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ホーム > 病気を知る > 膠原病と免疫の病気 > 成人スチル(スティル)病(ASD; adult Still's disease)

成人スチル(スティル)病(ASD; adult Still's disease)

せいじんすちる(すてぃる)びょう(ASD; adult Still's disease)

概要

成人スティル病は、発熱、皮疹、関節症状を主な症状とする全身性の炎症疾患です。発熱に伴って皮疹や関節痛がみられ、解熱とともに皮疹、関節痛が消失するという症状が特徴的です。診断の決め手となる症状、検査所見には乏しいため、症状や所見から総合的に診断をします。小児におこるスティル病(全身型若年性特発性関節炎)という疾患と同様の病像が成人(16歳以上)に起こったものと考えられています。
成人スティル病はリウマチ性疾患の中では稀な病気の1つであり、この病気を持つ方は人口10万人あたり2人程度です。一般的に20歳~40歳代の比較的若い成人が発症しますが、70歳以上でみられることもあります。男性より女性でやや多いとされています。
原因はわかっていませんが、遺伝素因やウイルス・細菌の感染など環境因子が関係しているのではないかと考えられています。病態としてはマクロファージという細胞が活性化しており、インターロイキン(IL)‐6,IL-1,IL-18,腫瘍壊死因子(TNF)といった種々のサイトカインが過剰に産生されているものと考えられています。
成人スティル病は基本的には生命予後の良い病気ですが、半数の患者さんが寛解(症状のない状態)と再燃を繰り返します。

症状

もともとの病名の由来から、発熱が主体で、これに皮疹、軽度の関節痛を伴う点が特徴的です。

全身症状

発熱はほとんどの患者さんにみられます。発熱は38-39℃となり、夕方から早朝にスパイク状に認められ日中は解熱する弛張熱という形をとることが多いです。このほか、発熱に伴って全身のだるさ、疲れやすさ、食欲低下、体重減少などがみられることがあります。

皮膚症状

かゆみなどの症状に乏しい薄いピンク色(サーモンピンク)の皮疹が、発熱とともに出現し、解熱とともに消退するのが特徴的です。

関節症状

多関節炎があり、関節の痛み、腫れを伴います。関節症状は一過性のことも、持続することもあります。 発熱に一致して出現し、解熱と共に改善することが多いです。関節リウマチとは違って、手指などの小さな関節よりも、手首、肘、肩、膝、足などの大きな関節を中心にみられます。関節炎が持続すると関節の骨破壊が出現することもありますが、関節リウマチのように変形や骨破壊を伴うことは少ないとされています。

その他

発熱に合わせて咽頭痛が多くみられます。首の両側や脇の下に、に軽く痛みを伴う柔らかいリンパ節腫脹があります。 約半分の患者さんで肝臓と脾臓が腫れて大きくなります。またその他の症状として、胸膜炎、心膜炎、間質性肺炎などを認めることもありますが、頻度は低いです。時に、播種性血管内凝固症候群(DIC)や血球貪食症候群と呼ばれる重症な病態を合併することもあり、注意が必要です。

診断

診断には世界的にいくつかの基準がありますが、日本人によって提唱された以下の基準(山口の基準)が標準的に用いられています。

表1.スティル病の診断基準(山口基準)  (J Rheumatol.19(3):424-30,1992から引用)

大項目

1.発熱(≧39℃、1週間以上)

2.関節痛(2週間以上持続)

3.定型的皮疹

4.80%以上の好中球増加を含む白血球増加(≧10000/mm3)

小項目

1.咽頭痛

2.リンパ節腫脹かつ/または脾腫

3.肝機能異常

4.RF陰性および抗核抗体陰性

判定

大項目2項目以上を含み、合計5項目以上で成人発症Still病と分類する。ただし除外項目を除く。

参考項目

血清フェリチン著増(正常上限の5倍以上)

除外項目

感染症、悪性腫瘍(リンパ腫など)、その他リウマチ性疾患(結節性多発動脈炎, 悪性関節リウマチなど)

大切なポイントは、他のリウマチ性疾患や感染、悪性腫瘍がないことを確認することです。このためには様々な検査と専門医の診察が必要となります。成人スティル病でのみみられる、診断に特異的な検査はありません。一般的にはリウマトイド因子、抗核抗体は陰性で他の膠原病とは異なる特徴を示します。白血球増多、炎症反応高値、肝機能障害、血清フェリチン値の上昇などがみられることが多いとされます。

