病気を知る

身体症状症

概要

どのような病気なのでしょうか?

身体症状症は、身体の症状が長期間持続し、それらの症状に対して過度な思考、感情、または行動がみられ、苦痛や日常生活への支障を伴う状態と定義されます。

身体症状症は、身体表現性障害という病気の定義が見直され、再整理されたものです。身体表現性障害では、身体症状の原因が医学的に説明できないことが重要な特徴とされていましたが、「医学的に説明できない」と判断することは容易ではないことなどから、身体症状症では、身体症状の原因が医学的に説明できるものでも良いことになりました。しかし、実際には、身体診察や医学的検査を行っても原因がはっきりしない身体症状がある時に身体症状症の診断がつくことが多いです。重要なのは、患者さんは実際に症状を自覚しており、詐病や仮病とは区別されるという点です。客観的な異常があり、診断のついている病気による身体症状であっても、その症状に対して過度な思考、感情、または行動がみられる場合には、身体症状症と診断されることがあります。

症状

身体症状症における身体症状には、あらゆる症状が含まれます。具体的には、痛み、しびれ、吐き気、めまいなど、客観的には確認しにくく、本人にしか分からない症状であることが多いです。症状は6か月以上持続することが典型的です。また、症状が移り変わったり、複数見られたりすることもあります。

身体症状に対する過度な思考、感情、行動の例として、以下のようなものが挙げられます。

思考
  • 身体症状を重大な病気の兆候だと考えている
  • 身体症状について、深刻なものであると確信している
  • 医師や他者が考えるよりも、身体症状を深刻なものと考えている
感情
  • 自分の健康について過剰に心配している
  • 自分の身体症状におびえている
  • 身体症状が良くならないのではないかと心配している
行動
  • 健康への心配のために日常生活に支障を来している
  • 多くの時間、身体の不調に気を取られている
  • 健康への心配でエネルギーを消耗している

思考、感情、行動の3つの側面のうち、1つが当てはまる場合は軽度、2つ以上が当てはまる場合は中等度、2つ以上が当てはまり、複数の身体症状が見られるか、非常に重い身体症状が見られる場合は重度と診断されます。

診断

原因は何でしょう?

身体症状症は、原因がはっきりしない身体症状が生じること、身体症状に対する過度な思考、感情、行動が生じることの2段階で成ることが多く、それぞれの原因を説明します。

原因がはっきりしない身体症状が生じること

心身への負荷やストレスがかかり続けたり、葛藤やネガティブな感情が抑えこまれたりすることで、原因がはっきりしない身体症状が生じることがあるということが、古くから観察、報告されています。

一方、科学的なメカニズムははっきり分かっていません。ただし、身体のあらゆる感覚は最終的に脳が「これは痛みだ」「これはしびれだ」などと捉えることで感じられますので、症状のある場所には病気や怪我がなくても、脳や神経の働きが変化して身体症状を感じてしまうという状態が、多くの患者さんで起きていると考えられます。この脳や神経の働きの変化を目に見える形にする医学的な検査はありません。現代医学をもってしても、すべての身体症状の原因を特定することはできないのが現状です。

身体症状に対する過度な思考、感情、行動が生じること

同じ身体症状であっても、気持ちの状態や余裕の程度によって受け取り方が変わります。例えば、何事にも不安や心配を感じやすい状態だったり、気分が落ち込んだりしている時には、過度な思考、感情、行動が生じやすくなります。身体の不快感に注意が向きやすい、身体の不快感を受け入れられない、身体が万全な状態でないと物事に取り組みたくない、身体症状の原因をなんとしても突き止めたいなどの状態や姿勢も同様です。また、自身や身近な人が深刻な病気にかかったという過去の体験と病気に対する強い不安から発展することもあります。

どのように診断するのでしょう?

身体症状に対して、まずは医師の診察を受け、身体の病気がないかを調べる必要があります。身体の病気がある場合にはその治療が重要です。

身体の病気がない、あるいは身体の病気の治療を受けているにもかかわらず身体症状が長期間(典型的には6か月以上)持続し、それらの症状に対して過度な思考、感情、または行動がみられ、苦痛や日常生活への支障を伴う時に、身体症状症と診断されます。他の精神疾患と同様、医学的な検査によって診断されるものではありません。また、他の精神疾患が合併することもあります。

治療

どのように治療しますか?

多くの患者さんにおいて、身体症状に対する不安や恐怖が強いため、身体症状により注意が向き、それによって身体症状をより強く感じ、さらに不安や恐怖が強くなる、という悪循環が見られます。この悪循環を打開するためには、不安や恐怖、そして身体症状を抱えながらも必要な行動や目的に取り組み、なるべく普段通りの日常生活を送ることが大切です。「身体症状があったら何もできない」という無力感から、「身体症状があってもしたいことはできる」という自信に変わっていくことで、身体症状に対する不安や恐怖は和らいでいきます。

すでに十分な診察や検査を受け客観的な異常を認めないものの、原因を突き止めようとして必要以上に多くの病院を受診し、診察や検査を繰り返し受けることは、身体症状に対するとらわれを強めてしまうため望ましくありません。

身体症状症の標準的な治療には下記のようなものがあります。

薬物療法

上記のように抑うつ気分や不安があると、身体症状に対する過度な思考、感情、行動が強まりますので、抗うつ薬や抗不安薬の使用が有効な場合があります。特に抗うつ薬は、不安を和らげたり、気持ちの余裕を増やしたりする効果もあり、必ずしもうつの症状がなくても有効であることがあります。痛みがある人では、しばしばセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれるタイプの抗うつ薬によって痛みが軽くなることがあります。

精神療法/心理療法

主に治療者との言葉のやり取りによる治療です。最も科学的なエビデンスがあるのは認知行動療法で、対話や実践を通して、身体症状に対する過度な思考、感情、行動を緩めていきます。認知行動療法以外にも様々な精神療法/心理療法があり、身体症状症といっても原因や症状は千差万別なので、ご自身にあった治療法を治療者と相談するのが良いでしょう。

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