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熱中症

ねっちゅうしょう

概要

熱中症は周囲の気温の上昇や過度の運動により、体温が上昇して発生する健康障害です。軽症から重症まで様々な病型が含まれますが、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病の4つが代表的な病型です。このうち熱射病が最も重症で、多臓器不全をともない死亡することがあります。熱中症の診断は、問診と診察によって行い、重症度の評価は意識障害の有無と体温測定によって行います。乳幼児、高齢者、視床下部に作用する薬物を内服している場合には熱中症となりやすく、注意が必要です。

症状

起こり方

熱中症の誘因となる高温環境には、夏季猛暑日(晴天)、激しい運動、遮蔽された工事現場などの労働環境、冷房なしで窓を締め切った生活など様々な場合があります。赤ん坊が車の中に放置され死亡する事故も熱中症によるものです。熱中症の好発年齢には、青少年(運動)と中高年(労働環境、生活環境)の二つのピークがあります。性別では男性が女性より多く、高齢者でのみ男女比は同等です。運動や労働で起こる熱中症は、高温環境に慣れない人に起こりやすく、したがってスポーツや労働の初心者が起こしやすい傾向にあります。

熱失神

高体温による血管拡張と脱水により血圧が低下して発生する一過性の(短時間で自然に治る)意識障害です。体温上昇は軽度で、生命に関わることはありません。熱失神はマラソンなどの運動により起こる他に、労働環境によっても発生します。後者の例として、昔は鍛冶屋や溶鉱炉などの高温の労働環境で発生しましたが、現在では周囲を遮蔽したビル工事現場などが多いようです。

熱けいれん

大腿や肩など四肢のこむらがえりです。体温上昇は軽度で生命に関わることはありません。多量の発汗後に水分のみを補給した場合に起こり、高温の環境にさらされた状況から数時間以上経ってから、あるいは翌日に、こむらがえりが起こります。多量の発汗による水分と塩分喪失を飲水によってのみ補うことによる電解質異常が原因と考えられています。

熱疲労

高温にさらされて体温が上昇し、脱力、疲労、めまい、悪心嘔吐、頭痛、筋肉痛、起立性低血圧、頻脈、発汗などの症状を呈します。体温は40℃を超えず、意識障害はありません。塩分・水分の欠乏が病態の中心です。適切に治療を行えば生命に関わることはありません。

熱射病

高温にさらされて体温が40℃以上となり、興奮、異常行動、幻覚、痙攣、昏睡、運動失調、麻痺などの神経症状が出現します。発汗は初期には半数にみられますが、脱水の進行と共に無汗となります。熱射病では高体温のために細胞障害が発生し、脳、肝臓、腎臓、凝固系の障害など多臓器に障害をともない死亡することがあります。意識障害は体温42℃以上では必ず起こりますが、それ以下では高体温の持続時間が関係します。

重症化のメカニズム

熱中症は、高温にさらされて身体の具合が悪くなった患者さんが、その後も、さらに高温環境にとどまることにより重症化します。運動や労働の場合には、活動を中止すればよいのですが、例えば練習や試合のために中止が困難な場合、休息を取る環境の不適切性(高温、高湿度、無風)によって、体温がさらに上昇すると病態が悪化します。生活環境の異常による熱中症では、たとえば独り暮らしの患者さんが夏に高温の部屋に放置されて発症するなど、生活様式が重症化の原因となります。

診断

問診と診察により熱中症とその病型の診断を行います。重症度評価は、意識障害の有無と体温によって行います。呼びかけに反応があっても、見当識障害(日付、場所、状況などが分からなくなる)や反応が鈍ければ、意識障害があると考えます。熱中症は予防が最も重要であることは、みなさんご存知のことですが、早期に異常を認識し、治療につなげることが重症化を防ぎ、生命を守ることにつながります。一般市民のみなさんにも容易に判断でき、早期治療につなげることができるように、近年、熱中症の診断基準が簡略化されたものが作成されました。(表1)

表1.日本救急医学会熱中症分類2015
(熱中症診療ガイドライン2015外部リンク, p7より転載)

表2 熱中症予防のための運動指針(日本体育協会HPより引用)

治療

熱けいれん

0.1~0.2%のナトリウム含有液を経口投与します。手軽に手に入るものとしては、市販のスポーツドリンクや野菜ジュースが良いでしょう。経口接種が困難な場合には細胞外液成分の輸液を行いますが、入院は不要です。熱失神も、脱水の治療のみで入院は不要です。

熱疲労

経口投与あるいは輸液により塩分と水分の補充を行います。脱水や全身状態、血液検査の異常をともなう例では入院治療を行います。

熱射病

全身管理、輸液による水分・塩分補正と共に、急速冷却により体温をより早く40℃以下にすることが必要です。冷却法には、1) 全身体表を水で濡らし扇風機で送風(気化熱を奪う)する方法、2) 胃チューブ挿入後に冷水を灌流する方法、などがあります。昔はアルコールを全身に塗布して蒸散熱により冷却する方法を行っていましたが、引火の危険、および蒸散熱はアルコールよりも水の効率が高いために、現在では行われなくなりました。重症の熱射病では集中治療、すなわち多臓器不全に対して人工呼吸器、血液透析、その他の対症療法を行います。

生活上の注意

熱中症では予防が最も大切です。高温環境で意識が保たれていても、その症状が重症化して熱射病となり、治療が遅れると生命にかかわります。図1は日本体育協会の高温時の運動の指針です。学校やクラブで運動を指導する方は、この指針を理解して指導にあたっていただきたいと思います。
高温高湿度での運動や労働を避けること、水分を十分に補給することが大切です。もしも熱中症の兆候があらわれたら、日陰、通風の良い場所での休息をとらせます。体温を下げるには、水をかけて風を送ることが効果的です。もし反応が鈍ければ、すぐに救急車を呼んでください。

表2 熱中症予防のための運動指針(日本体育協会HPより引用)

図1.熱中症予防のための運動指針(日本体育協会外部リンクより転載)

慶應義塾大学病院での取り組み

熱中症には救急科が対応しています。

さらに詳しく知りたい方へ

下記のwebサイトを推薦します。

文責: 救急科外部リンク
最終更新日:2017年3月23日

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