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最新の小児包茎の治療方針-これでもうママも悩まない- -泌尿器科-

はじめに

「包茎」とは、陰茎先端の亀頭が包皮という皮の部分に覆われ露出していない状態を言います(図-1)。小児におけるこの「包茎」は、養育者であるお母さま、お父さまを様々な正しい、そして正しくない情報が錯綜して悩ませます。おむつ交換や入浴時などに見る機会の多いのはお母さまですが、「異性の陰部のことなんかよくわからない!パパがしっかり見てあげてよ!」というお気持ちでしょう。一方、お父さまにとっても「おとなのことならまだしも、子どもの頃なんて覚えていないよ!」というのが正直なところではないでしょうか。そんななか、ご両親とも「おとなになってから包茎で悩ませたくない、治療が必要なら早くしてあげたい」というのが親心かもしれません。しかしながら、尿路や生殖器を専門に扱う我々泌尿器科医にとっても、実は「小児の包茎」は古くて新しい、そして今なお議論の尽きない永遠のテーマなのです。
今回は、このような「小児包茎に対する治療方針」について、最新の医学情報を踏まえて概説したいと思います。

図1


小児期の包茎は病気ではない!

1.亀頭・陰茎の発達

男児が出生した時、亀頭は包皮で完全に覆われ、さらに亀頭表面と包皮の内側はぴったりとくっ付いて剥がれない状態です(図-1)。包皮の出口(包皮輪)もきつく、あまり伸びないことが一般的です。これが乳児期から幼児期にかけて、亀頭表面と包皮内側の間に脱落した細胞や分泌物が垢として溜まり(恥垢と呼ばれ、白い塊として透けて見えることがあります)隙間ができるようになって剥がれてきます。学童期にはぴったりとくっ付いていた亀頭と包皮がしっかり剥がれ、さらに時々起こる勃起現象によってきつかった包皮輪も少しずつ引き伸ばされるようになります。
この時期の包皮輪の口径や伸展性には個人差があり、よく伸びるようになっていれば普段は亀頭が包皮に覆われていても、包皮を陰茎の根元に押し下げれば亀頭がしっかり露出するようになります(図-2)。このようになっていれば亀頭の表面もしっかり洗えるので清潔が保たれます。しかしながら、包皮輪の伸びが不十分で亀頭を露出することができないと、亀頭と包皮の間が不衛生なままとなったり、尿の飛びに影響が出たりと健康上の問題が生じることがあります。
第二次性徴の時期に入ると、男性ホルモンが活発化することにより亀頭や陰茎が急速に発達し、包皮も軟らかく伸びやすくなります。普段でも亀頭先端が次第に露出されるようになります。さらに、思春期後期以降は最終的に勃起をしていない時でも亀頭が露出した状態となります。
したがって、以上のような自然経過を考えると少なくても思春期までの包茎は病的なものではないのです。

図2


2.包皮の役割

それでは、包皮とはもともと男子にとって不要なものなのでしょうか?包皮は哺乳動物に数千万年以上前から存在し、今なお健在です。無駄で不都合な組織は徐々に退化・変化するとの進化論の立場からみれば、何らかの役割があるはずです。
まず、生殖活動の必要がない小児期においては亀頭を保護する役割を担っていると考えられます。そして、最近の医学論文では、包皮は男性陰部の重要な感覚をつかさどっていることが示されています。本来亀頭と包皮の知覚には大きな相違があるとされています。一般に誤解されているかもしれませんが、亀頭部にはそっと優しく触られる繊細な感覚を感じる神経は少なく、圧迫感や痛みなどの原始的で粗野な感覚を感じる神経が分布しています。一方、包皮輪やその内側にはマイスナー小体という鋭敏な感覚をつかさどる組織が豊富に認められます(図-3)。この鈍感な亀頭と繊細で敏感な包皮との組み合わせが、将来の正常な性行為や性感覚には必要と考えられるようになっています。
つまり、余剰に見える包皮部分も将来の性活動には重要かもしれないということです。

図3


どのような場合に治療が必要なのか?

