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シェーグレン症候群 (Sjögren's syndrome: SS)

しぇーぐれんしょうこうぐん

概要

シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医シェーグレンが発表した疾患です。本来細菌・ウイルスと戦うべき免疫が、自分自身に対して過剰に反応し攻撃を加えてしまう疾患を総称して自己免疫疾患と言いますが、シェーグレン症候群も自己免疫疾患のひとつです。主として涙腺、唾液腺が標的となって乾燥症状をきたしますが、全身の臓器に病変をおこすこともあります。自己免疫反応をおこす原因はわかっていません。
厚生労働省研究班のデータでは、数万人のシェーグレン症候群の患者さんが病院受診されているとされていますが、潜在的な患者さんを含めると10万人を超えると推測されています。難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)(平成27年1月施行)による指定難病に含まれました。年齢は50歳代にピークがありますが、子供からお年寄りまで発症する可能性があり、男女比は1:14程度とされています。
シェーグレン症候群は膠原病に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない原発性シェーグレン症候群に分類されます。特に関節リウマチの患者さんでは、約20%に発症するとされています。家族内でシェーグレン症候群が発症する率は2%程度とされています。

症状

大きく分けて、乾燥症状である腺症状と他の臓器障害である腺外症状の二つがあります。腺症状のみの方と腺外症状を伴う方は約半分ずつとされています。10~20年以上経ても半数以上の方は状態に変化はありません。その他の方では何らかの新しい病変が出ることがありますが、ごく軽度なものから肺や腎臓の病変などさまざまです。

腺症状

唾液腺や涙腺などが慢性炎症によって徐々に破壊されて、ドライマウスやドライアイをはじめとする乾燥症状がでます。また、唾液を作る唾液腺の腫れが繰り返し起こる事もあります(図1)。

図1.唾液腺の腫れ

図1.唾液腺の腫れ

臓器

乾燥症状

腺症状

口が渇く、虫歯の増加、味覚障害、食べにくい、口内炎

眼が乾く、眼精疲労、眼の違和感、視力低下、目やに

鼻が乾く、風邪をひきやすい、鼻出血しやすい

気道

声がかすれる、咳がでやすい、風邪をひきやすい

膣炎、性交時不快感

腺外症状

全身

微熱、倦怠感

関節・筋肉

関節炎、関節痛、筋肉痛

間質性肺炎※

腎臓

間質性腎炎※

膀胱

間質性膀胱炎※

皮膚

紅斑、紫斑

甲状腺

甲状腺炎

神経

末梢神経障害、脊髄炎

※間質とは、臓器の内部で、機能を直接になっている部分を支える組織。

腺外症状

唾液腺や涙腺以外の臓器が障害されることがあります。

診断

1999年に改訂された厚生労働省の診断基準に基づいて、以下の4項目のうち2項目を満たすとシェーグレン症候群と診断されます。

  1. 唾液腺または涙腺組織でリンパ球という細胞が多くみられる
    組織をとることを生検と言いますが、唾液腺生検は口腔外科で下唇の裏側から、涙腺生検は眼科で上まぶたから行います。粟粒ほどの大きさの組織を採取し、顕微鏡で組織を観察します。
  2. 唾液腺の分泌低下が証明される
    ガムを噛んで分泌された唾液の量やアイソトープを使用して、唾液腺の機能が低下していないか検査します。
  3. 涙腺の分泌低下が証明される
    ろ紙を眼の端にぶら下げて涙の量を測定し、角膜や結膜の表面を特殊な色素で染めて傷の状態を見ます。
  4. 血液検査で抗SS-A抗体か抗SS-B抗体が陽性である
    自分の体の成分に対する抗体を自己抗体と呼びますが、数ある自己抗体のうち、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が特徴的で、血液検査で調べます。その他リウマチ因子や抗核抗体なども高率に陽性になります。その他、腺外症状を調べるために、障害されているそれぞれの臓器に対応した検査を行います。たとえば、肺を調べるためのレントゲンやCT検査、腎臓を調べるための尿検査などです。

治療

残念ながら根本的にシェーグレン症候群を治癒させることはできません。乾燥症状に対しては症状を軽くすること、他の臓器障害に対してはそれらを抑えることを目的とした治療を行います。乾燥症状に対しては、エアコン、タバコの煙、飛行機の中などに注意するなど、日常生活での配慮も必要となります。

眼乾燥に対する治療

涙は外側に油層、中間に水層、内側に粘液層となる3層構造をとっています。油層は水分の蒸発を防ぎ、粘液層は涙を目の表面にくっつける作用をしており、シェーグレン症候群では水分の分泌が減少します。治療は、涙の分泌を促進すること、涙を補充すること、涙の蒸発を防ぐこと、涙の排出を低下させることなどがあります。

