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ホーム > 病気を知る > 肺と気道の病気 > リンパ脈管筋腫症(LAM)

リンパ脈管筋腫症(LAM)

りんぱみゃっかんきんしゅしょう

概要

リンパ脈管筋腫症は、その英語名のLymphangioleiomyomatosisを略してLAM(ラム)と呼ばれます。LAMは、平滑筋細胞に似た異常なLAM細胞が、肺やリンパ節や腎臓などで比較的ゆっくり増殖する良性の腫瘍性の病気です。その結果、肺には嚢胞(のうほう)が多数できます。LAMは、ほとんどが妊娠可能な年齢の女性に起こります。LAMの患者さんは人口100万人あたり約1.9~4.5人と推測されています。結節性硬化症という病気に合併する場合(結節性硬化症に合併したLAM)と、単独で発生する場合(弧発性LAM)があり、2003年から2005年に行われた日本の疫学調査では、83.8%が弧発性LAMでした。2015年度からLAMは指定難病の対象となっています。

原因

結節性硬化症では、がんを抑制する遺伝子であるTSC1あるいはTSC2の異常を認めます。その結果、細胞の成長・増殖にかかわるラパマイシン標的タンパク質(mTOR)経路の持続した活性化を認めて、過剰な増殖能力をもつLAM細胞が作り出されると考えられています。また弧発性LAMにおいても、TSC2遺伝子異常が検出されると報告されています。現在TSC遺伝子の検査を通常行っている施設はありませんが、慶應義塾大学病院では、特殊な事情がある場合には、自施設あるいは他施設と連携してTSC1TSC2遺伝子検査を行うことがあります。

症状

LAM細胞が増殖している肺では、正常な肺が壊れて嚢胞ができますので、さらに進行すると、「閉塞性換気障害」(息を吸って肺の中に貯まった空気を十分に吐き出せなくなるという、空気の出し入れが悪い状態)になり、長年の間に徐々に呼吸が苦しくなります。肺が破れて呼吸した空気が漏れると、「気胸」という状態になり急に胸の痛みや息苦しさを起こす場合があり、気胸を繰り返すことも多いです。リンパ管から脂肪を含んだリンパ液が漏れて胸部や腹部にたまる「乳び胸水」「乳び腹水」や、血痰で症状が始まり診断されることもあります。中には無症状で、腹部の腫瘤や肺の嚢胞を健診などで偶然発見される人もいます。

リンパ脈管筋腫症

診断

喫煙歴のない妊娠可能な年齢の女性で、胸部CT検査で多発する嚢胞がみられ、気胸を繰り返したり徐々に息苦しさが悪化したりする場合に、LAMの疑いがあります。さらに腎臓に腎血管筋脂肪腫という腫瘍や、乳び胸腹水がみられることもあります。また先に結節性硬化症と診断された3~4割の患者さんにLAMを認めると報告されていますので、全身の検索の結果、LAMと診断されることもあります。しかし、LAMのように肺に嚢胞ができる病気として、ほかにも主に喫煙により肺が壊れるCOPD/肺気腫や、嚢胞ができるほかの肺の病気があるため、上記を除外することがLAMの診断や指定難病認定の基準でも必須とされています。そしてLAMの難病認定としての確定診断には、可能であれば肺組織や乳び胸腹水中のLAM細胞を採取して、LAM細胞を顕微鏡で確認したり、LAM細胞に特徴的なタンパクがみられるかを染色して確認すること(病理学的診断といいます)が推奨されています。ただし、病理学的診断がなくても、LAMを疑う所見などの一定の条件がそろえば臨床診断例として難病認定されます。

治療

「閉塞性換気障害」という肺の機能が低下して呼吸が苦しい場合は、気管支拡張薬の処方を行うこともあります。また試験的にホルモン療法などが用いられることがあります。進行して呼吸不全となった場合は、酸素の吸入を行い、重症の場合には肺移植の対象にもなります。一方、LAMの病気のメカニズムが徐々に解明されて、上記のmTOR経路の持続した活性化が病気の発症や進行に重要であることが分かってきました。2010年までに、シロリムスというmTOR経路を抑制する薬の有効性を評価する臨床試験が米国を中心に日本も参加して行われ、シロリムスはLAMによる肺機能の低下を防ぐ作用があることが報告されました。さらに日本国内の臨床試験でも同等の効果と安全性が確認され、2014年7月に薬事承認され、同年12月より日本でも処方が可能となりました。このシロリムスには、肺機能低下を防ぐ作用に加えて、乳び胸腹水を減少させる効果や、腎血管筋脂肪腫を縮小するなどの効果も報告されています。ただし、シロリムスによる治療は、様々な副作用の可能性もあり、患者さんによって事情も異なるため、担当の医師とよく相談のうえで治療方針を決めることが必要です。

生活上の注意

喫煙者であれば禁煙は必要です。喫煙により肺嚢胞が増大し肺機能低下を助長する恐れがあります。乳び胸腹水を認める場合は、脂肪を制限した食事(脂肪制限食)を摂るように生活指導を行います。また経口避妊薬や妊娠による女性ホルモンの増加が病気を悪化させる可能性があります。妊娠、出産などに関しては専門家に相談しましょう。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院呼吸器内科では、シロリムスの使用が国内で承認を得た後も、引き続き最先端の医療の提供に努めています。気管支拡張薬の処方や酸素療法などの一般的な治療も継続して行っています。

さらに詳しく知りたい方へ

リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)外部リンク (難病情報センター)

文責: 呼吸器内科外部リンク
最終更新日:2023年9月12日

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