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HIV感染症/AIDS(エイズ)

HIVかんせんしょう/ AIDS えいず

概要

エイズ(AIDS)はAcquired Immunodeficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)の略称です。エイズはHIV(ヒト免疫不全ウイルス=通称、エイズウイルス)によって起こる病気です。血液や体液(精液、膣分泌液や母乳など)に含まれるHIVが粘膜や傷口から体内に入り、さらにCD4と呼ばれる構造をもつリンパ球(CD4陽性リンパ球、通称、リンパ球)に入り込むと感染します。リンパ球の中で増えたHIVはリンパ球の外へ出て行き、新たなリンパ球に感染し増殖を続けます。その結果、リンパ球が次々と破壊され免疫能が次第に低下していきます。一般的に感染してから数年で様々な日和見感染症(免疫力があれば問題にならない病原微生物による感染症)や悪性腫瘍を発症し、エイズとなります(図1)。現在、我が国では毎年1,000人以上の新規HIV感染者が報告されています。その多くは、異性間または同性間の性的接触によるものと推測されています。自分が知らないうちに、相手が不特定多数と接触している場合もあり、感染予防(コンドームの着用)や早期発見(抗体検査の受診)などの啓発が必要です。治療をしなければ一命にかかわる病気ですが、薬を使った治療法もめざましく進歩しています。ウイルスを体から完全に除くことは不可能ですが、定期的に薬を飲み続けることにより、免疫健常者と変わらない日常生活を送ることが可能となっています。

図1. HIV感染後のウイルスマーカーの推移

図1. HIV感染後のウイルスマーカーの推移

症状

  1. 急性期(感染初期:感染後2週間~3ヶ月): 発熱、のどの痛み、だるさ、筋肉痛などの風邪やインフルエンザのような症状が出る場合があります。これらの症状は数週間でなくなり、次の無症候期へ移行します。
  2. 無症状期(感染後数年~10数年): 感染初期には免疫機能が正常に働くため、いったんはウイルスが減少します。そのため感染初期の症状はなくなり、症状のない期間が、約5~10年続きます。この無症状の期間は人によって差があります。
    しかし、HIVはリンパ球を破壊しながら増え続けます。その結果リンパ球が次第に減少し、免疫力が低下していきます。患者さんによっては経過中に帯状疱疹(水疱瘡のウイルスが痛みを伴う水ぶくれを作る)や口の中のカンジダ症(カンジダというカビで口の中や舌の表面が白くなる)がみられることもあります。
  3. エイズ発症期: 免疫力がさらに低下すると、下痢や寝汗、急激な体重減少などがみられることがあります。そのうちに、正常な免疫力があればかからないカビ、原虫(寄生虫)、細菌、ウイルスなどによる日和見感染症や悪性腫瘍、神経障害など様々な症状が出てきます。HIV感染者が表1に示す指標疾患に罹患していることが確認されるとエイズと診断されます。抗ウイルス療法を受けなかった場合、感染後の最初の数年間は毎年1~2%、その後は毎年およそ5%がエイズを発症します。HIVに感染してから10年経つまでに半数がエイズを発症し、最終的にはほぼ全例がエイズになります。

表1. エイズの指標疾患

●真菌症

●細菌感染症

●腫瘍

  1. カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
  2. クリプトコッカス症(肺以外)
  3. コクシジオイデス症
  4. ヒストプラズマ症
  5. ニューモシスチス肺炎
  1. 化膿性細菌感染症 (13才未満)
  2. サルモネラ菌血症
  3. 活動性結核
  4. 非結核性抗酸菌症
  1. カポジ肉腫
  2. 原発性脳リンパ腫
  3. 非ホジキンリンパ腫
  4. 浸潤性子宮頸癌

●原虫症

●ウイルス感染症

●その他

  1. トキソプラズマ症
  2. クリプトスポリジウム症
  3. イソスポラ症
  1. サイトメガロウイルス感染症
  2. 単純ヘルペス感染症
  3. 進行性多巣性白質脳症
  1. 反復性肺炎(1年に2回以上)
  2. リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成
  3. HIV脳症
  4. HIV消耗性症候群

診断

まず、血液中のHIVに対する抗体を調べます(スクリーニング法)。しかし、感染初期に風邪のような症状で受診した場合に、実際にはHIVに感染しているのに抗体検査が陰性になることがあります(ウィンドウ期間)(図1)。そのため抗体検査が陰性でもHIV感染が疑われる場合にはしばらく時間をおいて再検査を行う必要があります。また抗体検査では約0.2~0.3%が偽陽性(HIVに感染していないのに検査で陽性と判定される)となりますので、陽性と判定された場合には精密な検査(確認検査)を行います。スクリーニング検査は保健所で無料で受けることができます。

