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顕微鏡的多発血管炎 (microscopic polyangiitis: MPA)

けんびきょうてきたはつけっかんえん

概要

顕微鏡的多発血管炎は、その名前の通り、顕微鏡でないと観察できない太さの血管(小型血管)に炎症を起こす病気です。そのような血管は全身にありますが、特に腎臓や肺、皮膚、末梢神経等に分布しています。これらの血管に炎症を起こすと、臓器の血流の悪化や炎症の結果起きるダメージや出血が生じ、臓器の機能が低下してしまいます。特に、腎臓や肺などは生命を司る上で重要な臓器であるため、重症となりうる病気です。一般的に50~60歳以上の高齢者に多く発症し、女性にやや多いと言われています。この病気の原因は不明ですが、好中球(白血球の一つ)の細胞質に含まれる酵素タンパク質であるミエロペルオキダーゼ(MPO)に対する自己抗体(抗好中球細胞質抗体;ANCA)が高率に検出されることから、自己免疫異常が背景に存在すると考えられています。この抗好中球細胞質抗体が小型血管の炎症に関わることが分かっています。さらに最近、好中球が細菌を死滅させるために放出するneutrophil extracellular traps(NETs)や、好中球などから放出される小さな粒子microparticlesが病気に関連していることが明らかにされています。

症状

全身症状に伴い、腎臓や肺の障害が短期間に急激に進行する場合が多くみられます。また、それだけでなく、緩徐に進行する間質性肺炎など、慢性に経過する場合もあります。

(1)全身症状

発熱、倦怠感、体重減少など。

(2)腎臓の障害によるもの

血尿、蛋白尿、赤血球円柱などの尿検査異常、足の浮腫みなど腎機能が低下することによっておきる症状。これが比較的急速に月単位あるいは週単位で進行することがあります(急速進行性糸球体腎炎)。

(3)肺の障害によるもの

空咳、息切れ。痰に血が混じる場合には肺胞出血という重篤な症状の可能性があります。検査ではレントゲンやCT検査(図1参照)で間質性肺炎や肺胞出血などの異常を指摘されることもあります。

図1.顕微鏡的多発血管炎のCT検査画像

図1.顕微鏡的多発血管炎のCT検査画像

(4)筋・骨格の障害によるもの

関節痛、筋痛。

(5)皮膚の障害によるもの

あざ(紫斑)、皮下出血、皮膚にできる潰瘍など。

(6)神経の障害によるもの

手足のしびれや感覚がない、力が入らないなどの症状(多発性単神経炎)。

診断

本症は生命に関わりうる重症な疾患ですので、強力な治療が必要となります。このため血管炎があることをきちんと証明する必要があり、症状や異常がみられる臓器や部位の一部を生検し、顕微鏡で確認する病理組織診断が必要です。頻度が多いのは腎臓ですが、腎生検が困難な場合は、病変がみられる皮膚や神経、筋、肺などが生検の対象となることもあります。

また上記の病理組織診断だけでなく血清中の抗体である抗好中球細胞質抗体が診断の一助になることがあります。抗好中球細胞質抗体の測定法はいくつかありますが、染色パターンからは、核周辺が強く染色される核周囲型(p-ANCA)と細胞質全体が染色される細胞質型(c-ANCA)に分類されます。またELISA法による抗原特異性からはMPO-ANCAやPR3-ANCAに分類されます。顕微鏡的多発血管炎では、p-ANCAの感度は58%、特異度は81%であり、MPO- ANCAの感度は58%、特異度は91%と言われています。両者のいずれかが陽性の場合、その感度は67%、特異度は99%に上昇します。
上記のように、病理組織診断や血清学的診断を含めた顕微鏡的多発血管炎の診断基準(1998年作成)があり、これを参考に診断します。

1998年厚生省MPA診断基準

(1)主要症候

  1. 急速進行性糸球体腎炎
  2. 肺胞出血もしくは間質性肺炎
  3. 腎・肺以外の臓器症状:紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性単神経炎など

(2)主要組織所見

  • 細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死、血管周囲の炎症性細胞浸潤

(3)主要検査所見

  1. MPO-ANCA陽性
  2. CRP陽性
  3. 蛋白尿・血尿、血清BUN、Crの上昇
  4. 胸部レントゲンにて肺胞出血を疑う浸潤影や間質性肺炎像

(4)判定

  1. 確実(definite)
    1. 主要症候の2項目以上を満たし、組織所見が陽性
    2. 主要症候の(a)及び(b)を含め2項目以上を満たし、MPO-ANCAが陽性
  2. 疑い(possible)
    1. 主要症候の3項目を満たす
    2. 主要症候の1項目とMPO-ANCA陽性の例

参考事項

  • 主要症状の出現する1-2週間前に先行感染(多くは上気道感染)がみられる例が多い
  • 主要症状(a)、(b)は約半数例で同時に、その他ではいずれか一方が先行する
  • 多くの例でMPO-ANCAの力価は疾患活動性と並行して変動する
  • 治療を早期に中止すると、再発する例がある
  • 鑑別すべき諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる

鑑別すべき疾患

結節性多発動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症(旧称:Wegener肉芽腫症)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎/Churg-Strauss症候群)、川崎動脈炎、IgA血管炎(旧名Henoch-Schönlein紫斑病。紫斑、皮下出血、腹痛、関節痛、IgAの沈着を伴う血管炎)、他の膠原病(抗GBM抗体病、クリオグロブリン血管炎、白血球破砕性血管炎、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、悪性関節リウマチ、皮膚筋炎、強皮症、Sjögren症候群、MCTDなど)

治療

血管炎の重症度に応じて、ステロイド薬や免疫抑制薬を用いて、血管の炎症を完全に消失させる寛解導入療法を行い、その後、その状態を維持する寛解維持療法を行うことになります。病気が再び悪くなることのないようにするためにもこれらの治療は重要となります。例えば、生命に危険が及ぶ可能性のある場合には、大量の副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬シクロホスファミド(商品名:エンドキサン®)などの投与が必要となります。また、重症例や難治例についてはシクロホスファミドの代わりにリツキシマブ(商品名:リツキサン®)という生物学的製剤を使用することも可能になりました。診断後速やかに治療が開始され、症状が改善すれば約3~6か月で寛解に至ることが期待できます。寛解に至った場合、ステロイドを減量し、より副作用の弱い免疫抑制薬(アザチオプリン:商品名:イムラン®、商品名:アザニン®)に切り替えた維持療法を少なくとも1~2年間は継続します。ステロイド薬と免疫抑制薬による治療により感染症がおこりやすくなりますので、治療を成功させるためには感染症の予防と適切な治療が大切です。

生活上の注意

治療によって免疫が抑制されると、細菌やウイルスなどの感染症への抵抗力が低下し重篤な感染症に罹患する可能性があったり、感染症にかかると血管炎の病状を悪化させることもあったりするため、注意が必要です。また、ステロイドの副作用として高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が悪化することがあるため、規則正しい生活を心掛けることが重要です。顕微鏡的多発血管炎は再度病気の勢いが悪くなる(再燃する)ことがしばしば見られる病気なので、定期的に通院して専門医から診察を受けることと、治療中に異変を感じたら速やかに病院を受診するようにしてください。

慶應義塾大学病院での取り組み

リウマチ内科ではこれまでも本疾患の難治例の治療実績を多く持ちます。また診断のために必要な腎生検なども個々の患者さんに応じて積極的に行い、早期発見、治療予後の改善に努めております。また大学病院としての特長を生かし、呼吸器内科・神経内科・腎臓内科・皮膚科など他科とも連携して診療を行っております。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2017年2月23日

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