急性薬物中毒
きゅうせいやくぶつちゅうどく
概要
急性薬物中毒は、医薬品や洗剤、殺虫剤、塗料、あるいは農薬などの化学物質を飲んでしまう、吸い込んでしまう、あるいは皮膚から吸収されてしまうことによっておこります。
- 医薬品による薬物中毒では、医師からの処方どおりに飲んでいたかどうかの確認が必要です。その薬を処方した医師と相談が必要です。
(ア) 医師からの処方どおりに飲んでいても、体調や食べ物、あるいは同時に飲んでいる薬によって、その薬の体内の濃度が通常以上に濃くなってなんらかの症状や異常を起こすことがあります。
(イ) 医師からの処方に従わずに誤った方法や誤った量の薬を飲むことでなんらかの症状や異常を起こすことがあります。
(ウ) ご高齢の方やお子さんでは、ご本人が飲んでいる薬や他のご家族が飲んでいる薬を誤って飲んでしまうことがあります。
(エ) 薬局などで市販されている薬でも、指示どおりの飲み方や同時に飲んでいる薬によって、急性中毒を起こし、なんらかの症状や異常を起こすことがあります。
- 洗剤や殺虫剤、農薬など家庭用の化学製品を誤って飲んでしまう、吸い込んでしまう、あるいは皮膚から吸収されてしまうことでなんらかの症状や異常を起こすことがあります。これらの化学製品には説明書や注意書きがあるはずですので、確認が必要です。
- 麻薬や覚せい剤をはじめとした違法な薬物は身体と精神を傷つけます。これらの中毒では、法律上の規定によって当局への届け出が必要になります。
生活上の注意
医薬品や化学製品を正しく使用すること、そして、正しく保管することです。
- 医師から処方されている薬は指示どおりに飲んでください。何らかの異常がある場合には早めに処方した医師に相談してください。
- 毎日たくさん薬を飲んでいる方で、飲み方が複雑なために間違いそうなことがあれば、朝のむ分、昼のむ分、夜のむ分・・・というように薬の包装を変えることもできます。処方している医師や薬剤師に相談してください。
- 高齢者や子どもは誤って薬を飲んでしまうことがありますので、薬の保管場所に注意してください。
- 故意に薬をたくさん飲んでしまうことがある患者さんやそのご家族は精神・神経科の医師とご相談することをお勧めします。
- 薬局などで市販されている薬では、その薬の指示に従って飲んでください。他の薬と一緒に飲む場合には薬剤師に相談してください。
- 洗剤や殺虫剤、農薬など家庭用の化学製品も中毒を起こす場合があります。保管方法や使用方法に注意してください。
症状と診断
急性薬物中毒の症状は多彩ですので、診断は容易ではありません。原因物質が特定できなければ、有効な治療を開始することができません。
- 何らかの薬物や化学物質の急性中毒の可能性がある場合には、その状況を医師にお知らせいただく必要があります。患者さんやその家族からの情報がとても重要です。 情報提供にご協力ください。
- 一部の薬剤では血液や尿の検査で中毒を診断できる場合があります。
- 一部の急性薬物中毒では、合併症で内臓の異常が出現することがあるため、血液検査やレントゲン検査などを行うことがあります。
治療および慶應義塾大学病院での取り組み
慶應義塾大学病院では日本や欧米で主流となっている急性薬物中毒に対する治療方針に則って、患者さんの状況に応じた治療を行っています。
食品の安全に関して
食品に混入していた化学物質により嘔吐や腹痛、下痢を起こすことがありますが、これらの症状は急性胃腸炎や食中毒を疑う症状でもあります。食品にウイルスや細菌が付着していて起こる急性胃腸炎や食中毒の多くは、食品を食べた直後に症状が出ることはまれで、数時間以上たって起こります。食品の色や匂い、あるいは味などが異様で、食品を食べた直後になんらかの症状が出現した場合には、その食品を捨てずに保管すること、保健所に相談することをお勧めします。
急性薬物中毒がおこってしまった場合
- 以下の電話番号で相談ができます。
(ア) 大阪中毒110番(365日 24時間対応)
072-727-2499 (情報提供料:無料)
(イ) つくば中毒110番(365日 9時~21時対応)
029-852-9999 (情報提供料:無料)
(ウ) タバコ専用電話(365日 24時間対応、テープによる情報提供:一般市民)
072-726-9922 (情報提供料:無料)
- 医療機関を受診する場合、正確な情報が必要です。急性薬物中毒は原因となった薬の成分によって治療などが異なります。また、原因となった薬を症状だけから特定することは困難です。中毒の原因物質(正確な商品名、会社名、用途)や発生状況(摂取量、摂取経路、発生時刻)を必ずお知らせください。
- 医薬品では起こりませんが、家庭用の洗剤や農薬などでは、薬品からガスが発生することがありますので、異様なにおいがする場合には、むやみに近づかず、消防署に連絡してください。その際には、以下をお伝えください。
- 患者さんの氏名、年齢、性別
- 連絡者と患者さんとの関係、連絡者の電話番号
- 中毒の原因物質(正確な商品名、会社名、用途)
- 中毒の発生状況(摂取量、摂取経路、発生時刻)
- 患者さんの状態
さらに詳しく知りたい方へ
- 財団法人日本中毒情報センター
中毒に関するニュースや一般向けの情報が掲載されています。また相談窓口となる電話番号も掲載されています。
- 一般社団法人日本中毒学会
主に専門家向けの情報が掲載されています。日本中毒学会が推奨する急性中毒に対する標準治療が掲載されています。
文責:
救急科
最終更新日:2017年3月23日