先天性食道閉鎖症
概要
先天性食道閉鎖症は、食道が盲端に終わり閉鎖してしまう疾患です(一部開通している病型もあります)。胎生(たいせい)4~7週頃の気管と食道の分離過程の異常によって発症するという説が有力です。発生頻度は3000~5000例に1例です。気管と食道の間の瘻孔(ろうこう)(気管食道瘻)の位置によって5つの病型に分類されています。いずれも手術が必要ですが、病型によって手術の時期や内容が異なります。先天性食道閉鎖症の患者さんでは、先天性心疾患や消化器疾患などの先天異常が50~65%程度に生じます。
先天性食道閉鎖症のタイプ
<A型>
発生頻度:5~10%
気管と食道の間の交通(瘻:ろう)を持っておらず、上下の食道の距離が長いため、新生児期には胃にチューブを入れて胃瘻を作り、その胃瘻を通してミルクを注入します。成長を待って根治術を行うことが多いです。口の中の唾液の吸引を行い、誤嚥の予防に努めます。上下食道間の距離が長い場合が多いため、上下の食道をつなぐ際には代用食道(胃、小腸など)を使用する場合があります。
<B型>
発生頻度: まれです(低出生体重児や心・大血管奇形、染色体異常の合併が多い)。
唾液が気管内に流入し、早期から呼吸状態が悪くなるため、胃瘻の造設とともに上の食道と気管との間を切離する必要があります。またこの場合も距離が長い例が多いので、体重の増加を待って代用食道を使用して食道を再建することがあります。
<C型>
発生頻度:85~90%
まずは胃瘻を造設します。上下食道間の距離が長い場合は、体重増加を待って、また距離が短い場合は生まれてすぐに根治手術(気管食道瘻切除・食道端々吻合)を行うこともあります。
<D型>
発生頻度:1%前後と非常にまれです。
B型に準じた治療を行います。
<E型>
発生頻度:5%
気管食道瘻孔のみ存在している病型で、生後すぐに発見されることは珍しいタイプです。右頸部(鎖骨の上)から到達して気管と食道の間の交通(瘻孔)を切離します。再発することが多いです。
症状
出生前は羊水過多(A型、B型)を呈します。出生後は泡沫状の嘔吐をします。また、唾液や胃液が肺に流れ込んで肺炎を起こすこともあります。
診断
約半数の症例が出生前に診断されます。出生後は鼻もしくは口からカテーテルを挿入し、カテーテルが食道盲端部で反転したレントゲン像をとらえます(coil-up像)。また、レントゲンで胃に空気があるかどうかで前述の病型を絞ることができます。
治療
病型や合併している異常により治療が異なりますが、一期的に手術を行う場合と、まずは胃瘻を造り、胃から気管への逆流を減らすとともに、胃瘻から栄養して体重を増加させた後に食道の上下をつなぐ手術をする場合があります。
最も多いC型の手術を示します。まず気管と食道の交通(瘻孔)を切り離し気管側を縫い合わせます。食道の端はこれが下の食道の口となりますので、これと上の食道を縫い合わせます。
文責:
小児外科
最終更新日:2020年10月21日