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インフルエンザ

いんふるえんざ

概要

インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染による急性症状のことを意味します。我が国ではインフルエンザは毎年12月下旬から3月上旬にかけて流行します。それはウイルスが低温で乾燥した状態に適応できること、冷たい乾燥した空気は気道粘膜の抵抗力を弱めることなどが関係していると考えられます。潜伏期間が短く、感染力が強いため、いったん流行が始まると、免疫のない乳幼児や免疫力の低下している高齢者まで多くの人に感染します。
インフルエンザウイルスは、構造の違いによりA型・B型・C型の3種に分かれます。このうち主にA型とB型がヒトに病気を起こすものとして重要です。さらにA型ウイルスは、構造の違いにより多数に分かれ、鳥や多くの動物(クジラやブタ、ウマ、トラなど)に感染しています。
従来は、A/H1N1(ソ連)型ウイルスとA/H3N2(香港)型ウイルス、及びB型ウイルスの3種類が毎年少しずつ型を変えながら流行していましたが、A型には数十年ごとに大きく構造が異なるウイルスが出現し、新型インフルエンザとして地球規模の大流行(パンデミック)を起こし、(スペイン風邪、香港風邪など)多数の死者を出してきました。2009年には米国、メキシコでA/H1N1型の豚インフルエンザ(H1N1pdm:2009)がヒトからヒトに感染するようになり、新型インフルエンザとして世界中に拡大しました。特に2009-10年シーズンは、ほとんど全てこのウイルスの流行になりました。しかし、2010-11年シーズンに通常の流行パターンに変わり、2011年3月11日には新型から通常季節性のインフルエンザであることが国から宣言され、A/H3N2(香港)型ウイルス、B型ウイルスに加えてH1N1:pdmが主要な流行株になり、A/H1N1(ソ連)型ウイルスが流行株からはずれました。
近年、中国大陸を中心にA/H7N9型という比較的病原性の高いウイルスの局地的流行がしばしば認められるようになりました。また、ニュースでよく高病原性鳥インフルエンザとして紹介されるA/H5N1型については、現時点では動物間の感染が主体で、動物からヒトへの感染は非常に濃厚な接触例に限られるとされていますが、いずれのウイルスも変異型が出現した場合、ヒトからヒトへ感染し大流行を起こす可能性も示唆されています。

症状

インフルエンザウイルスは、鼻咽頭、のど、気管支などの細胞に感染し、1~3日間の潜伏期間を経て、悪寒、頭痛、背中や四肢の筋肉痛、関節痛、強い全身倦怠感などを伴って突然38~40度の高熱を出します。発熱は3~7日間持続します。ライノウイルスやコロナウイルスにより起こる普通の風邪でも同様の鼻咽頭やのど、気管支などの局所症状や熱や頭痛などの全身症状が出現しますが、インフルエンエンザの方がよりその程度が強いとされています。インフルエンザは健康な成人では1週間ほどで治りますが、肺炎や心臓の筋肉の炎症、乳幼児では中耳炎や熱性けいれんなどを合併することがあります。小児ではアスピリンを使うとライ症候群と呼ばれる脳症状を起こすことがあります。また高齢者や乳幼児、妊産婦、肺気腫などの呼吸器疾患、慢性心不全などの循環器疾患、糖尿病、腎不全(血液透析)、免疫不全(薬による免疫低下も含む)などの患者さんではインフルエンザにかかるとこれらの病気が悪化したり、インフルエンザ罹患後の重篤な細菌による肺炎や脱水症を起こして命にかかわることもあります。

診断

特徴的な症状や経過を示すため、流行期なら典型例の診断は難しくなく、インフルエンザ様の症状があり、他に強く疑われる疾患がなければ、臨床的にインフルエンザと診断します。より正確に診断するためにはインフルエンザウイルスに感染しているかどうかを検査します。血液検査でインフルエンザに対する抗体を調べたり、ウイルスを見つければ確実に診断できますが、すぐに結果が出ないので、のどや鼻の奥にいるA型およびB型のウイルスを迅速に見つける検査が普及しています。一般的には鼻から綿棒をのどの奥まで進め、のどをぬぐってきて、それでインフルエンザウイルスの有無を検査します。この迅速に見つける検査の欠点としては、インフルエンザでない患者さんで誤って陽性と判定する可能性は低いのですが、インフルエンザの患者さんを見落として陰性と判定する可能性があります。特に発病初期にはまだウイルスの量が少ないため陰性に出やすいこともあり、検査が陰性だからといってインフルエンザを否定することはできないことは理解しておく必要があります。

