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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EGPA)

こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう

概要

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis: EGPA)は1951年にChurgとStraussによって提唱された疾患で、血管炎を引き起こす病気の1種です。以前は、アレルギー性肉芽腫性血管炎またはChurg-Strauss(チャーグ・ストラウス)症候群と呼ばれていましたが、2011年に主に小血管に病変がある疾患として、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の名称が提案されました。この病気は、アレルギー体質の患者さんに出現する好酸球という特殊な白血球が増加し血管に炎症を引き起こすことにより、色々な臓器に様々な症状が出現します。気管支喘息が先行して、その後血管炎による症状が出てくるのが典型的です。主として中年以降に発症(日本での好発年齢は50歳代)し、男女比では3:7とやや女性にやや多く、家族内発症(特定の家族内で多発すること)は稀です。日本での発症頻度は年間2.4人/100万人と言われています。

症状

気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー体質が先に起こることが多く、気管支喘息から血管炎による症状の発症までは3年以内が多いとされています。血管炎に伴う症状としては、しびれや感覚障害が多く(多発性単神経炎)9割以上の患者さんでみられ、皮膚のしこりやあざ、潰瘍などの症状も約6割の方にみられます(図1、2)。他にも発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛などの全身症状をみることがあります。なかには腎障害や間質性肺炎、腸炎、心筋炎など重症な臓器病変も伴うこともあります(図3)。

図1.血管炎による虚血で小腸が狭くなっている。

図1.
血管炎による虚血で小腸が狭くなっている。

図2.紫斑(皮膚のあざの一種)がみられる。

図2.
紫斑(皮膚のあざの一種)がみられる。

図3.胸部CTで肺の陰影を確認できる。

図3.
胸部CTで肺の陰影を確認できる。

検査所見

アレルギーを反映して、血液検査では、好酸球という白血球の一種が増加し、IgEの増加をみる事があります。全身性の炎症性疾患のため、炎症を反映する赤沈やCRP、血小板数も上昇します。
また、およそ半数でMPO-ANCAという特殊な自己抗体が陽性になり、およそ7割でリウマトイド因子(RF)が陽性になります。また、しびれなどの感覚障害や運動障害を伴う場合は、筋電図検査で異常がみられます。また肺や皮膚、神経、腎生検を行い、血管炎の有無を証明することもあります。

診断

先行する喘息発作、アレルギー体質、好酸球増多、肺陰影、その他の臓器障害、組織の生検結果などで、総合的に判断して診断します。米国アメリカ学会から1990年に出された分類基準によれば、1)気管支喘息、2)好酸球増多、3)単または多発神経炎の存在、4)肺浸潤、5)副鼻腔の異常、6)血管外好酸球増加以上6項目中4項目がみられれば好酸球性多発血管炎性肉芽腫症である可能性が高くなります。また、1998年に厚生労働省より作られた診断基準も参考にしています(表1)。診断に際しては、血液検査・尿検査・筋電図検査・レントゲンやCTなどの画像検査が必要になります。当院では神経生検や皮膚生検が必要となった場合は神経内科や皮膚科とそれぞれ協力し診療を行っております。

表1.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断基準(1998年 厚生労働省)

(1)主要臨床所見

  1. 気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎
  2. 好酸球増加(白血球分画の10%以上、800/μL以上)
  3. 血管炎による症状(発熱38℃以上,2 週以上),体重減少(6 カ月以内に 6kg以上),多発性単神経炎,消化管出血,紫斑,多発筋痛(炎),筋肉痛(筋力低下)

(2)臨床経過の特徴
  主要所見1. ,2. が先行し,3. が発症する

(3)主要組織所見

  1. 周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性,またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在
  2. 血管外肉芽腫の存在

(4)判定

  1. 確実
    1. 主要臨床所見のうち気管支喘息,あるいはアレルギー性鼻炎,好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ一つ以上を示し同時に,主要組織所見の1項目を満たす場合
    2. 主要臨床項目 3 項目を満たし,臨床経過の特徴を示した場合
  2. 疑い
    1. 主要臨床項目 1 項目および主要組織所見の 1 項目を満たす場合
    2. 主要臨床項目 3 項目を満たすが,臨床経過の特徴を示さない場合

(5)参考となる検査所見

  1. 白血球増加(1万/μL以上)
  2. 血小板増加(40万/μL以上)
  3. 血清IgE増加(600 U/mL以上)
  4. MPO-ANCA陽性
  5. リウマトイド因子陽性
  6. X線で肺浸潤陰影

治療

患者さんそれぞれの症状が出現している場所・分布と程度により重症度を決定します。重症度の判断はFive Factor Score(KOMPAS結節性多発動脈炎を参照)やBirmingham vasculitis activity score(BVAS)などに基づいて行います。治療は、主に副腎皮質ホルモンであるステロイド(プレドニゾロン)の投与を行います。軽症~中等症ではプレドニゾロン 30~50 mg/日で治療を開始します。重症では高用量ステロイド+シクロフォスファミド(商品名:エンドキサン®)による寛解導入療法の後、徐々にステロイドを減量し、アザチオプリン(商品名:イムラン®、商品名:アザニン®)併用などによる維持療法を行います。また、ステロイドを長期に使用しても改善しなかった神経障害に対して、高用量ガンマグロブリン点滴が保険適用となっております。神経障害による運動障害に対してはリハビリテーションを積極的に行います。

生活上の注意

アレルギー性肉芽腫性血管炎は一般にステロイドによく反応し、3~6か月で寛解(病気の症状がなく普通に生活ができる事)する例が約80%程度見られます。しかし、治療には長期間を要するため、長期間にわたって外来通院する必要があります。また、ステロイドは急激に減量するのではなく徐々に減量する必要があります。自己判断で中止をしたり、減量を早めたりなどはせず、医師の指導の下でしっかりと薬の調節を行って下さい。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では本疾患の難治症例の治療実績を多く持ちます。また診断のために必要な検査も他の診療科と協力して積極的に行っており、早期発見・早期治療に努めております。従来の治療のみならず、難治症例には新たな治療アプローチも検討しながら治療していきます。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2017年2月23日

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