疾患と関連するという報告が多数ある。

症状

代表的な症状は以下のようなものです。

  1. 歯肉の腫れ
  2. 歯肉からの出血・排膿
  3. 歯の動揺
  4. 咀嚼時の痛みや違和感
  5. 歯肉の掻痒感・違和感
  6. 知覚過敏           など

診断

診療の最初の段階に行う臨床検査、エックス線写真検査、細菌検査などを総合して診断します。歯周病のほとんどが慢性歯周炎と呼ばれる40~60代で発症する慢性的な経過をたどるタイプの歯周炎です。特殊なタイプの歯周炎としては、比較的若い年代で発症し急速に悪化する侵襲性歯周炎や、薬剤の服用により症状が増悪する歯肉増殖症、妊婦でホルモンのバランスが崩れた時に起こりやすい妊娠性歯肉炎などがあります。

治療

歯周病の治療の基本は、口腔内のプラークや歯石(バイオフィルム)を徹底的に除去する事です。歯周炎を引き起こす原因は口の中に存在する"歯周病原細菌"と呼ばれる細菌です。それらの細菌はプラークとして歯や歯肉に付着して発育するので、歯周病の予防だけではなく、治療をしていく上でもプラークコントロールは最も重要です。そのため歯周病の治療を始めるにあたっては患者さんに徹底したブラッシングをしていただく必要があります。
患者さん自身によるプラークコントロールが良好になった段階で、それまでのプラークコントロールに加えて歯科医師または歯科衛生士による歯周治療に進みます。これらの処置は歯周基本治療を呼ばれ、スケーリングやルートプレーニングという歯や歯周組織に付着しているプラークや歯石を除去する治療です。歯石は歯肉より上の見えている部分の歯に付着するものもあれば、"歯周ポケット"と呼ばれる歯肉溝が深くなってしまった病的な"隙間=ポケット"の中に付着してしまうものもあり、これらはブラッシングだけで除去することができません。この治療は痛みを伴うことがあるため、必要であれば局所麻酔をして行います。
歯周病治療は歯周ポケットをできるだけ浅くして、歯周病原細菌が定着・増殖しにくい環境を構築し、適切なプラークコントロールを行うことで歯周炎を再発しにくい状態にする事です。歯周炎の程度が比較的軽症であれば、プラークコントロールをしっかり行い、歯周基本治療もあわせて行うことで十分改善が見込めます。しかし歯周病が重度で、深い歯周ポケットや歯槽骨の吸収が認められる状態になると、歯周基本治療に加えて歯周外科手術が必要になることがあります。歯周外科手術は主に歯肉を切開して剥離し、歯根や歯槽骨が直接みえる状態にして、感染している部分を外科的に徹底的に除去する処置です。入院などの必要はなく、歯科・口腔外科の外来で行える手術です。もちろん全身状態によっては手術が行えない患者さんもいらっしゃるので、お身体の状態や歯周病の状態など様々な要素を加味した上で手術をした方が良いと思われる方におすすめしています。

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 歯科口腔外科外来では、毎週月曜日の午後、歯周病外来を行い、歯周病の患者さんを重点的に治療しています。
  • 歯周病専門医・指導医のもとで、歯周組織再生療法にも積極的に取り組んでいます。
  • 歯周組織再生療法にはエムドゲイン®や骨補填材であるバイオオスやバイオガイドを使った方法、そして歯周組織再生医薬品であるリグロス®を用いて失われた歯周組織の再生を促す方法(歯周組織再生療法)があります。

文責: 歯科・口腔外科外部リンク
最終更新日:2018年1月12日

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