音声ブラウザ専用。こちらよりメニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメインコンテンツへ移動可能です。クリックしてください。

KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
お探しの病名、検査法、手技などを入れて右のボタンを押してください。
慶應義塾
HOME
病気を知る
慶應発サイエンス
あたらしい医療
KOMPASについて

ホーム > 病気を知る > 膠原病と免疫の病気 > 乾癬性関節炎 (psoriatic arthritis: PsA)

乾癬性関節炎 (psoriatic arthritis: PsA)

かんせんせいかんせつえん

概要

乾癬性関節炎は皮膚の病気である乾癬(かんせん)に、腫れと痛みを伴う関節炎を合併した病気です。多くの症例が、血清反応陰性脊椎関節炎(Seronegative Spondyloarthropathy)の末梢型に分類されます。原因は不明ですが、もともと発症しやすい体質の人に、さまざまな外からの要因が加わって発症すると考えられています。自己の免疫系が自分自身を攻撃する自己免疫疾患と考えられています。遺伝する病気ではありませんが、家族集積性といい、血縁関係の方にこの病気の方がいると、発症しやすいと言われています。
乾癬は白人で1-2%に発症すると言われていますが、日本では0.01~0.1%程度といわれ、厚生労働省の平成20年患者調査では約10万人と推計されています。関節炎を発症するのはこの乾癬の患者さんのうち、1-10%程度と言われており、乾癬性関節炎はまれな疾患と言えます。どの年代にも起こり得ますが、20代にピークがあり、若い方に発症することが多いです。男性と女性ほぼ同数起こると言われています。

症状

(1)皮膚症状

通常、皮膚の表面を占める表皮は28日程度の間隔で作られては垢として脱落していきます。しかし乾癬ではこの時間が4-7日程度と著しく短縮しているため、皮膚が赤くなり、剥がれた皮膚の一部が白く付着するという病変を認めます。通常、皮疹に自覚症状はありませんが、痒みを伴う場合もあります。肘や膝、頭部、殿部など刺激を受けやすい場所に出現しやすいです。爪の病変も多彩で、爪が厚くなったり、剥がれたり、くぼみができたり、といった変化を示します。いわゆる"水虫"のような見た目になることもあるので注意しましょう。

(2)関節症状

主に手の指に腫れと痛みを伴う関節炎です。第2関節や指の付け根の関節が炎症をおこしやすい関節リウマチと異なり、第1関節に関節炎が出現し、腫れたり痛んだりします。その他、手首や膝、足首、足の趾などにも起こりやすいです。関節炎が続くと骨の破壊が起こった上で新たな骨の形成が起こり、手のX線写真で特徴的な変化を伴うようになります。
関節炎の活動性と皮疹の活動性は必ずしも一致しません。

(3)指炎、腱付着部炎

1本の指全体がソーセージのように腫れることがあり、これを指炎といいます。また、腱や靱帯が骨に付着する部位に炎症を生じることがあり、これを腱付着部炎と言います。かかとのアキレス腱付着部に起こることが多いです。

(4)その他

ぶどう膜炎や結膜炎といった目の炎症が起こることがあります。これは目の痛みや見えにくさといった症状が出ます。仙腸関節(腰の後ろの関節)や脊椎(背骨)の関節に炎症が起こることがあります。腰痛を起こしますが、動かずにいると痛み、動かすと楽になる、というやや変わった痛み方をします。

診断

乾癬と診断されている方に典型的な関節炎が出現した場合は比較的診断は容易です。ご自身で乾癬の皮疹に気付かれていない場合や、皮疹出現前の方などは病気がはっきりせず、診断に時間がかかることがあります。

診断には下記の分類基準が用いられることが多いです。

乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR) (2006年)

(感度98.7%、特異度91.4%)

炎症性の関節疾患(関節炎、脊椎炎、もしくは付着部炎)を有する方で、下記の各項目を1点として3点以上の場合に乾癬性関節炎と分類(診断)します:

  1. 現在乾癬にかかっている*、または過去に乾癬があった、
    または兄弟姉妹や両親、祖父母に乾癬の方がいる
  2. 典型的な乾癬の爪病変(爪剥離症、陥凹、過角化)がある
  3. リウマトイド因子という血液検査が陰性
  4. 指全体が腫れる指炎がある(あった)
  5. 手、足のX線検査で特徴的な所見(関節近傍の新骨形成)がある

*現在乾癬にかかっている場合は2点とします。

治療

皮膚や爪の病変に対しては基本的に皮膚科で診て頂くことになりますが、ビタミンD軟膏やステロイドの外用、またPUVA療法という紫外線を用いた治療法があります。重症型ではメトトレキサート(商品名リウマトレックス®)やシクロスポリンA(商品名ネオーラル®)などの内服や後述する生物学的製剤を使用することもあります。