治療

稀な疾患のため薬の開発臨床試験が行われにくく治療は経験的なものになります。治療の基本は副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)ですが、ステロイド抵抗性やステロイド減量中に再燃(再び病状が悪化する)することも少なくなく、その際には他の免疫抑制剤が追加使用されます。

ステロイド

通常はステロイドを、患者さんの重症度に応じて中等量から大量で用います。初期投与量を2週間程度続け、疾患活動性が落ち着いたことを確認してからステロイドの量を減らしていきます。初期投与量で十分なコントロールが得られない場合にはさらに増量を検討します。全身状態が不良な場合、DICや血球貪食症候群を合併している場合などはステロイドパルス療法も行われることがあります。
発熱や関節痛、検査所見が改善したのちステロイドは減量していきます。ステロイドを中止できる患者さんもいますが、しばしば減量の最中に疾患活動性が増悪(症状が悪化)することがあります。この場合、ステロイドはいったん1.5倍~2倍を目安に増量します。症状によっては初期治療と同程度まで増やすこともあります。
ステロイドの減量が困難な例、減量すると再発する例もしばしば経験します。このような場合は、保険適用外ですが下記のような免疫抑制剤を追加することがあります。

メトトレキサート(商品名:リウマトレックス®など)

主に関節リウマチに使用される薬で、スティル病においては関節炎のコントロールとステロイド減量に効果があると考えられています。使用方法は関節リウマチと同程度の量を使用します。

シクロスポリン(商品名:ネオーラル®など)

臓器移植の際の免疫抑制剤として使用されたり、様々な自己免疫疾患に使用されたりする薬です。治療として必要な量が、疾患や個人によって異なるため、血液中の濃度を測定しながら薬の量を調節して使用します。ステロイドの減量に効果があると考えられています。

トシリズマブ(商品名:アクテムラ®)

小児のスティル病(全身型若年性特発性関節炎)では複数の臨床試験で有効性が示されている薬であり、保険適用が承認されています。全身型若年性特発性関節炎を成人が発症した疾患と考えられる成人スティル病でも効果が期待されています。現在のところ成人では、全世界を通じて30例を超える使用経験が集積されてきており、概ね良好な結果が報告されています。 トシリズマブは日本で開発された薬で、現在では関節リウマチを中心に使用されています。IL-6という成人スティル病の病態の中心をなす物質(サイトカイン)の受容体に対する抗体製剤(生物学的製剤)です。関節リウマチでは通常4週間に1回の点滴ですが、小児のスティル病では2週間に1回点滴するため、この使い方を成人例に応用することがあります。
慶應義塾大学では、世界初のエビデンスを構築すべく、現在医師主導型の治験として、難治性スティル病の方を対象に、トシリズマブを2週間に1回投与する治験を施行中です。

その他

古くは非ステロイド性抗炎症薬が第一選択薬とされていました。ごく軽症な場合は効果がある場合もあるようですが、現在は主たる治療薬という立場ではなくなりました。
また、海外ではアナキンラというIL-1受容体拮抗薬の効果を示す報告が散見されます。すでにアメリカでは小児のスティル病治療に関してアナキンラが第一選択薬として推奨されており、成人での効果も十分に期待できますが、日本では現在のところ使用できません。

生活上の注意

成人スティル病と診断された場合、長く病気と付き合っていくことになります。しばらくの間症状が治まっていても、再び病気がぶり返すこともあります。ステロイドを長期間内服するケースが多いので、骨粗鬆症や感染、糖尿病といったステロイドによる副作用がみられることがあります。骨粗鬆症があると転倒した際に骨折する可能性があるため、転倒に注意しましょう。手洗い、うがいなど感染対策を十分とりましょう。ステロイドを中断すると、体の中のステロイド量が不足してしまい、重篤になることがありますので、ステロイドは決められた量を飲むことが大切です。

慶應義塾大学病院での取り組み

成人スティル病の病態は未だ不明な点が多く、国内外の多くの科学者が様々な研究を行っています。慶應義塾大学病院では、現在約60名の成人スティル病の患者さんが通院されています。精力的な治療と共に、新規治療法の開発を試みています。当科では前述のトシリズマブの効果を調べる医師主導型治験を行っています(詳細は慶應義塾大学医学部リウマチ内科ホームページで紹介しています)。

さらに詳しく知りたい方へ

文責: リウマチ・膠原病内科外部リンク
最終更新日:2017年2月23日

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