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結節性多発動脈炎

けっせつせいたはつどうみゃくえん

概要

結節性多発動脈炎は、血管炎症候群を構成する疾患の一つです。各内臓臓器に向かう動脈やその分枝レベルの小~中等度の太さの動脈に炎症が起こり、それにより動脈の壁が破壊されたり内腔が狭くなることで、血流の障害や時に動脈瘤が生じる疾患で、かつ毛細血管には炎症を認めないものと定義されます。なお、進行した症例では動脈に沿ってボコボコと隆起状に腫れることから昔は結節性動脈周囲炎と呼ばれていましたが、現在では、全身に多発する病気の特性を反映させるため、結節性多発動脈炎と呼び名が変更されました。原因はわかっていませんが、血管炎の組織には多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられています。また、一部にB型肝炎ウイルス感染後に発症する結節性多発動脈炎がありますが、本邦ではまれであると言われています。他にも、有毛細胞白血病に関連した結節性多発動脈炎も報告されています。

厚生労働省では、原因がわかっていない難病とされるいくつかの病気について、国の事業として年1回調査をし、医療費の補助を行っています。そのような調査の対象になっている病気のことを「特定疾患」と呼んでおり、本疾患は特定疾患に指定されています。平成21年度の特定疾患の調査では、結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎を合わせた推定患者数は7,135人(このうち結節性多発動脈炎は1/5程度)と報告されており、関節リウマチが推定70万人であることを考えると、まれな病気と言えます。本邦では男女比は約3:1で男性に多く、平均発症年齢は50歳前後です。

症状

全身の小~中等度の太さの血管が炎症により血流障害を起こすため、全身にわたる様々な症状が出現するのが特徴です。例えば、消化管へ流れる血管に障害が起こると嘔吐・腹痛・血便などがみられ、腸に穴が開くこともあります。他にも、皮膚、神経、腎臓、心臓などに血流障害に基づく症状が生じることがあります。以下に、各症状について詳しく述べていきます。

(1)全身症状

悪寒や体の震えを伴うことの少ない持続する38℃以上の発熱や、発熱の程度や期間と相関した体重減少もみられます。また、全身の炎症に伴う倦怠感、頭痛、関節痛や筋肉痛・筋力低下などが見られたりします。但し、関節痛では関節の破壊や変形は伴わず、筋肉痛・筋力低下では血清クレアチニンキナーゼ(CK)値の上昇はあまり認めません。

(2)皮膚

四肢、特に下腿に網状の暗赤色の皮疹や、押すと痛い結節状の紅斑、皮膚潰瘍、手足の指の壊死などがあります。皮膚症状は高い頻度で認められますが、結節性多発動脈炎のみならず、他の膠原病でも認められることがあります。皮膚のみに血管炎が限局する皮膚型の結節性多発動脈炎というタイプも存在し、通常の結節性多発動脈炎よりも予後は良好とされています。

(3)消化管

十二指腸・小腸・大腸へ向かう動脈に炎症が起こり血流障害が生じると、初期症状として食後に顕著な腹痛(腸管アンギーナ)を認めます。進行すると腸管に穴が開くこと(腸管穿孔)があります。他にも、腸管の出血による血便・下血、吐き気や嘔吐などがみられることがあります。また、時に胆嚢や虫垂に炎症が及ぶことがあり、胆嚢炎や虫垂炎に似た腹部の症状で気づかれることもあります。まれに、肝臓や膵臓の梗塞が併発することもあります。

(4)神経

神経に血流を送る動脈に炎症が生じ血流障害が起こると、まず手足のピリピリと痛むしびれといった末梢神経の知覚障害で始まり、進行すると下垂手や下垂足といった手足に力が入らない不可逆性の運動障害が見られることがあります。これらの末梢神経障害は半数以上の頻度で認められます。一方、脳神経の障害は5~10%で比較的少ないとされ、その大部分は高血圧による影響によるものであり、脳動脈の血管炎によるものはまれであると報告されています。脳神経の障害による症状としては、脳出血や脳梗塞による麻痺や意識障害などがあります。

(5)腎臓

50%以上の頻度で腎臓に何らか障害が出現すると言われています。腎動脈から小葉間動脈までに至る腎臓内の中小の動脈に炎症が及ぶと、腎血流障害により血圧を上昇させるレニンが分泌され、高血圧が認められます。また、腎動脈瘤の破裂による腎周囲血腫や、血管炎の勢いが強い場合に多発性腎梗塞がまれに認められることがあります。
なお、毛細血管には炎症が起きないため、糸球体腎炎は生じず、検尿では蛋白尿や血尿はあっても軽度であり、赤血球円柱はほとんど認められません。もし、検尿でのこれらの異常が目立つ場合は、顕微鏡的多発血管炎やウェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデスなどの他の疾患を考慮した方がいいでしょう。