関節炎や指炎、腱付着部炎を有する乾癬性関節炎対しては、2012年に欧州リウマチ学会(EULAR)が発表した勧奨を参考にしながら以下のように治療することがあります。
まず、乾癬性関節炎に対しては非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の内服が勧められます。NSAIDsを3~6カ月使用しても改善に乏しい場合や、予後不良因子がある(5関節以上の関節病変を有する、病気の活動性のために日常生活に重度の支障が生じている、関節破壊がある、もしくは過去にステロイドを使用したことがある)場合には、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)のひとつであるメトトレキサートの使用が勧められます。もし、副作用等でメトトレキサートが使用できない場合には同じくDMARDsであるサラゾスルファピリジン(商品名アザルフィジンEN®)が用いられることが多いです(他にはレフルノミドやシクロスポリン)。さらに、メトトレキサートもしくはサラゾスルファピリジンを3~6カ月使用しても関節炎の改善が不十分で予後不良因子を有する場合や、DMARDsを3~6か月複数併用しても関節炎の改善に乏しい場合、もしくは脊椎・骨盤の病変もしくは重度の付着部炎がある場合には、後述するTNF阻害薬という生物学的製剤の併用もしくは切替えを行います。そして、TNF阻害薬を3~6カ月使用しても効果が不十分である場合には別の種類のTNF阻害薬に切り替えます。

生物学的製剤

ここ10年程の間に関節リウマチを中心とする自己免疫疾患に対し、生物学的製剤と呼ばれる新しい治療薬が使用されるようになってきました。これらは化学的に合成されたものではなく、生物が産生したたんぱく質を利用しているため、"生物学的製剤"とよばれます。乾癬性関節炎に日本で認可されている薬は以下の3種類です(2011年6月現在)。

  • インフリキシマブ(商品名レミケード®)
  • アダリムマブ(商品名ヒュミラ®)
  • ウステキヌマブ(商品名ステラーラ®)

いずれも従来の薬と比べると効果が高く、副作用が比較的少ないことが特徴です。どの薬も高価なこと(月の自己負担3割で薬剤費のみで数万円)が使いづらい点になります。

インフリキシマブとアダリムマブは腫瘍壊死因子(TNF)という炎症を引き起こす物質に結合し、その働きを抑えます。実際、インフリキシマブまたはプラセボを投与し14週時点での効果を比較したIMPACT試験、アダリムマブまたはプラセボを投与し24週時点での効果を比較したADEPT試験はとも乾癬に対する効果を報告しています。これらによると、関節炎ばかりでなく、皮膚、爪、指炎、腱付着部炎にも効果があります。インフリキシマブは点滴の薬で、最初の3回は短い間隔で点滴しますが、基本的に2ヶ月に1回の点滴で済みます。アダリムマブは自己注射の薬で2週間に1回皮下へ自己注射します。この両者では重い感染症(肺炎など)がまれにあること、投与するとアレルギー反応を起こす人がまれにいることが注意すべき副作用となります。乾癬に対しては2010年1月に認可がおりましたが、関節リウマチに対してインフリキシマブは2003年から、アダリムマブは2008年から使用されており、薬剤そのものは使用経験が豊富です。

ウステキヌマブは2011年1月に承認された薬剤です。インターロイキン12とインターロイキン23という炎症を司る2つの物質はp40という部分を共通して持っています。ウステキヌマブはこのp40の働きを抑えることで、インターロイキン12とインターロイキン23の働きを共に抑えます。2009年に、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制剤、あるいは生物製剤で治療したことのある疾患活動性の高い方を対象とし、ウステキヌマブまたはプラセボが投与され、12週の時点での効果を比較した臨床試験が報告され、乾癬に対する効果が示されていますが、どちらかというと皮膚症状に対する効果の方がはっきりしています。ウステキヌマブは乾癬の皮膚症状をTNF阻害薬のエタネルセプトよりも有意に改善したとの報告があります。ウステキヌマブは皮下注射の薬で、最初だけ1カ月の間隔で投与する以降は3カ月に1回毎の注射になります。重篤な副作用として蜂窩織炎や肺炎などの感染症や肝機能異常などが報告されています。

これらの生物学的製剤以外にも、乾癬の病態に深く関わっているインターロイキン17の働きを抑えるセクキヌマブなどの生物学的製剤の治験も行われており、今後さらに治療の選択の幅が広がるかもしれません。

生活上の注意

乾癬の皮膚病変自体はストレスで悪化することが知られています。乾癬性関節炎もおそらくストレスで悪化すると言われていますので、ストレスをためないことが大切になります。怪我、感染などによって誘発されることも知られています。

慶應義塾大学病院での取り組み

乾癬の方は通常皮膚科で診療を受けています。このような方の中で関節炎を発症した場合にはリウマチ内科へ紹介されることがあります。逆に多発する関節炎をリウマチ内科で調べていて乾癬性関節炎と診断されて皮膚科へ紹介することもあります。現在リウマチ内科では30人ほどの方が乾癬性関節炎のため通院されています。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

文責: リウマチ内科外部リンク
最終更新日:2014年11月11日

▲ページトップへ

膠原病と免疫の病気

慶應義塾HOME | 慶應義塾大学病院