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クローン病

くろーんびょう

概要

クローン病は大腸や小腸の腸管に炎症や潰瘍を引き起こし、下痢、腹痛などの腹部症状をきたす病気です。はっきりとした原因は不明ですが、遺伝的な要因や食事や腸内細菌などの環境的な要因に免疫機能の過剰・異常が生じ、病気が発症、持続するものと考えられています。環境因子では脂質や糖質の高摂取量との関連が指摘されており、わが国の研究でも脂肪と砂糖を多く含むファースト・フードとの関連が知られています。また喫煙も病気の発病や再び病状が悪化するリスクとなることが知られており、患者さんには禁煙をすすめています。

クローン病の患者数は年々増加しており、2014年現在で現在約4万人以上の患者さんがいると推定されています。慶應義塾大学病院では2015年現在約640名の患者さんが定期的に通院しています。海外では男女差はありませんが、日本では男性患者さんの割合が多く、当院通院中の患者さんでは男女比が3:1になっています。発症年齢は男性で20代から30代前半、女性では10代後半から20代に好発することが推測されています。

クローン病は厚生労働省により難病に指定されているため、非常に深刻な病気という印象をもたれるかもしれません。特に腸管の狭窄、膿瘍(お腹の中に膿がたまること)、瘻孔(腸の炎症が進行して腸管と腸管、あるいは腸管と他の臓器との間に管状の欠損ができること)などの合併症をきたすことも多く、病気になってから10年以内に半数以上の患者さんが1回は手術を必要とします。しかしクローン病は腸管が狭窄や瘻孔などを形成する前に治療介入することにより将来的には入院や手術になるリスクを下げることが可能であり、よくなった状態を維持(寛解維持)できれば、日々の生活にあたっては大きな制限を受けることなく、一般の方と同じライフスタイルを送ることが可能です。

症状

臨床症状としては、下痢・腹痛といった腹部の消化器症状が中心ですが、発熱や体重減少などの全身症状が主な訴えであることも少なくありません。また肛門病変である痔ろうや肛門周囲膿瘍が初発症状であることも多く、約1/3の患者さんは肛門病変が最初に生じるとされています。したがって若年者でこれらの病変をみた場合、クローン病を念頭に置く必要性があります。また口内炎、関節炎、皮膚症状(結節性紅班、壊疽性膿皮症)、眼症状(虹彩炎)などの腸管以外の臓器に合併症(腸管外合併症)を生じることもあります。

診断

通常は小腸と大腸が侵されることが多く、小腸型、小腸大腸型、大腸型の3型に分類されます。欧米のクローン病患者さんに比べて日本の患者さんは大腸型が少ないことが知られていますが、これは小腸病変を検索するための検査法が日本のほうが施行しやすく、小腸の病変を検出できることが多いためであると考えられています。当院では小腸大腸型が多く、大腸型は約10%です。

  1. 血液検査
    病気の重症度や病勢を把握するのに重要な検査です。血液検査では1)炎症の程度を把握(CRP、赤血球沈降速度(赤沈、血沈)、白血球数)、2)貧血の程度を把握(ヘモグロビン値、赤血球数)、3)栄養状態(総タンパク、アルブミン値)を把握することが可能です。ただし潰瘍性大腸炎では炎症が軽症~中等症ではCRPが上昇しないことも多く、他の検査や症状などを合わせて総合的に判断します。

  2. 大腸内視鏡検査・バルーン小腸内視鏡
    クローン病で最も病変が多くみられる回盲部(回腸末端と盲腸)の炎症状態を把握するのに有用な検査法です。大腸粘膜の炎症の範囲や程度を判断したり、よく似た症状をきたす他の病気と区別するのに必要な検査です。通常の大腸内視鏡では小腸の一部しか観察ができないため、最近は小腸の深部まで観察可能なバルーン小腸内視鏡検査が開発され、大腸と小腸(大腸内視鏡よりも広範に小腸の観察が可能)を同時に観察することができます。

    必要に応じて生検(顕微鏡で調べるために、病変の一部の組織を切り取ること)を行うこともあります。生検による組織検査は診断基準の1つに挙げられているので、発症した際には必要な検査です。また治療により症状が改善されていても粘膜の炎症が改善されていない場合も多いため、炎症が消失していることを内視鏡で確認することもあります。

  3. 小腸造影検査
    小腸病変の有無を確認するために経口から造影剤を飲んでもらい体位変換を繰り返し、造影剤を腸管に流して観察する方法です。場合によっては鼻から細いチューブをいれてチューブより造影することもありますが、当院では原則としてチューブをいれずに検査しています。瘻孔や狭窄を観察するには必要な検査です。

  4. カプセル内視鏡
    患者さんに小型カメラを内蔵したカプセル状の内視鏡を飲み込んでもらい、消化管を通過しながら画像を撮影し、記録装置に転送することによりクローン病の小腸病変を確認する方法です。腸管を洗浄するための下剤服用の必要がなく、検査による苦痛がないことは利点ですが、狭窄がある場合にカプセルが滞留(腸管に留まってしまい肛門から排出されなくなってしまうこと)する危険があるので、あらかじめ撮影用のカプセル内視鏡と同じ大きさで長時間腸にとどまっていると溶けるカプセル(パテンシーカプセル)を服用してもらい、カプセルが通過するのを確認してから実際のカプセル検査を施行しています。(図1)