治療

治療は、HIVに対する治療と、日和見感染症に対する予防および治療があります。

  1. 無症状期にHIV感染が発見された場合: 直ちに抗HIV薬を始めるとは限りません。まず、ウイルス量やリンパ球数を定期的に測定します。治療開始の基準は新しい研究により常に変化しますので、その都度担当医と相談します。現在は抗ウイルス薬の進歩により、1日1錠でよいもの、副作用の少ないもの、食事の影響を受けにくいものなど様々な選択肢があります。担当医と相談し、患者さん本人にとって続けていきやすい抗ウイルス薬を選ぶことが重要です。
  2. エイズ発症で診断された場合: エイズ指標疾患の種類によっては、まず抗HIV療法よりは指標疾患に対する治療を先に行う場合があります。日本で多くみられる指標疾患は、結核、ニューモシスチス肺炎、クリプトコッカス髄膜炎、サイトメガロウイルス感染症などです。これらの感染症の病状が安定し、適切な時期にHIVの治療を開始します。

生活上の注意

HIV感染が分かったら、HIV診療拠点病院を受診し、担当医、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師などと相談し適切な治療、経過観察を受けることが重要です。

  1. プライバシーの保護: この疾患は法律により、保健所へ報告することが義務づけられていますが、その際には名前、住所、年齢、職業など個人情報は通知されません。また、患者さんに相談なく医療従事者から病気の事が、たとえ家族でも他の人に漏れることはありません。
  2. 病名を誰に伝えるか: HIVに感染していることを家族や知人、職場や学校など、どこまで誰に伝えるかに決まりはありません。焦らず、精神的に落ち着いて、十分に考えてから伝えることが大切です。また他人に病気のことをどのように伝えたらよいかについて相談することも可能です。
  3. 医療費について: ソーシャルワーカーに相談しながら所定の手続きを進めれば、病状に応じて"後天性免疫機能障害"として自立支援医療を受けられます。認定を受ければ医療費の公費助成を受けることが可能です。
  4. 感染対策: 傷のない皮膚にHIVを含む血液が付着しても感染しませんが、感染性のある体液(血液、精液、膣分泌液、脳脊髄液、母乳)が粘膜や傷のある皮膚に接触することによって感染します。具体的には、男性の尿道口付近、女性の膣の周辺、口の中、肛門や直腸は粘膜で覆われており、性交時にHIVが体内に入り込むことがあります。感染しないために、また感染を拡げないために、性交時には最初から終わりまで正しくコンドームを装着することが大変重要です。一方、体液の中でも唾液、涙、尿などからは感染しないといわれています。また、HIVは握手、体に触れる、食事や回し飲み、共同浴場、トイレ、プール、シャワー、理容などの日常行為では感染しません。
  5. 治療薬を続ける: 現在使用されている薬剤はHIVの増殖を強力に抑制しますが、HIVが完全に体内から消滅することは難しく、いったん治療を開始した場合には生涯継続する必要があります。また、抗ウイルス薬を飲んだり飲まなかったりすることで、体内のウイルスは薬の効かない耐性ウイルスに変化することがあります。そのため、いったん抗HIV薬が開始されたら耐性ウイルスを生み出さないために、定期的な受診と確実な服薬を継続することが最も重要です。特に近年、内服を途中で中断してしまったことによる抗HIV薬耐性ウィルス発生によって、治療が困難になる例が増加しています。ここ数年で、服薬回数が少なく、食事のタイミングによる影響を受けない抗ウイルス薬が開発されており、治療を行いやすくなっています。
  6. その他の感染症の予防:リンパ球の数が少ないうちは日和見感染症のリスクがあります。必要以上に怖がることはありませんが、特に加熱不十分な肉類、魚、卵、生野菜などの接種には注意しましょう。また、感染症の中にはワクチンを接種することで予防ができるものがあります(具体的には、肺炎球菌、インフルエンザ、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水疱瘡など)。リンパ球数にかかわらず、ワクチンを接種し、感染予防を行うことは重要です。接種可能なワクチンについて担当医と相談しましょう。

慶應義塾大学病院での取り組み

我が国のエイズ診療はエイズ治療開発センター(ACC:東京都新宿区の国立国際医療センター内)を頂点として、全国を8つのブロックに分けそれぞれのブロックに計14箇所のブロック拠点病院があり、さらに各地域に拠点病院があり、これらの病院が連携をとりながら行われています(全国381か所)。東京都には 43か所の拠点病院がありますが、慶應義塾大学病院は東京都エイズ中核拠点病院に指定され、医師、看護師、薬剤師、カウンセラー、臨床検査科、微生物免疫学教室、ソーシャルワーカーがチームとなり診療にあたっています。障害者手帳取得や医療費の公費負担申請の手続きの支援もしています。またエイズの治療、経過観察を受けられる診療所との連携も進めています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 感染制御センター外部リンク
最終更新日:2018年12月21日

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