治療

  1. 一般療法
    安静、休養、特に睡眠、水分を十分に摂ることが重要です。 免疫健常者では抗インフルエンザ薬を使用しなくても、自然に治癒します。
  2. 対症療法
    全身倦怠感を軽くしたり、熱を下げる薬を使うこともありますが、インフルエンザウイルスの感染による脳障害を起こしやすくする解熱剤があるので、15歳未満の患者さんにはアセトアミノフェンを使います。大人のインフルエンザでは小児のような制限はありませんが、解熱薬は医師の判断により使用されます。
  3. 薬物療法
    1998年にアマンタジン(シンメトレルと呼ばれる飲み薬)が使用できるようになりました。これはウイルスの遺伝子が細胞に入り込むのを防ぐ薬ですが、A型ウイルスにだけ効果がありました。ここ10年くらいは、ほぼアマンタジンが効かないウイルスばかりです(もともとB型ウイルスには無効)。すでにアマンタジンが有効なウイルスがなくなり、ふらつき、不眠、悪夢、幻 覚、妄想などの精神神経症状が出現しやすいなどの理由で使用されることはありません。現在では、細胞内で増えたウイルスが細胞の外へ飛び出して行く時に必要なノイラミニダーゼの働きを抑える薬が使われます。オセルタミビル(タミフルと呼ばれる飲み薬)、とザナミビル(リレンザと呼ばれる吸入薬)やラニラミビル(イナビルと呼ばれる吸入薬)、ペラミビル(ラピアクタと呼ばれる点滴薬)があります。なお、ウイルスが細胞の中で増えるのを抑制する機序の薬であるバロキサビル(ゾフルーザと呼ばれる内服薬)が新しく販売開始されました。ただ基本的には、ザナミビル、ラニナニビル、ペラミビル、バロキサビルのいずれも、オセルタミビルと効果に差がないことは証明されていますが、どれがより優れているかを証明した無作為化試験(ランダムにどの薬を投与するかを決め、その効果を比較する質の高い臨床研究)は今のところありません。また、インフルエンザ自体は免疫が正常な成人の場合、これらの薬剤を使用せずとも自然に良くなる病気ではありますので、投薬を行うかどうか、またどの薬を使用するかは医師が患者さんの状態を見て、その必要性と適切な投与経路から判断します。特に投薬が必要なのは、重症の方や、乳幼児、高齢者、妊産婦、持病をお持ちの方などです。なお、薬剤の基本的な効果は発症から48時間以内に使い始めると発熱期間が1~2日間短くなるというものであり、インフルエンザをただちに完治させるものではありません。熱が下がっても感染性がありますので、しっかりと医師の指示を守って学校や仕事などはお休みしてください。また、開始時期が48時間以上遅れると治療効果はないので使用するかどうかを医師が判断します。なお、抗生物質はインフルエンザウイルスには効きません。

生活上の注意

生活面での注意・予防

  • 感染予防
    インフルエンザはウイルスを含む飛沫(咳やくしゃみの時に発生するしぶき)がのどや太い気管に付着すると感染します(飛沫感染)。飛沫の吸入はマスクによって防ぐことができます。インフルエンザが流行している時期には、外出時にはなるべくマスクをつけ、人込みを避けましょう。マスクを着けると自分から飛沫が飛び散るのを抑えることもできるので、咳のあるときにはマスクを着けましょう(咳エチケット)。また手指を介した接触感染もあるので石けんでの手洗いは重要です。インフルエンザウイルスは湿度に弱いため、狭い部屋では時々空気を入れ換えたり、部屋の湿度を適度(50~60%)に保ちましょう。
  • 予防内服
    インフルエンザを発症している患者さんとマスクを着用せずに接触した場合で、特にインフルエンザワクチンの接種を行っていない高齢者や、慢性疾患を持っている方など、万が一発病すると重症化しやすい方には、抗インフルエンザ薬を使ってインフルエンザの発病を予防することがあります。ただ、予防の基本は以下に述べるワクチンです。
  • ワクチン
    ワクチンは、前のシーズンに流行したウイルスを分析し、その年に流行するウイルスの型を予想し(ワクチン株)、それを用いて製造されます。有精卵を用いて、春頃から製造しますが、約半年かかるので秋になった頃に使えるようになります。 ワクチン接種後、体内で抗体ができるまで2週間かかるので、通常成人では流行が始まる前までに1回接種を受けます。13歳未満の小児の場合は、通常4週間(最低2週間)間隔をあけて2回接種を受けます。ワクチン接種により得られる抗体には、感染を防ぐ効果よりも感染した後の発病や、重症化を防ぐ効果が期待できます。流行株がワクチン株に似ていると約70%の効果が期待できますが、ワクチンを作るのに使われるウイルスと異なる型のウイルスが流行すると効果は低下します。接種した部位に発赤(10%)や発熱(1%)などがみられることがありますが、死亡や重い後遺症の発生頻度は、接種100万回あたり1件以下です。インフルエンザワクチンは毎年接種する必要があります。生後6か月未満の乳児や、発熱していたり、インフルエンザワクチンで過去に重篤なアレルギー症状を呈した場合には接種できません。卵のアレルギーがあっても、場合によっては慎重に接種することも可能ですので、医師によくご相談ください。ワクチン接種には健康保険は使えません。ただし65歳以上の高齢者の方や60歳以上の基礎疾患のある方に対しては、自治体から接種への補助金が交付されますので、自治体の広報などをよくご覧ください。社会全体でワクチン接種者の割合が広がることにより、インフルエンザの流行を防ぐことにつながり、ワクチンを接種できない乳児やアレルギーのある方などもインフルエンザから守ることができます。これを集団免疫効果といい、ワクチン接種は、自分のためだけではなく、社会全体のためにもなります。

学校や職場への復帰

個人差がありますが、一般的にインフルエンザウイルスは発症前日から発症後3~7日間、患者さんから排出されます。 ウイルス量は経過とともに減少しますが、学校保健法では、インフルエンザによる出席停止期間は発症から5日経過し、かつ解熱後2日(幼児の場合3日)を経過するまでとされています。職場復帰の目安もほぼ同様に扱われることが多いようですが、最終的には産業医と雇用主の判断となります。

文責: 感染制御センター外部リンク
最終更新日:2018年12月21日

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