  • 涙の分泌促進には、セビメリンという薬が、日本では適応がとれていませんが、ヨーロッパでは効果が認められています。また、粘液の分泌を刺激し、水分保持効果のあるジクアホソルナトリウム(商品名:ジクアス点眼液®)や、角膜上皮細胞の修復や粘液を産生する細胞を増加させる効果のあるレバミピド(商品名:ムコスタ点眼液®)という点眼薬が新たに認可されました。他にも、ヒアルロン酸ナトリウム(商品名:ヒアレイン®)の点眼が用いられることもあります
  • 涙の補充には、人工涙液(商品名:マイティア®、商品名:ソフトサンティア®など)の点眼薬を用います。防腐剤が入っている点眼薬は一日に何回も点眼すると角膜障害がおきることがありますので、生理食塩水などで洗い流すか、防腐剤の入っていない使い捨ての点眼薬を使う方がよいとされています。
  • 涙の蒸発を防ぐためには、眼鏡の枠にビニール製のカバーをつけたドライアイ用の眼鏡があります。
  • 涙の排出を低下させるために、上下のまぶたの鼻側にある、涙の排出口である涙点を閉じることがあります。涙点をプラグでつめる方法、手術によって閉鎖する方法などがあります。
    詳しくは「ドライアイ」(眼科)、KOMPASあたらしい医療「ドライアイの病態解明をめざしてー臨床と基礎研究をつなぐー」をご参照ください。

口腔乾燥に対する治療

唾液には、抗菌作用、粘膜保護作用、pH緩衝作用、歯の再石灰化、消化作用などたくさんの大切な働きがあります。唾液分泌低下による口腔内乾燥は、会話の妨げになるだけでなく、虫歯や歯周炎、味覚障害、口臭の原因にもなります。治療は、唾液の分泌促進、唾液の補充、口内の清潔保持、口腔乾燥作用をもつ薬の中止などがあります。

  • 唾液の分泌促進にはセビメリン(商品名:サリグレンカプセル®、商品名:エボザックカプセル®)、ピロカルピン(商品名:サラジェン®)などの薬が使われます。消化器症状や発汗などの副作用があり、状態をみながら使用します。他にも漢方薬では麦門冬湯などが使われます。副腎皮質ステロイド薬も一部には有効性が期待されます。シュガーレスガムやレモンなども唾液分泌の刺激になります。香辛料やアルコール飲料などの刺激のあるものは控えることが望ましいです。
  • 唾液の補充には人工唾液(商品名:サリベートエアゾール®など)を用います。噴霧式のものは舌の上だけでなく、舌下、頬粘膜にも噴霧したほうが口内で長持ちします。冷蔵庫で保存すると不快な味が軽くなります。
  • 口内の清潔保持にはうがい薬、トローチ、歯垢除去、ブラッシングなどがあります。糖分を控えめにすることも大切です。
  • 口腔内乾燥作用をもつ薬には、抗うつ薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬など、さまざまなものがあります。シェーグレン症候群にとっては乾燥症状を悪化させることがありますが、他の疾患にとって大事な薬ですので、中止や減量に関しては主治医とよく相談することが大切です。

他の乾燥症状に対する治療

膣乾燥に対してはエストロゲン入りのクリームを使用することがあります。皮膚に対しては、熱いお湯に入ることや石鹸の使用は控えることをおすすめしています。

臓器病変に対する治療

肺や腎臓、神経などが障害されることがあり、それぞれの病変に対して、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を使用することがあります。また、まれに悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症など血液の病気を合併して治療が必要なこともあります。

生活上の注意

上記治療のところにも記載しましたが、日常生活では以下を心掛けてください。

  1. エアコン、飛行機の中、タバコの煙などに注意しましょう。
  2. ブラッシングやうがいを含めた口腔内ケアをきちんと行いましょう。
  3. 刺激物や甘いものは控えるようにしましょう。
  4. 規則正しく、十分な睡眠と栄養バランスのとれた生活を心がけましょう。
  5. 病気について正しく理解し、上手につきあっていきましょう。

妊娠された場合の注意点

血液中に抗SSA抗体をお持ちですと、抗体が赤ちゃんに移行し新生児ループスを起すことがまれにあります。多くの症状は生後半年頃には治まりますが、房室ブロックという治りにくい不整脈を起すことがあります。また原発性か二次性かによって注意点も異なりますので、妊娠前に主治医によくご相談ください。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では、眼科・口腔外科と協力しながら、シェーグレン症候群の診療にあたっています。多くの方は乾燥症状以外の臓器病変はないか、あっても軽いものですが、中には治療を必要とすることもありますので、定期的なチェックをし、早期発見に努めています。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2017年2月23日

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