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ヒトパピローマウイルス(HPV)検査とHPV感染予防ワクチン -婦人科-

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染とは

ヒトパピローマウイルスは女性の生涯で50-80%が感染するといわれていて、感染が珍しいわけではありません。感染しても、そのほとんどが自覚症状もなく、身体の持つ抵抗力(免疫の作用)でウイルスが体外へ排除されてしまうと言われています。現在まで解明されていない機構により極一部の人はウイルスを排除できず、ウイルス感染が持続することで病気になると言われています。

HPVが引き起こす病気としては、疣や性器コンジローマ、喉頭乳頭腫などの良性病変や子宮頸癌、腟癌、外陰癌、喉頭咽頭癌、肛門癌、陰茎癌などの悪性腫瘍病変があります。女性の癌の場合、HPV持続感染に関連する発癌は約10%と見積もられています。特に子宮頸癌は世界で年間50万人が罹患しているといわれ、女性癌の中では3番目に多い癌であることから注目されています。

これまでの研究で、子宮頸癌の実に99%が、HPVの持続感染が原因で生じる異形成(前癌病変)を経て癌化することが明らかになってきました。HPVは現在100種類を超える型に分類されていますが、その全てが子宮頸癌の原因になるわけではありません。主に子宮頸癌発生に関連するHPVは13種類(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68)であるとされハイリスク型と呼ばれています。このほかに良性病変である疣やコンジローマの原因となる2種類の型(6、11)の感染が日常の臨床上で問題となります。

なお、これから説明するHPV検査は、癌化する能力を有するハイリスク型のHPVを検出することにより、癌化するリスクが高いか低いかを調べる検査です。また、子宮頸癌予防ワクチンは、ハイリスク型HPVの中でも癌での検出頻度が特に高い16型と18型の感染を予防するものです。

HPV検査

HPV検査にはグループ検査と型判定検査の2種類があります。いずれの方法においても子宮頸腟部から細胞を採取して検査を行うものです。

グループ検査とは子宮頸癌の発生に関連の深い13種類のHPV感染の有無を判定する方法です。13種のいずれかの型に感染していれば陽性と判定されますが、型を同定できるわけではありません。型判定検査は13種類のどの型に感染しているのかを検出する方法です。グループ検査は子宮頸癌細胞診検査にてASC-USと判定された場合の次のくわしい検査の一つとして保険適応が認められています。ASC-USとは「意義不明な異型扁平上皮細胞」と訳されますが、分かりやすく言うと、「異常として精密検査にまわすべきなのか、正常な所見として経過観察でよいのか判断に困る細胞」のことです。検診などで採取した検体の中には異常とも正常とも判定に困るものが出てきます。これがASC-USです。

従来はこのような疑わしい結果であれば、すべての人を精密検査にまわしていました。しかしながら、先ほど示しましたように子宮頸癌の99%はハイリスクHPVが原因です。顕微鏡で見て異常か正常か判定できないASC-USと判定されても、HPV検査をしてハイリスクHPVに感染していなければ癌化することはない、ということになります。このような場合、正常と判定し、精密検査は行わず通常の検診を定期的に受診することが推奨されます。一方、ハイリスクHPVが検出された場合、ASC-USであっても将来癌化する怖れがあるため、コルポスコープによる子宮頸部の観察と生検(バイオプシー)による精密検査が施行されます。

ただ、慶應義塾大学病院ではこのHPVグループ検査は現在のところ採用しておりません。子宮頸癌検診で細胞診の異常が指摘された場合には、ASC-USの場合を含めて婦人科腫瘍専門医が精密検査を全例で施行しています。これは、将来癌になる可能性の有無だけでなく、現在の正確な診断を下すことが二次検診施設としての役割と考えているからです。HPVグループ検査については今後の状況を鑑みながら導入するか否かを検討したいと考えております。

HPV型判定検査

一方、HPV型判定検査はグループ検査と異なり、どのHPV型が感染しているのかを調べる訳ですから、より精密な検査と言えます。ハイリスクHPV型とひとくくりでまとめても、それぞれのHPVは型により癌化しやすさが違います。したがって異形成と診断された患者においてHPV型判定を行うことは将来の発癌リスク評価や病変の管理に有効と報告されています。また、子宮頸部円錐切除術後の再発リスク評価においても有効との報告があります。