(6)心臓

心臓自身に血液を送っている冠動脈に血流障害が生じると狭心症や心筋梗塞が起こり、症状として胸痛がみとめられます。また、深く息を吸った時に増強する胸痛が特徴的な心外膜炎を生じる場合もあります。これらの心臓の病変は多くはありません。

(7)眼

眼の動脈の血流障害により、眼底出血や網膜剥離を伴った虚血性網膜症や、虚血性視神経炎などがみられ、視力低下や失明することがありますがまれです。

(8)睾丸

睾丸の圧痛を伴う睾丸炎を認める場合があります。但し、欧米では10%超くらいの頻度であるものの、本邦では比較的少ないとされています。

(9)呼吸器

通常、肺に障害は認められません。但し、気管支動脈の病変はまれにみられることがあります。

(10)その他

体のどの臓器にも血流障害に基づく病変を認めることがあり、乳房、子宮、脾臓などの病変が報告されていますが、あまり多くはありません。

診断

上記の症状からこの病気を疑い、厚生労働省特定疾患難治性血管炎分科会による診断基準(2006年)外部リンク
、もしくは米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(1990年)外部リンクを参考にして診断します。この診断の際に要となるのは、障害臓器の血管の炎症を証明することです。そのためには、障害部位を一部切除する生検が必要になります。生検が困難な場合には、血管造影X線検査や造影CT、MRIなどの画像検査が診断の助けとなります。

治療

無治療では1年生存率50%、5年生存率13%と予後は不良でしたが、近年は治療が進歩し、発症3か月程度以内の急性期に適切な治療を受ければ、経過は比較的良好です。ステロイドと免疫抑制剤の併用による5年生存率は約80%となっています。一般的な治療の詳細は以下の通りですが、個々の患者さんの病態に応じて治療内容を適宜調整することが多いです。
まず、背景にB型肝炎ウイルス感染が有る場合は抗ウイルス療法、血漿交換療法を実施します。B型肝炎ウイルス感染が無い場合は、次の様な大きな流れで治療を行います。
まず病気の勢いを抑え込む「寛解導入療法」を行い、その後、この導入療法で一旦抑え込んだ病勢を再燃させないようにする「寛解維持療法」を行います。

(1)寛解導入療法

腎、腸管、神経など生命に関わる重要臓器の障害を有する重症例では、メチルプレドニゾロン大量点滴静注療法(ステロイドパルス療法:メチルプレドニゾロン500mg~1000mg/日の点滴 3日間連続)を行い、その後、体重1kg当たり0.5~0.8mgの副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬のプレドニゾロンを経口で使用します。2か所以上の重要臓器に障害のある非常に重症な場合には、さらに血漿交換療法も追加することがあります。
このような重症な臓器障害が無い場合は、経口プレドニゾロン0.5~1mg/kgのみで治療を開始します。
もし、ステロイド治療で改善が認められない場合は、免疫抑制剤であるシクロフォスファミドを経口もしくは点滴静注にて併用します。
その他の免疫抑制薬として、アザチオプリンやメトトレキサートを用いることもあります。他にも、まだ一般的な治療法としては未確立ですが、治療困難例に対して、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬や、抗ヒトCD20抗体のリツキシマブで改善したという報告もあります。

(2)寛解維持療法

寛解導入療法でまず初めに病気の勢いを抑え込み、その後は、症状の悪化がないことを確認しながらプレドニゾロンは徐々に減量し、5~10mg/日を維持量とします。
シクロフォスファミドは血球が少なくなる骨髄抑制や、出血性膀胱炎、無月経などを生じる卵巣機能障害、さらに長期使用で悪性腫瘍の合併などの副作用があるため、半年程度経過したら、免疫抑制剤をシクロフォスファミドから比較的副作用の少ないアザチオプリンに切り替えます。

生活上の注意

血管炎は、血管に炎症を起こして血管壁に障害をきたします。これ以上血管に負担をかけないように、喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などの動脈硬化の危険を高める要因に気を付ける必要があります。また、治療によって免疫が抑制されている場合は、感染症にかかりやすくなっていますし、感染症にかかると血管炎の病状を悪化させることもあるため、注意が必要です。規則正しい生活をして、精神的にも肉体的にもストレスを最小限にする生活を心掛けることが重要です。

慶應義塾大学病院での取り組み

診断に重要な生検や画像検査をリウマチ内科のみならず他の診療科とも連携して行い、できるだけ迅速で適確な診断を心がけています。また、治療に関しても最新の医学的知識に基づき、それぞれの患者さんに合った適切な治療を行っています。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

難病情報センター外部リンク
日本皮膚科学会による皮膚症状の写真外部リンク
厚生労働省特定疾患難治性血管炎分科会による診断基準(2006年)外部リンク
特定疾患 臨床調査個人票(東京都)外部リンク
米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(1990年)外部リンク
血管炎症候群の診療ガイドライン(2008年)外部リンク

文責:内科学(リウマチ)
記事作成日:2012年2月9日
最終更新日:2012年10月12日

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