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心アミロイドーシス

しんあみろいどーしす

概要

アミロイドーシスとは、原因となる異常なタンパク質が、心臓、肺、肝臓、脾臓、胃・腸、腎臓などの臓器に沈着して、いろいろな臓器の機能が低下し発病する病気のことです。原因のタンパク質の種類やアミロイドの沈着する臓器は病気によって異なります。
厚生労働省特定疾患アミロイドーシス調査研究班による新分類によると、大きく分けて二つに分類されます。 I.全身のいろいろな臓器に沈着する「全身性アミロイドーシス」と、 II.ある臓器のみに沈着する「限局性アミロイドーシス」になります。さらに、原因となるアミロイド・タンパク質により細かく分類されます(表1 アミロイドーシスの分類)。

表1 アミロイドーシスの分類 (厚生労働省特定疾患調査研究班新分類による)

アミロイドーシスの病型

アミロイド蛋白

前駆体蛋白

I 全身性アミロイドーシス

1.免疫細胞性アミロイドーシス

 1)ALアミロイドーシス

AL

L鎖(κ、λ)

 2)AHアミロイドーシス

AH

Ig γ

2.反応性AAアミロイドーシス

AA

アポSAA

3.家族性アミロイドーシス

 1)FAP* I

ATTR

トランスサイレチン

 2)FAP II

ATTR

トランスサイレチン

 3)FAP III

AApoA 1

アポA 1

 4)FAP IV

AGel1

ゲルソリン

 5)家族性地中海熱(FMF)AA

アポSAA

 6)Muckle-Wells 症候群

AA

アポSAA

4.透析アミロイドーシス

Aβ2M

β2ミクログロブリン

5.老人性TTRアミロイドーシス

ATTR

トランスサイレチン

II 限局性アミロイドーシス

1.脳アミロイドーシス

 1)アルツハイマー型認知症(ダウン症候群)

アミロイド前駆体蛋白

 2)アミロイドアンギオパチー

アミロイド前駆体蛋白

 3)遺伝性アミロイド性脳出血(オランダ型)

アミロイド前駆体蛋白

 4)遺伝性アミロイド性脳出血(アイスランド型)

Acys

シスタチンC

 5)プリオン病

Ascr

プリオン蛋白

2.内分泌アミロイドーシス

 1)甲状腺髄様癌

Acal

(プロ)カルシトニン

 2)II型糖尿病・インスリノーマ

AIAPP

LAPP(アミリン)

 3)限局性心房性アミロイド

AANF

心房ナトリウム利尿ペプチド

3.皮膚アミロイドーシス

AD

ケラチン?

4.限局性結節性アミロイドーシス

AL

L鎖(κ、λ)

*FAP:家族性アミロイドポリニューロパチー

現在のところ、免疫細胞性アミロイドーシス(ALアミロイドーシスなど)、家族性アミロイドーシス(家族性アミロイドポリニューロパチーなど)及び 老人性TTR型アミロイドーシスが特定疾患治療研究事業による医療費公費負担の対象疾患となっています。原発性アミロイドーシスの有病率は人口10万人当たり平均0.45人(昭和52年の調査)であり、まれな病気です。
これらの病気のうち、心臓にアミロイドが蓄積し、心臓の機能が障害された状態を「心アミロイドーシス」といいます。

症状

心アミロイドーシスの主な病態は、心筋細胞がアミロイドに置き換わることにより、心室の壁が厚くなり広がる能力が低下し、さらに病状が進行すると収縮する力も落ちます。その結果、治療が困難な心不全となります。また、刺激伝導系(しげきでんどうけい)にアミロイドがたまるとこともあり、いろいろな不整脈も起こります(表2 心アミロイドーシスの症状)。
心アミロイドーシスはこれらの全身性アミロイドーシスが部分的に現れた症状であり、沈着するアミロイドの種類によって臨床所見や予後が違います。一般に、心アミロイドーシスのなかで主な原因となるAL型アミロイドでは、心不全を起こした後には予後が6ヶ月~12ヶ月と言われております。しかし、予後は、個々の患者さんによって随分と違いがありますので一概には言えません。

表2 心アミロイドーシスの症状

障害される臓器

症状

心筋細胞

心臓拡張障害(しんぞうかくちょうしょうがい)、収縮障害(しゅうしゅくしょうがい)、
心不全(しんふぜん)

心臓刺激伝導系

不整脈(ふせいみゃく)