HPV型判定検査の臨床的有用性については今後も蓄積されていくことが予想されますが、わが国では研究用試薬として販売されているものが多く、新しい検査試薬が臨床試験として、その有用性について現在も調査されています。慶應義塾大学病院婦人科では平成22年10月より体外診断薬として厚生労働省から承認を受けているHPV型判定検査(クリニチップ)を導入しています。本試薬は平成23年5月に保険承認されました。

検査法

商品名

検査結果

費用

保険
適応

慶應病院
での検査

グループ
検査

HPV DNA「キアゲン」HC II

13種類のいずれかの感染有無を調べるもので、型判定不能

安い

あり

なし

型判定
検査

クリニチップ

13種類のいずれかの感染有無を調べるもので、HPV型判定を行う

高い

あり

あり

HPV型判定法の使用方法(図別紙)

図

組織診断でCIN1・2と判定された患者において、HPVハイリスク型といわれているHPV16,18、31、33,35,45、52,58の8種類が検出される場合には、厳重な経過観察が推奨されています。(産婦人科診療ガイドライン CQ205)年齢が30歳を超えた場合には自然退縮の頻度が低くなることから、厳重な経過観察が推奨されます。当科では、必ずコルポスコープや細胞診判定の状況で病変の広がりやその程度を推察し、クリニチップの結果単独ではなく、総合的な判断で観察期間を設定します。ただし、クリニチップの結果でハイリスクHPV陽性であると判明した場合には6ヶ月以内の子宮頸部のコルポスコープ検査および細胞診、それ以外は1年後の検査を推奨します。CIN2の経過が長い場合には、癌発生の予防という観点から蒸散術も推奨されます。このクリニチップ検査は組織診断にてCIN1・2と診断が確定された場合に保険適応で検査ができます。
クリニチップはCINに対して蒸散術や円錐切除術、さらには腺癌と診断されたものの、根治術を行っていない患者などの予後判定にも有用と考えられていますが、現在のところ研究レベルの段階です。これについては自費で検査を行うことは可能です。

HPV感染予防ワクチン

現在販売されているHPV感染予防ワクチンはHPV16,18型の感染予防に対するワクチン(サーバリックス)です。サーバリックスの使用はすでに世界106カ国で承認されています。HPV感染を予防することにより、将来の子宮頸癌発生を予防することを目的として使用されます。HPV16,18型だけでなく疣やコンジローマ発生に関連するHPV6,11型感染予防も可能なワクチン(ガーダシル)は世界122カ国で承認販売されていますが、我が国では承認申請中の段階にあります。

ワクチン接種時期については性交渉を始める前に行うことが理想とされ、9-16歳の時期に行うことが推奨されています。性成熟期の女性においても感染予防効果があることから接種することが望ましいとされています。このワクチンには治療効果は認められません。したがって、すでに子宮頸癌や異形成といった前癌病変の治療目的としては使用されません。慶應義塾大学病院では中学生までは小児科外来、それ以降の年齢では婦人科外来にて接種を行っております。

接種は6カ月の間に3回行います。ワクチンを接種しても子宮頸癌発生に対する予防効果は70%程度と見積もられており、20歳以降では引き続き子宮頸癌検診を受けることをお勧めしています。ワクチン接種の前にHPV型判定を受ける有益性はないことから推奨しておりません。

HPV感染予防ワクチンは非感染性HPV―VLP(virus like particle)と言われ、ウイルスが産生するL1タンパク質を化学的に合成した製品です。ウイルス感染性はありません。このVLPを筋肉内注射することで、ウイルス感染に対する抗体を誘導し感染を防御します。

ワクチン種類

2価HPVワクチン

4価HPVワクチン

HPVタイプ

HPV16,18型

HPV6,11,16,18型

期待される予防効果

子宮頸癌の発生予防

子宮頸癌およびコンジローマの発生予防

投与方法

3回 筋肉内注射(0,1,6ヶ月)

3回 筋肉内注射 (0,2,6ヶ月)

国内承認状況

2009年12月発売

承認申請中

HPVワクチンの種類

関連リンク

HPV検査ページ:
http://www.sekisuimedical.jp/business/diagnostics/others/hpv/index.html外部リンク

一般向け子宮頸がん情報ホームページのリンク

最終更新日:2011年6月15日
記事作成日:2011年1月4日

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