  5. MRエンテログラフィー
    大腸内視鏡の前処置で使用する下剤を用いて腸管を伸展させてから、MRI撮影をおこなうことにより粘膜炎症や潰瘍病変、狭窄、瘻孔病変を評価する検査方法です。小腸造影検査のような放射線被曝がない検査法であり、当院では積極的にMRエンテログラフィーによる検査をクローン患者さんに取りいれています(図1)。
図1.カプセル内視鏡(左)とMRエンテログラフィー(右)

図1.カプセル内視鏡(左)とMRエンテログラフィー(右)

治療

厚生労働省難病研究班の治療指針を簡略化したものを図2に示します。栄養療法と薬物療法は相補的に行うことにより治療効果を高めることが可能です。

図2.クローン病の内科治療

図2.クローン病の内科治療

  1. 栄養療法
    厚生労働省の治療指針において基本治療としてあげられています。経口の食事摂取を中止し、腸管の安静ならびに腸からの食餌抗原(特定されてはいませんが、食物の中にあり腸を刺激し炎症を起こすと考えられる物質)の除去を図ります。完全静脈栄養(すべての栄養を太い静脈に入れた点滴から入れる)と経口/経管栄養(栄養剤を飲む/鼻から入れたチューブを通して胃に入れる)の2種類があります。腸閉塞、腹腔内膿瘍、重篤な肛門病変、大量出血など腸を安静にしなければいけないときは完全静脈栄養が選択されますが、その他の例では成分栄養剤であるエレンタールを用いた経口/経管栄養療法が行われます。最近ではライフスタイルの変化やエレンタールの味の改善やボトルの改良などが進み経口で2-3包/日を摂取している患者さんも多くいらっしゃいます。

  2. 薬物療法
    まずは、5ASA製剤が投与されます。栄養療法や5ASA製剤にて寛解導入できない症例にはステロイドの投与を検討しますが、大腸病変が主体の症例や重症例では早期からステロイド併用を考慮します。また肛門病変合併例にはフラジールまたはシプロキサンなどの抗生物質を使用します。すぐに再び病状が悪化する例やステロイド離脱困難例では寛解維持を目的に少量の免疫調節剤(ロイケリンまたはイムラン)の使用を検討します。

    ここまでの治療で十分な効果が得られない中等症~重症の症例を有する患者さんに対して、抗TNF-α抗体であるレミケードの点滴投与やヒュミラの皮下注射投与を使用します。いずれも使用した約70%の患者さんに対して治療効果が比較的速やかにみられます。当院ではこれらを現在200名以上の患者さんに投与しています。副作用として投与時のアレルギー反応のほか、特に結核や真菌に対する免疫能の低下があげられますが、当院では副作用で中止する患者さんの数はこれまで非常に少数です。ヒュミラは皮下注射で用いられ自己注射も可能です。自己注射の指導は初回および定期的に看護師の指導がありますので心配はいりません。レミケードとヒュミラの臨床試験での成績はほぼ同等と考えられており、アレルギー反応の有無や生活スタイルに合わせて選択することが可能です。
    また血球成分吸着・除去療法が大腸病変を有するクローン病に使用可能です。薬物療法と併用で使用されています。

  3. 外科的治療・内視鏡下狭窄拡張術
    頻度は高くありませんが、穿孔、中毒性巨大結腸症、がんの合併、生命にかかわる重篤な出血は手術が必要です。腸閉塞をきたした腸管狭窄は手術適応ですが、炎症の強い時期には腸管のむくみが狭窄の原因となっている場合があり、栄養療法や薬物療法により炎症が収まると狭窄が軽くなることもあります。また最近では内視鏡を用いたバルーン拡張術(風船を膨らまして腸の狭い部分を広げる)も積極的に試みています(図3)。手術を行う際には、術後の癒着の軽減や患者さんのQOL(生活の質)を考慮し可能な限り腹腔鏡下手術を選択し腸管切除は最小限にとどめ狭窄形成術を併用しています。
図3.狭窄病変に対する内視鏡的バルーン拡張

図3.狭窄病変に対する内視鏡的バルーン拡張

生活上の注意

潰瘍性大腸炎の項目を参照してください

慶應義塾大学病院での取り組み

難治の患者さんのために多くの治験や臨床試験を行っています。

当院ではクローン病に対する新しい治療法(治験)を積極的に行っています。また我々が独自に開発し、従来の治療法と異なる機序を有する治療薬の治験にも取り組んでいます。詳細は消化器内科ホームページ外部リンクを参照ください。

妊娠・出産を希望される若い患者さんへ

当院はクローン病で治療を継続しながら妊娠・出産された患者さんを多く経験しており積極的に取り組んでいます。妊娠・分娩に関する不安・疑問点などがありましたら主治医・医療スタッフにご相談ください。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2016年10月21日

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