声帯

嗄声(させい)

消化器

巨舌(きょぜつ)、下痢(げり)

神経

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)、末梢神経障害(まっしょうしんけいしょうがい)、起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)

肝臓・脾臓

肝脾腫(かんぴしゅ)


症状

診断

(1) 症状の確認

アミロイドの症状に特有のものはありませんが、表2 心アミロイドーシスの症状 を参照しながら、以下の検査を進めます。

(2) 胸部レントゲン像

心拡大を認める場合もあります。また、心不全を呈する患者さんでは、心拡大、肺うっ血、胸水を認めます。

(3) 採血検査

AL型アミロイドーシスでは、しばしば血清中の単クローン性γ-グロブリンや、尿中のBence Jones(ベンスジョーンズ)タンパクを認めることがあります。AL型のアミロイドーシスでは、「心筋トロポニン」、「プロBNP」が患者さんの予後を予測する重要な血液検査所見と言われ始めています。

(4) 心電図

軸偏位、脚ブロック、低電位などといった心電図の異常所見が認めます。さらには、アミロイドが洞結節へ沈着することで、洞不全症候群や、房室ブロックを認めます。さらに、心房筋に沈着すると心房細動を認めます。また、心室筋にアミロイドが沈着すると、非常に危険な心室性の不整脈をみとめることもあり、心アミロイドーシス症例にて突然死の原因となることがあります。

(5) 心エコー検査

心臓エコー検査では、左心室壁が厚くなり、心房が大きくなります。また、心アミロイドでの特徴的な所見としては、心室壁内にキラキラと顆粒状(かりゅうじょう)の輝度が増加します。
左室流入血流のドップラーエコーでは、拡張障害(かくちょうしょうがい)が認められ、心ファブリー病の重症度と関係があります。

心肥大はこの病気を疑うべき手がかりです。さらに、心室筋拡張能が収縮能に比較し早期に障害され、この拡張能の障害の程度は、心アミロイドーシスの心筋肥大の程度と関係があります。この病気は、予後が不良であるため、早期診断・治療が非常に重要です。(図1 心アミロイドーシスの心エコー像) (参考文献 4)


図1 心アミロイドーシスの心エコー像

図1 心アミロイドーシスの心エコー像

(6) 心臓MRI

近年、心臓MRIは、高い空間分解能を有し、1回の検査で心臓の動きや、血液の流れの評価、そして心筋の構造を評価が行える優れた画像診断方法であり、循環器画像診断の中心的役割を果たすようになりつつあります。
心アミロイドーシスにおける、心臓MRI検査では、遅延造影において広範な内膜下が造影されてきます。この造影像は、心アミロイドーシスに特徴的なパターンです。さらに、心臓に沈着しているアミロイド・タンパクの分布や程度と一致しています。
左心室だけでなく右心室も含めた、心筋内膜下を中心とする遅延造影所見は心アミロイドーシスに特徴的であり診断に有用です。(図2 心アミロイドーシスのMRI像) (参考文献 5)


図2 心アミロイドーシスのMRI像

図2 心アミロイドーシスのMRI像

(7) 心筋生検

本症の確定診断は心筋生検(しんきんせいけん)によります。心筋生検とは心臓カテーテルにより心筋の組織を一部採取し、顕微鏡で観察したりウィルス検査やタンパク質を調べたりする検査のことです。アミロイドは心筋全体に均一に分布するため、心筋生検にてアミロイドが認められれば、ほぼ100%診断が確定されます。
心筋生検のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色では、アミロイドーシスは心筋細胞が無構造な線維として置き換わります。Congo red染色では、赤褐色を認めます。偏光顕微鏡下で apple green と呼ばれる緑色を示し、本症に特徴的です。さらに、最近では、DFS(Direct fast scarlet)染色でCongo red染色よりも、はっきりと分かるようになりました(図3 心アミロイドーシスの病理像)。


図3 心アミロイドーシスの病理像

図3 心アミロイドーシスの病理像
(左上:HE染色弱拡大、右上:HE染色強拡大、左下:Congo red染色、右下:DFS(Direct fast scarlet)染色)

しかし、心エコーで心アミロイドーシスが強く疑われ、他の臓器でアミロイドーシスの診断がつけば、心筋生検は必須ではありません。全身性アミロイドーシスのアミロイドは、脳以外の全身諸臓器に沈着するため皮膚、甲状腺、舌などで沈着が疑わしい部位があれば生検いたします。上記以外にも、内視鏡による十二指腸や直腸生検、腹壁の脂肪生検が行われることもあります。

