リンチ症候群
概要
家系内に子宮体がん、大腸がん、胃がん、卵巣がん、小腸がん、胆道がん、腎盂・尿道がんなどの方がいらっしゃる場合、「リンチ症候群」と呼ばれる遺伝性腫瘍疾患である可能性があります。その場合、遺伝子の変化(変異)をみることで、がん予防につなげることが可能です。
リンチ症候群の発がんのメカニズムとして、ミスマッチ修復遺伝子の変異によるミスマッチ修復機構(細胞分裂に伴うDNA複製時に塩基の不対合がある場合、それを修復すること)の機能低下が関与していることが知られています。
検査と診断
がんを発症した人を対象としたスクリーニング検査としてマイクロサテライト不安定性検査(保険適用あり)や免疫組織化学があります。結果が陽性の場合には遺伝カウンセリングやミスマッチ修復遺伝子の遺伝学的検査を行うことで、本人だけでなく、血縁者のがんの早期発見・早期治療につながる可能性があります。
治療
がん未発症で遺伝子変異をもつ人や、家系内でリスクが高いと考えられる人については、大腸がん、胃がん、卵巣がん、尿路がんなどに対する定期的な検査を受けることをお奨めしています。さらに倫理委員会の承認のもとリスク低減手術を受けることも選択肢になります。
また近年、がんに対する薬剤として免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合が増えてきています。リンチ症候群の方ががんを発症した場合、マイクロサテライト不安定検査が陽性となることが多いため、免疫チェックポイント阻害薬が使用できる可能性があります。
慶應義塾大学病院での取り組み
当院産婦人科では診療時に家族歴を聴取しております。自分ががん家系ではないかと心配な方はこちらをダウンロードして記載して、診療時に担当医にお渡しください。
臨床遺伝学センター外来(水曜午前:予約制)、子宮体部腫瘍外来(水曜午後)を開設しております。血縁にリンチ症候群関連腫瘍がいらっしゃる方は、遺伝カウンセリングを受けていただくことができますので、ご連絡ください(臨床遺伝学センター外来)。
さらに詳しく知りたい方へ
- マイクロサテライト不安定性(MSI)検査(日本家族性腫瘍学会)
- 遺伝性婦人科癌 : リスク・予防・マネジメント / カレン H.ルウ編, 青木大輔監訳
東京 : 医学書院, 2011.11 - Clinical utility of a self-administered questionnaire for assessment of hereditary gynecologic cancer. Masuda K, Hirasawa A, Irie-Kunitomi H, Akahane T, Ueki A, Kobayashi Y, Yamagami W, Nomura H, Kataoka F, Tominaga E, Banno K, Susumu N, Aoki D. Jpn J Clin Oncol. 2017. DOI: 10.1093/jjco/hyx019
文責:
婦人科
最終更新日:2022年5月24日