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原発性硬化性胆管炎(PSC)

げんぱつせいこうかせいたんかんえん

概要

原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis: PSC)は、肝臓内および肝臓外を走る大小の胆管に炎症が生じ、その結果胆管の狭窄や閉塞を起こし胆汁が流れにくくなる進行性の胆汁うっ滞疾患で、最終的には肝硬変、肝不全に進展します。胆管炎、胆管悪性腫瘍、胆道手術や外傷による胆管狭窄、総胆管結石による胆管炎などは2次性硬化性胆管炎として原発性硬化性胆管炎とは区別されます。

原発性硬化性胆管炎の原因は未だ不明ですが、何らかの自己免疫性機序や腸内細菌を介した腸肝相関が病態に関与していると考えられています。若年や中年の男性に多く、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併することが多いことを特徴とします

2007年の全国疫学調査によると国内の患者さんの数は1200名前後、人口10万人あたりの有病率は0.95程度と推測されますが、実際の患者数はもう少し多いと考えられています。欧米諸国で近年発症率の増加が報告されていること、画像検査の進歩により診断率が向上していることより、今後日本においても患者さんの数は増加することが予想されています。男女比は男性にやや多く、20歳代と60歳代にピークがあります。

症状

初期には無症状であることが多いですが、病状の進行とともに全身倦怠感、疲労感、皮膚のかゆみなどの症状が出現し、黄疸がみられるようになります。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併することが多いことから、下痢、血便、発熱、腹痛といった消化管症状で見つかることもあります。

原発性硬化性胆管炎は高率に潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患を合併することが知られています。欧米諸国では70-80%に炎症性腸疾患を合併し、そのほとんどが潰瘍性大腸炎です。一方、日本においては炎症性腸疾患の合併率は約30%前後と欧米諸国より低く、2012年の全国調査では34%と報告されています。また一般的に原発性硬化性胆管炎に合併する潰瘍性大腸炎は症状が軽く、治療によく反応することが知られています。さらに内視鏡の所見から潰瘍性大腸炎とは診断されない例も多く、原発性硬化性胆管炎関連腸炎や分類不能型腸炎として診断されることもあります。また、長期間の胆管の炎症に伴い胆道がんを高率に合併することが知られており、2012年の全国調査では7.1%と報告されています。

診断

原発性硬化性胆管炎では、次のような臨床検査値の特徴があります。

  1. ALP, γ-GTPの上昇
    肝機能検査では、ALP, γ-GTPなどの胆道系酵素が上昇します。特にALPは必ず上昇するため、診断基準の項目の一つになっています。現在のところ原発性硬化性胆管炎に特異的な自己抗体は発見されておらず、原発性胆汁性胆管炎に特徴的な抗ミトコンドリア抗体は陰性です。一部の症例においてMPO-ANCAが陽性となることが知られています。
  2. 画像所見
    内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)やMRI膵胆管造影(MRCP)検査により、原発性硬化性胆管炎に特徴的な肝内、肝外胆管の炎症に伴うびまん性の壁不整や狭窄がみられます。さらに進行すると胆管全体に狭窄と拡張が混在する、いわゆる数珠状変化がみられるようになります。
  3. 肝臓組織検査
    病気の初期は特徴的な所見がありませんが、進行すると胆管周囲の同心円状の層状線維化(onionskin lesion)がみられます。ただし病変は不均一に存在するため、一部の組織を採取する針生検では特徴的な所見を得られないことがあります。

治療

現在のところ、原発性硬化性胆管炎に対する根本的な治療は肝移植の他にはなく、薬物による治療法には確立されたものがないのが現状です。ウルソデオキシコール酸(商品名ウルソ)には胆汁分泌促進作用や肝細胞保護作用があり、様々な胆汁うっ滞性疾患や慢性肝疾患で汎用されています。原発性硬化性胆管炎に対しても第一選択の薬剤となっており、2012年の全国調査でも81%の症例で投与されていました。原発性硬化性胆管炎に対するウルソデオキシコール酸の有効性について、多くの検討において血清ALPの改善効果がみられますが、実際患者さんの予後を改善するかについては意見が分かれています。また保険適用を超えるような高用量のウルソはかえって予後を悪化させることも報告されており、今後のさらなる検討が必要です。

また脂質異常症の治療薬であるベザフィブラート(商品名ベザトール)の原発性硬化性胆管炎に対する有効性も報告されています。報告では胆道系酵素の改善のみで、組織学的な改善や画像診断上の改善を促すものではありませんが、ウルソ治療で十分な効果が得られなかった症例でも一定の改善効果がある点が注目されています。現時点ではベザフィブラートの胆汁うっ滞性疾患への保険適用はなく、今後の大規模試験の結果が待たれます。一方、長期的な炎症の結果みられる大きな胆管の狭窄による胆汁うっ滞に対しては、内視鏡を用いたバルーン拡張術が行われます。原発性胆汁性胆管炎と同様に肝硬変へと進展すると、それぞれの症状にあわせた肝硬変に対する治療が必要になります。さらに肝不全へ進行した場合には、肝移植が唯一の治療法になります。

慶應義塾大学病院での取り組み

前述のとおり原発性硬化性胆管炎は遺伝因子、免疫学的因子、環境因子など複合的な要因が病態の形成に寄与する多因子疾患と考えられていますが、近年その要因の一つとして腸内細菌叢の関与が注目されています。原発性硬化性胆管炎の臨床的特徴として、高率でIBD(炎症性腸疾患)を合併することが広く知られており(欧米60-80%、アジア30-50%)、この事実からも病態に腸肝相関が関与することが予想されます。実際、海外を中心に腸内細菌を標的とした抗生物質内服治療の前向き臨床試験が行われ、メトロニタゾールやバンコマイシンによる血清ALP値の有意な低下が報告されています。
現在当院において原発性硬化性胆管炎の患者さんを対象として、腸内細菌叢を標的とした基礎的・臨床的検討を行っていますのでご興味がある方は消化器内科外来(研究責任者 中本伸宏)までご連絡ください。

文責: 消化器内科外部リンク
最終更新日:2016年9月6日

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