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漢方薬とがん治療 -漢方医学センター-

はじめに

近年、外科的治療、化学療法、放射線療法、分子標的治療、ホルモン治療などの西洋医学の進歩により、患者さんのがん治療と生活の質は大きく改善しています。しかし、その一方で、がん自体あるいはがん治療が、患者さんに大きな負担を課してしまうことも事実です。がん治療は、単にがん病変を消失させることだけを目標とすればよいのではなく、治療を受ける方の体の負担の軽減、治療中のがん組織との共存、後遺症や副作用による症状の緩和などにも考慮する必要があります。つまり、主な目的であるがん病変の治療と生活の質の改善を総合的に進めることが、がん治療に当たっての重要な課題です。

漢方医学は、歴史的経過の中で確立されてきた治療体系であり、次に述べるような西洋医学とは異なる考え方と治療薬の特徴を備えています。従って、漢方医学はその性質上、がん治療においては、患者さんの様々な症状を緩和することが目標であり、生活の質の改善に寄与することができるのではないかと、期待されています。

漢方医学とは

漢方医学的治療の考え方は、西洋医学とは異なっています。一般的に西洋医学は、病気の症状を個別に対処し、また原因の除去を目標とします。例えば、ウイルスや細菌の感染によって熱が出ているとすると、熱に対しては、これを下げる「解熱剤」で対処し、その原因が細菌感染であれば、細菌を退治する「抗生剤」を用いて治療します。

一方、漢方治療の場合は、四種類の診察(四診)(ししん)を行って一人一人の「証」を決定し、その「証」にあわせて漢方薬を用いて治療します。

四診とは、望診(ぼうしん)―視覚による診察、聞診(ぶんしん)―聴覚による診察、問診(もんしん)―質問による診察、切診(せっしん)―触覚による診察を指します。このうち切診には、脈診と腹診とがあり、特に腹診というおなかの診察には特別な意義があるとして、長年の経験の積み重ねが体系化されています。すなわち、患者さんのお腹の状態は、病気に対する抵抗力の強さや全身状態、さらに、病気の状態の局所反応を反映すると考えられています。これらの診察法によって一人一人の「証」を診断しますが、この「証」は、漢方医学独自の言葉で、病気ではなく、患者さんの状態を診ているところが異なります。

「証」を診るということは、年齢や性別、体質のなどの遺伝的要素、環境因子など個人差が大きく反映された治療の指針となります。がん治療を受けている患者さんと一口に言っても、様々な状態であり、日によって「証」が違っていることもあります。こうした個人の状態を重んじ、それに応じた漢方薬を用いて治療するのが漢方医学の特徴と言えます。別の言い方をすれば、個人、個人の「証」は異なるので、オーダーメイド感覚な治療とも言えます。

漢方薬の特徴

漢方薬は、古来、中国から伝授され、日本国内で独自に発達した「漢方医学」の理論に基づいて用いられる治療薬です。食品に分類されている民間薬とは違い、医薬品であり、効果・効能はもちろん、品質・安全性も担保され、用法や用量も定められています。医師、薬剤師などの有資格者のみが取り扱うことができます。医療用漢方製剤は、1976年に大々的に収載され、現在、保険適応を有する漢方処方は148種類あります。

漢方薬の特徴はその成分にあります。単一成分の西洋薬と異なり、漢方薬は複数の成分から構成されており、一般的には、例えば、芍薬の根、桔梗の根、紅花、ミカンの皮である陳皮など、植物の根、花、実、葉、枝などを乾燥させたものからできています。また、牡蛎(ぼれい)というカキの貝殻や、セミの抜け殻の蝉退(せんたい)、ニカワつまりゼラチンである阿膠(あきょう)、硫酸ナトリウム(または硫酸マグネシウム)である芒硝(ぼうしょう)など、鉱石を削ったものや、動物が原料になることもあります。これらの植物や鉱物、動物からなる生薬を多いものでは20種類も、特定の配合で混ぜ合わせて作られたものが漢方薬です。製法や用法、用量などは、漢方医学に基づいてすべて詳細に決められています。

漢方薬と副作用

漢方薬も医薬品ですので、まれに副作用が見られることがあります。自然の生薬を材料として作られたものだから絶対に安全であるとは言えません。
例えば、調味料や甘味料などにも使われている、多くの漢方薬に含まれている甘草という生薬には、グリチルリチン酸という成分(商品名:強力ミノファーゲンC、 グリチロン)が含まれていて、血清中のカリウムの値が下がり、血圧の上昇やむくみなどの副作用がでることがあります。また、例えば、桂枝という生薬つまりシナモンを含む漢方薬によって、蕁麻疹がおきるなど、一種のアレルギー反応によって副作用が起こる場合もあります。服用中に下痢、腹痛、胃もたれなどの胃腸障害が出ることもあります。しかし、漢方薬は長い年月をかけて臨床経験を重ね、今日に伝えられたものですから、比較的副作用は少ないと言えます。

がん治療における漢方薬の役割

がん治療を受けている患者さんは、がん自体およびその治療によって、様々な全身および局所症状が現れ、その為に、体力ばかりでなく気力も低下し、さらには体の持つ生体防御反応も低下してしまう状況にあります。このような状態にある患者さんに対しては、不足してしまった体力や気力を補うことを目標にした「補剤」を中心にして、さらに、漢方医学的診断に基づいて、患者さんの体質、症状に応じた漢方薬を加え、治療を組み立てていきます。(下図参照)

図-がん治療における漢方薬の役割

治療の基本となる「補剤」には、補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯などがあります。それぞれの漢方薬の特徴は以下の通りです。

がん治療の基本となる補剤


さらに、漢方薬のランダム化比較試験(RTC)を目指すパイロット研究や基礎研究および実際の臨床において有用性が示されているがいくつかあり、それぞれがん治療においてしばしば用いられます。主なものを紹介します。

漢方薬

適用される症状

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

乳がんのホルモン療法時のホットフラッシュ

六君子湯(りっくんしとう)

がん化学療法による食欲不振、悪心・嘔吐

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

パクリタキセルによる末梢神経障害(しびれ)

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

パクリタキセルによる筋肉痛

麦門冬湯(ばくもんどうとう)

肺がん術後の遅延性咳

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

肝がん抑制効果と大腸がんの再発予防効果

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

イリノテカン療法による下痢に対する予防効果


がん治療における西洋薬と漢方薬の関係

がんの治療においては、たとえ、病変が消失したとしても、患者さんの症状が改善されなければ、治癒とは考えられません。がん治療における漢方の役割は、がんの根治的治療を主眼においた西洋医学と組み合わせることにより、がんおよびがん治療に伴う様々な症状を緩和し、患者さんの生活の質の維持、向上を図るところにあります。すなわち、漢方治療は、単独で存在するものではなく、西洋医学的治療とうまく連携をとることによって、より高いがん治療の効果を引き出すことが目標となります。

平成23年9月1日より、漢方クリニック(漢方医学センター診療部)では初診予約を始めました。受診ご希望の方は、慶應義塾大学病院「外来診療のご案内」をご参照ください。また、漢方医学センターについてより詳しくお知りになりたい方は、漢方医学センターのウェブサイトをご訪問ください。

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最終更新日:2012年5月11日
記事作成日:2012年4月3日

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