治療

透析性アミロイドーシスや内分泌性アミロイドーシスなどの、他の病気が原因で発症する「続発性アミロイドーシス」では、原因となる病気の治療により改善を期待できます。しかし「原発性アミロイドーシス」に対する根本的な治療は、現在探索中の段階です。
多くの場合は、各臓器における機能を悪くさせない治療や、症状を和らげる対症療法(たいしょりょうほう)が中心となります。しかし、家族性アミロイド・ポリニューロパチーに対し肝臓移植を行うなど、病気の種類によっては原因に対する治療が可能となってきています。
心アミロイドーシスに関しても、現在のところ特効的な治療法は存在しておりません。心不全に対しては、利尿剤を中心とした治療が行われますが、明らかな改善は期待できません。心アミロイドーシスの患者さんでは血圧が低い傾向ですので、心不全の治療薬でもあるβ遮断薬やACE阻害薬、アンギオテンシンll受容体拮抗薬を慎重に投与しないといけません(表3 心アミロイドーシスの治療法)。
心電図で、洞不全や房室ブロックを呈する場合は「永久ペースメーカー」を、また致死性の不整脈がある場合は「植込み型除細動器」の治療を行うこともあります。

表3 心アミロイドーシス(原発性)の治療法

症状

治療方法

【根本治療】

現在、確立された治療法はありません

【対症療法】

心不全

利尿剤、β遮断薬、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬

洞不全、房室ブロック

永久ペースメーカー

致死的な不整脈

植込み型除細動器

【新しい治療法】

AL型アミロイドーシス

MP療法(メルファラン、プレドニゾロン)、デキサメタゾン大量用法、
インターフェロン療法、自家造血幹細胞移植

AA型アミロイドーシス

サイトカインを標的とした最新の抗リウマチ薬


AL型の心アミロイドーシスに対しては、MP療法(メルファラン、プレドニゾロン)療法があります。MP療法は、外来通院で可能です。MP療法により血中M蛋白、アミロイド沈着が減少するだけでなく、臓器障害の改善、生存期間の延長が期待できるといわれています。そのほかにも、デキサメタゾン大量療法やインターフェロン療法、自家造血幹細胞移植などがあります。
しかし、注意しないといけないのは、早期に発見し治療を開始しないと、治療が有効でないことです。心アミロイドーシスは、ほとんどは心筋細胞にアミロイドが沈着し心肥大を起こします。そのため、「心肥大はこの疾患を疑うべき所見の第一歩」であると考えます。早期診断し、治療を開始することが、この病気で非常に重要です。

生活上の注意

アミロイドーシス(原発性)は、完全な治療法はありません。心アミロイドーシスで心不全などの症状が進んだ場合には、一般的な心不全の注意と一緒になります。すなわち、塩分制限や過度な運動を避けたり、感染を避けたりすることが重要となります。

慶應義塾大学病院での取り組み

もし少しでも、心アミロイドーシスが気になるようでしたら、お気軽に慶應大学病院循環器内科外来へ相談して下さい。当病院では、心アミロイドーシスの診断法として、心臓エコー検査、心臓MRI検査、アイソトープ検査などをすることが可能です。また、心アミロイドーシスの診断として、心臓カテーテル検査および心筋生検も可能です。
心筋生検の診断として、他の病院とも連携を取り、心アミロイドーシスの診断を確実なものとしております。他の病院の方でも、気軽にご相談ください。
また、心アミロイドーシスを全身病の一部と考え、腎臓内科、消化器内科、血液内科、神経内科などの他の内科外来と綿密に連携を取りながら、診断および治療を進めてゆきます。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

  1. 難病情報センター「アミロイドーシス」外部リンク
  2. Merlini G、Bellotti V:Molecular mechanisms of amyloidosis. N Engl J Med 349:583-596,2003
  3. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 アミロイドーシスに関する調査研究班「アミロイドーシス診療ガイドライン2010」外部リンク
  4. 小山 潤:特定疾患アミロイドーシスの心エコー: 心エコー Vol 9,No 6
  5. 佐久間肇,加藤真吾:心臓MRIと冠動脈MRA. Thrutic Research vol.30 no.7 2009

文責: 循環器内科外部リンク
最終更新日:2014年9月18日

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