このように小児期の包茎は決して病的なものではありませんので、基本的に治療は不要です。しかしながら、包皮輪がきつ過ぎると健康上の問題が生じることがあり、そのような場合に限って治療を行うことが一般的となっています。具体的には、以下のような場合です。

1. 排尿の妨げとなる場合:包皮輪がきつく狭い状態ですと尿がしっかり飛ばなくなることがあります。排尿時に尿が亀頭と包皮の間に溜まって、陰茎の先端が膨らむバルーニング現象はその1つの兆候です(図-4)。

図4

2. 亀頭包皮炎を繰り返す場合:包皮が容易に剥けず亀頭と包皮の間が洗えない状態でいると、不衛生となり細菌の繁殖により炎症を起こしやすくなります。陰茎は赤く腫れ上がり、膿が出たり排尿する時の痛みを伴うようになります。ただし、これは不潔な手で触ることなどの要因もありますので、外出後の手洗いを徹底することも重要です。

3. 尿路感染症を起こしやすい場合:水腎症や膀胱尿管逆流症といった尿路の疾患があるお子さんでは、尿路に細菌が侵入すると腎盂腎炎という重篤な感染症(高熱を伴い、繰り返すと腎障害を招きます)を起こしやすくなります。原因となる細菌は尿道口から侵入しますので、このような尿路感染症を起こしやすいお子さんでは亀頭部が不衛生となり排尿の妨げとなる包茎に対しては早くから積極的に治療することが推奨されます。

4. 嵌頓包茎を起こす場合:包皮輪がきついのに無理に亀頭を露出させると、きつい包皮輪で陰茎本体が締め付けられた状態となります(図-5)。この状態が長引くと(きつい指輪をつけた状態と同じです)、亀頭部は血行が悪くなり組織がダメになってしまいます。まず緊急的に陰茎の締め付けを解除しなければなりませんが、このような事態を繰り返さぬようきつい包皮輪への対処が必要となります。

図5


どのような治療が行われるのか?

包茎に対する治療は、以前では手術を行うのが一般的でした。しかしながら、最近では軟膏を塗って包皮輪を伸ばす治療が広く行われるようになり、良好な治療成績が医学論文で報告されています。

1.軟膏塗布治療

きつい包皮輪にステロイドホルモン含有軟膏(女性ホルモンや男性ホルモンが使われることもあります)を一日2回塗ってその伸展性を改善させる方法です。4~8週間継続すると80~90%以上のお子さんさんで包皮が剥け亀頭が露出できるようになります。ステロイド剤はコラーゲンの合成を低下させ皮膚を薄くする作用や炎症を抑える作用により包皮の伸展性を改善させるとされ、また、全身への副作用はないことが示されています。
さらに、包皮をやさしく陰茎の根元へと押し下げ、包皮輪に緊張をかけて少しずつ伸ばす包皮伸展訓練を同時に行うとさらに効果的となります。ただし、やみくもに無理に行うと包皮の出血や亀裂を生じ、後に包皮が硬くなったり、嵌頓包茎を引き起こすことがありますので専門医から十分な指導を受けて下さい。

2.手術治療

包皮輪を含めた余剰な包皮をリング状に切除する環状切除術が一般的に行われます。確かに亀頭を露出させるという目的においては確実な治療方法ですが、自制の困難な小児期には全身麻酔が必要となりますし、頻度は少ないものの尿道の損傷など合併症の可能性もあります。先に述べたように、ここで切除される余剰に見える包皮部分には最も鋭敏な感覚をつかさどる組織が含まれているので、将来の性感覚への影響も懸念されます。
ちなみに、現在でもなお男子の75%が環状切除術を受ける米国ではマスターベーション過多、フェラチオなどの過激な性行為が多い理由の1つとして手術に伴う性感覚の異常が指摘されています。さらに、男性の環状切除により女性の性行為や性感覚も変化することがあり、手術を受けていない自然な陰茎の男性との性行為の方が女性にとってもより長い快適な感覚が得られるとの意見もあります。
したがって最近では、手術治療は閉塞性乾燥性包皮炎という包皮輪が非常に硬く軟膏塗布療法では全く効果のないようなお子さんに限定して行われるようになっています。

おわりに

小児期の包茎は決して病気ではありません。したがって治療も健康上の問題が生じるごく限られた場合にのみ行われます。そして、将来の性活動なども考えると安易な手術は避けるべきと考えられます。
慶應義塾大学泌尿器科学教室では小児泌尿器科領域を専門とする診療グループが存在します。今回ご紹介した「包茎」だけではなく、腎移植を含めた様々な小児泌尿器科疾患に対する治療を最新の医学情報をもとに行っています。小児泌尿器科専門外来外部リンクは毎週水曜日と金曜日の午後に開設されていますので、お気軽にご相談ください。

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最終更新日:2011年6月1日
記事作成日:2011年6月1日

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